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最終話 最高のサプライズ
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今日は学園が休みだというのに、朝早くから王宮の馬車が家の前に停まった。
何の準備もできていない私を無理やり馬車に乗せると、あっという間に王宮へ連れて行かれた。
「あの、一体何ですか?」
誰に聞いても何も答えてくれない。
どういうつもりか知らないけれど、私はまた大勢のメイドに取り囲まれ、何故か湯浴みをさせられ、念入りに支度をされる。
何なの?
真っ白い純白のドレスに、首にはあのアイスブルーのダイヤのネックレス、頭にはティアラを着けられた。
今日は何の日?
私はまた混乱している‥‥
何か催事があったかしら?
忙しくて忘れていたのかもしれない‥‥
戸惑っていると、戸が開きハーラルが入って来る。
この場面‥見覚えがある。
「ハーラル⁈」
「ああ、やっぱり君は綺麗だな」
「どういう事?」
「イザベラに見せたい物がある。さぁ行こう!」
エスコートの手を差し出され、思わず手を重ねると、ハーラルは指先に長く口付けをしている。
まるでとても想いを込めているように見えて胸が熱くなる。
連れて行かれたのは中庭だった。
確か‥‥工事が終わったばかりで‥‥
「⁈これっ‥‥て‥‥」
目の前に建てられていたのは‥‥あのガゼボだった。
「驚いてくれた?」
私達がいつもサボっていたあの学園のガゼボとまったく同じ形で同じベンチが置かれている。
まるでここが学園かと思ってしまう程、柱の汚れや色、キズがそのままで、おかしな錯覚を起こしてしまう‥‥
「これって‥」
「ははははっ、サプライズだよ!」
「すごいわ‥」
じっと見入ってしまう。
「そうだろう?まったく同じにさせたんだ。俺達が出会った大事な場所を残しておきたくてね。さぁ!」
中庭の石畳を歩いてガゼボに入る。
建てたばかりなのに古そうで、何年も昔からあるように見える。
「よくできているのね。本当に学園に居るようだわ」
「俺達はあと僅かで卒業だ。そうするとあのガゼボには通うことができない。ここに同じ物を作っておけば、一生イザベラとここでサボることができるだろ?」
「‥‥ハーラル」
一生って‥‥
本当にそんなことを思ってくれているの?
「イザベラの膝枕はやめられないからね」
楽しそうに笑い声をあげるが、私は自然と涙が溢れてきた。
「イザベラ?」
涙を止めることができない。
止め処なく溢れる涙はどうしたらいいの?
「君はよく泣くやつだ‥‥。それを見る度に俺の胸が張り裂けそうになることも知らないで」
「うぅっ‥‥だって‥‥」
「ここで言いたかった。初めて見た君は驚いた顔をして俺を見たけど、俺の方が君の美しさに驚いた。イザベラを知るうちに、俺の妃にしたいのはイザベラだけだと思ったんだ。どうか、一生、俺の落ち着ける場所でいて欲しい」
そう言うと私の手を持ち上げ、左手薬指にアイスブルーのダイヤの指輪をはめてくれる。
ハーラルの瞳の色が綺麗に光っている。
「一生?」
ハーラルはハンカチで私の涙を何度も拭きながら笑う。
「信じられないのか?」
「だって父は、‥‥あんな人で、浮気ばかりする人だったもの。ハーラルだっていつかは心変わりをするかもしれない‥‥」
「ははははっ、イザベラは何も分かってないな。俺がどれだけ君を想っているか。君が他の男と話すだけで、その男を殺してやりたいと思うのに」
「言い過ぎよ!」
涙の止まらない目尻に、そっとハーラルの唇が触れる。
「このアイスブルーのダイヤはとても貴重でね。俺が生まれた時から王家が集めてきたものだ。ネックレスもティアラも、そしてこの指輪も。俺の妃になる人の為に用意してきたものだ。王家にはもう、アイスブルーのダイヤは無い。これで全てだ。今後は探すつもりも集めるつもりもない。イザベラが俺の瞳の色を身に着ける、ただ一人の女性なんだ。それでもまだ、信じてくれないか?」
「だって」
私にこんな素敵な人を繋ぎ止めておけるだけの魅力なんてない‥‥
「俺の方が不安だ。イザベラに言い寄る男がいるんじゃないかと思うと心配で、君が他の男を見るだけで不安になる。‥‥だから、先手を打つことにしたよ」
「⁈え?」
ハーラルが視線を外すと、側近のデヴィットが護衛騎士達と共に何やら大きな台を運んで来る。
目の前に置かれた台の上には一枚の紙。
「陛下の了承を得ている。隣国を廻る時には、婚約者ではなく、正式な王太子妃として連れて行きたい。結婚式は、卒業後に盛大に執り行うけど、その前に私の妃にしておきたい。万が一にも解消されて、君を失うかもしれない不安を消しておきたいんだ。‥こんなに俺が必死でも‥信じてくれないか?」
「ハーラル‥‥」
「それと、ミドルネームのハーラルはイザベラにしか呼ばせないと決めてるんだ」
ポロポロと涙が溢れる。
アリサのように、私もよく涙が出るものだ‥。
「本当に?私を一生想ってくれる?」
「もちろん。神に誓って一生大切にすると約束する。だからイザベラもどうか、一生俺から離れないと誓ってくれ」
コクコクと頷いた。
幸せで胸が熱くなる。
ハーラルを好きになるほど、不安が大きくなっていた。
でも今は不安よりも、ただ嬉しくて、ただ幸せで、彼の隣にずっといたいと思うだけだ。
どれだけ目が赤く腫れているだろう。
みっともない顔をしているに違いないけれど、ハーラルの瞳を見つめた。
「私も一生あなたの側から離れたくないわ」
「愛してるよ、イザベラ。本当に愛してるんだ」
両手が私の頬にそっと触れる‥‥
「私も愛しています。ハーラル」
私とハーラルは長く甘い口付けを交わした。
ガゼボの周りには大勢の人が集まっていて、大きな拍手が沸き起こった。
二人でサインをし、結婚式よりも一足早く私達は将来を誓い合うことになった。
彼には驚かされるばかりで、いつも私の想像の遥か上をいく。
これが一位と二位の差なのかもしれない‥
私は彼に勝てそうもない‥‥
だって彼はいつも‥‥やり過ぎよ!
~END~
ここまで読んで下さった皆様、どうもありがとうございました。m(_ _)m
何の準備もできていない私を無理やり馬車に乗せると、あっという間に王宮へ連れて行かれた。
「あの、一体何ですか?」
誰に聞いても何も答えてくれない。
どういうつもりか知らないけれど、私はまた大勢のメイドに取り囲まれ、何故か湯浴みをさせられ、念入りに支度をされる。
何なの?
真っ白い純白のドレスに、首にはあのアイスブルーのダイヤのネックレス、頭にはティアラを着けられた。
今日は何の日?
私はまた混乱している‥‥
何か催事があったかしら?
忙しくて忘れていたのかもしれない‥‥
戸惑っていると、戸が開きハーラルが入って来る。
この場面‥見覚えがある。
「ハーラル⁈」
「ああ、やっぱり君は綺麗だな」
「どういう事?」
「イザベラに見せたい物がある。さぁ行こう!」
エスコートの手を差し出され、思わず手を重ねると、ハーラルは指先に長く口付けをしている。
まるでとても想いを込めているように見えて胸が熱くなる。
連れて行かれたのは中庭だった。
確か‥‥工事が終わったばかりで‥‥
「⁈これっ‥‥て‥‥」
目の前に建てられていたのは‥‥あのガゼボだった。
「驚いてくれた?」
私達がいつもサボっていたあの学園のガゼボとまったく同じ形で同じベンチが置かれている。
まるでここが学園かと思ってしまう程、柱の汚れや色、キズがそのままで、おかしな錯覚を起こしてしまう‥‥
「これって‥」
「ははははっ、サプライズだよ!」
「すごいわ‥」
じっと見入ってしまう。
「そうだろう?まったく同じにさせたんだ。俺達が出会った大事な場所を残しておきたくてね。さぁ!」
中庭の石畳を歩いてガゼボに入る。
建てたばかりなのに古そうで、何年も昔からあるように見える。
「よくできているのね。本当に学園に居るようだわ」
「俺達はあと僅かで卒業だ。そうするとあのガゼボには通うことができない。ここに同じ物を作っておけば、一生イザベラとここでサボることができるだろ?」
「‥‥ハーラル」
一生って‥‥
本当にそんなことを思ってくれているの?
「イザベラの膝枕はやめられないからね」
楽しそうに笑い声をあげるが、私は自然と涙が溢れてきた。
「イザベラ?」
涙を止めることができない。
止め処なく溢れる涙はどうしたらいいの?
「君はよく泣くやつだ‥‥。それを見る度に俺の胸が張り裂けそうになることも知らないで」
「うぅっ‥‥だって‥‥」
「ここで言いたかった。初めて見た君は驚いた顔をして俺を見たけど、俺の方が君の美しさに驚いた。イザベラを知るうちに、俺の妃にしたいのはイザベラだけだと思ったんだ。どうか、一生、俺の落ち着ける場所でいて欲しい」
そう言うと私の手を持ち上げ、左手薬指にアイスブルーのダイヤの指輪をはめてくれる。
ハーラルの瞳の色が綺麗に光っている。
「一生?」
ハーラルはハンカチで私の涙を何度も拭きながら笑う。
「信じられないのか?」
「だって父は、‥‥あんな人で、浮気ばかりする人だったもの。ハーラルだっていつかは心変わりをするかもしれない‥‥」
「ははははっ、イザベラは何も分かってないな。俺がどれだけ君を想っているか。君が他の男と話すだけで、その男を殺してやりたいと思うのに」
「言い過ぎよ!」
涙の止まらない目尻に、そっとハーラルの唇が触れる。
「このアイスブルーのダイヤはとても貴重でね。俺が生まれた時から王家が集めてきたものだ。ネックレスもティアラも、そしてこの指輪も。俺の妃になる人の為に用意してきたものだ。王家にはもう、アイスブルーのダイヤは無い。これで全てだ。今後は探すつもりも集めるつもりもない。イザベラが俺の瞳の色を身に着ける、ただ一人の女性なんだ。それでもまだ、信じてくれないか?」
「だって」
私にこんな素敵な人を繋ぎ止めておけるだけの魅力なんてない‥‥
「俺の方が不安だ。イザベラに言い寄る男がいるんじゃないかと思うと心配で、君が他の男を見るだけで不安になる。‥‥だから、先手を打つことにしたよ」
「⁈え?」
ハーラルが視線を外すと、側近のデヴィットが護衛騎士達と共に何やら大きな台を運んで来る。
目の前に置かれた台の上には一枚の紙。
「陛下の了承を得ている。隣国を廻る時には、婚約者ではなく、正式な王太子妃として連れて行きたい。結婚式は、卒業後に盛大に執り行うけど、その前に私の妃にしておきたい。万が一にも解消されて、君を失うかもしれない不安を消しておきたいんだ。‥こんなに俺が必死でも‥信じてくれないか?」
「ハーラル‥‥」
「それと、ミドルネームのハーラルはイザベラにしか呼ばせないと決めてるんだ」
ポロポロと涙が溢れる。
アリサのように、私もよく涙が出るものだ‥。
「本当に?私を一生想ってくれる?」
「もちろん。神に誓って一生大切にすると約束する。だからイザベラもどうか、一生俺から離れないと誓ってくれ」
コクコクと頷いた。
幸せで胸が熱くなる。
ハーラルを好きになるほど、不安が大きくなっていた。
でも今は不安よりも、ただ嬉しくて、ただ幸せで、彼の隣にずっといたいと思うだけだ。
どれだけ目が赤く腫れているだろう。
みっともない顔をしているに違いないけれど、ハーラルの瞳を見つめた。
「私も一生あなたの側から離れたくないわ」
「愛してるよ、イザベラ。本当に愛してるんだ」
両手が私の頬にそっと触れる‥‥
「私も愛しています。ハーラル」
私とハーラルは長く甘い口付けを交わした。
ガゼボの周りには大勢の人が集まっていて、大きな拍手が沸き起こった。
二人でサインをし、結婚式よりも一足早く私達は将来を誓い合うことになった。
彼には驚かされるばかりで、いつも私の想像の遥か上をいく。
これが一位と二位の差なのかもしれない‥
私は彼に勝てそうもない‥‥
だって彼はいつも‥‥やり過ぎよ!
~END~
ここまで読んで下さった皆様、どうもありがとうございました。m(_ _)m
応援ありがとうございます!
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みんなの感想(4件)
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とっても面白かったです!
最後ヒーローがヤンデレ風だったのが最高でした!
自己肯定感低いヒロインちゃんには重すぎるくらいの愛がちょうどいいですね❤️
素敵なお話しありがとうございました!
ありがとうございますm(_ _)m
とってもとっても嬉しいです( ^ω^ )
重すぎる愛が好きなので、ついつい重めの傾向になってしまいます(ーー;)
読んで頂き、感想頂きありがとうございました(^^)
返信ありがとうございます。
クラスから閉め出されてたヒロインにまさか期待させて落とすようなことしないよね…と思ってたらそのまさかでかわいそうに思いました。。
面白くて一気に読ませていただきました!ありがとうございました
そうですよね😔
せっかく楽しみにしていたイザベラは可哀想です😢
でもハーラルはヤキモチ焼きなので、イザベラが男子生徒と仲良くなるのが嫌だったようです‥。
自分の側に居て欲しいんですね😅
好きすぎて心が狭くなっていたでしょうか😥
感想頂きありがとうございます(^^)
最初から最後までとっても好きなお話でした。きっと彼は完璧王子なんだけど、それでも心の癒やしができて、きっともっと完璧になるんだろうな〜
流行り病のところでは、それは病という名の排除術では。。と嗅ぎ取っていました!
感想ありがとうございますm(_ _)m
とってもとっても嬉しいです( ◠‿◠ )
ハーラルはヤキモチ焼きで、イザベラに他の男を近付けたくないようです。
その必死さが私はけっこう好きです。
イザベラは、疑いもせずに受け入れる‥その素直さが好きです。
二人の初々しい恋愛模様を感じてもらえれば嬉しいです。
読んで頂きありがとうございました(^^)
m(_ _)m