女神に頼まれて村作りをしてみた

ひいらぎ

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女神に頼まれて村作りをしてみた

忘却

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  住民が引っ越してくる事が決まり俺たちは大忙しだ。バンが時計塔の修理が完了していない所を内部に大量に見つけ、時計塔だけはなんとしても治すと張り切って作業しているためその他の作業は必然的に俺達三人やることになる。
「一翔さん、こっち終わりました!」
「こちらも同じく。そっちはどうですか?」
「二人ともありがとう。こっちはまだ時間いるかも」
二人は今まで掃除から目を背けてきた倉庫やあまり使ってない部屋の掃除を、俺は村となるにあたっての土地の権利とかの話や交渉をしている。これは本来バンがやるのが一番なんだろうけど、お前ならできる!と謎のご指名を貰ったからにはやるしかない。新年と一緒に住民が来るらしいから急がなくちゃいけない。あの黒いやつが来たときに女神が残した今月もあと一週間ってのはこの事を知っていたからなのかもしれない。というか、俺はここが村となったらどうなるんだ?元の世界に戻るのか?そういえば死んだ訳ではないんだからそうなってもおかしくはない。別に元の世界に不満があるわけではないし戻りたいという気持ちが全くないと言えば嘘になる。ただ、がむしゃらに走り続けた今日までの日は絶対に捨てられない日々だ。あと三日、あと三日で俺は女神に頼まれた事を実現する。
「どうした、ボーっとして。そんな頭の痛くなるような資料でもあったか?」
「…あ、いやっ。ちょっと考え事。そっちこそ休憩か?」
「ああ、流石に四日間休みなしはきついらしい。何か飲もうかと思ってな」
四日間高所で休みなしで作業してたとは思えないくらいピンピンしている。実は屋根の上で寝てたんじゃないか?そう疑うくらいにはバンは元気だった。しかし、体を見ると汚れと傷が目立つ。汚れは魔法である程度どうにかなるらしいが流石に限界がある。
「それより一回シャワーでも浴びろよ?あとその傷、消毒くらいは」
「……臭う?それはすまん」
「臭いはしないけど見た目がな。やっぱ魔法ってすごいわ」
「むしろ魔法がない世界というのが信じられんがな」
「かわりに科学が魔法みたいに発達してるぞ」
「その科学とやらはようわからんが話を聞く限りお前らの世界の方が勝手は良さそうだ」
「へぇ、なんでだ?」
魔法のある世界の住人としては意外な返しに身をのりだし気味に聞く。
「俺らの魔法は本人が持つ魔力で変わるんだ。魔力は上げようと思えば上げられるが基本的には産まれた時に決まる。生活に欠かせない魔法を使うにも俺らは無駄な賭けをしてる」
意識はしたことなかったがそういえば魔力がどうとか聞いた覚えがあるようなないような。一息置いてバンは話を続けた。
「魔力の低いやつは私生活ですら苦労する。その上で俺らにも資本の文化があるからな。お前らの世界では大体の動力源は電気なんだろ?しかもそれに詳しくなくても生活にそこまでの支障が出ないらしいじゃないか」
「そのかわり詳しいやつが苦労するんだよ……」
「その点俺らも同じだな。力がない人のために俺らみたいなやつが動く。ギルドなんかが良い例だ」
その後も数分バンと話をしていたがバンが唐突に作業を思いだし戻っていった。最後によろしくな!と一言残して去ってくあの後ろ姿をもう見られなくなるかもしれないと思うとどこか切なくなる。思えばバンには助けられっぱなしだ。と、そんな事を考えてる暇は無いんだった。
  「せめて最後まで走りきりますか」
その場に誰かが居たとしても聞こえないであろう小さい声でそう呟くと一翔は作業に戻った。事実、四人の誰にも暇な人間はいない。アールは人が急に増えても周りの自然に極力危害が加わらないように調査と調整の繰り返しだ。リカは年越しを縁起よく迎えたいという人が大量に現れ、依頼が殺到している。二人はこの二つをこなしながらの掃除やメンテナンスなのだから大忙しだ。そうやって一日が過ぎそしてまた一日が過ぎる。

  「これはまずいですねぇ…終わる気配がしません」
「塔の方は終わったぞ!何が終わってないんだ?」
「新しい住民の皆さんが住む為に建てた二軒なんですが魔道具が調子悪かったらしく中がとても残念な事になってまして」
「おう、こりゃあひでぇ!」
「楽しそうなとこ悪いですがさっさっとしないと作業しながら年越しますよ?」
「それはまずいな。とりあえずやるか」
「そういえば一翔さんは?」
「よくわからんがまだお取り込み中だ。事実確認がどうとか言ってたな」
「大変ですねぇ……まぁこっちも大変ですが」
「とにかくやりましょう!年越し位はゆっくりしたいです!」
「そりゃそうだ。よし、やるぞ!」

  一方一翔は覚えのない土地の権利に悩まされていた。覚えがない土地も得られるなら喜ばしい事なのだが今回はそうは行かず、特殊な事例なので本当にここが権利を持っていた場所なのかの確認をしなくてはならない。これに関しては長く王国に仕えていたバンには把握しきれない部分だ。自分で探して確認する必要があるのだが、本来はそんな苦労するものではない。そもそもデータがむこうで保管されてるのだからそれと地図を照らし合わせてそれで一翔の仕事は終わりだ。国としては住んでる誰かから了承を得れればそれだけで良いのだ。後のトラブルは全て国側で処理をしてくれる。しかしこれに関しては話が変わってくる。
「まさかあの川までここの敷地なのは驚いたけど……その川の近くにも一ヵ所だけここのものになってる。だけど何度座標から調べてもこんな場所存在しないし見たこともない…」
資料には川の向こう側の森林の一部に空間があり一つ建造物がある事になっている。しかし一翔は心当たりがなかった。
「はぁ、駄目だ。全然頭が回らない。一度行って見てくるのが一番かな…。と言っても直接行くとなると座標見れるわけじゃないし長丁場になりそうだ…」
既に時計は深夜を指している。気分を変えるために一度外に出てみる。
「……あの家まだ明るいんだけど…あいつら寝てるのか?」
春風が一翔の目を覚ましてくれる。同時に頭も冴えてくれればどれだけ良かったか。例え確認できなかったとしても書類上では話を進めてしまえばこんなに苦労する事はなかった。しかし一翔はそれをしなかった。何故かここが気になったのが半分、そもそもその考えが無かったのが半分だ。
「やっぱり一回行かないとわからないか…」
朝日が見えてから出発しよう…。流石に疲れた。まだ作業してる皆には悪いけど少し、少しだけ寝よう。体が限界だって訴えかけてきてる…。そう思った矢先、バンと会った。
「お前やっぱ寝てなかったのか…」
「ちょっとな。今から少し寝るよ」
「そうか。体壊したら本末転倒だからな」
「そうだな。…そういえば村てしてここが認められたら女神はどうなるんだ?」
村を作ってほしいと頼んできたのは女神だ。その女神は村ができれば元に戻れるのが筋というものだ。しかしその気配がないので一翔は気になっていた。しかし返ってきたのは信じがたい言葉だった。
「女神?なんだそりゃ。お前やっぱ疲れてるよ」
は?と気の抜けた一言が漏れる。何があってもバンだけは忘れないと思っていた女神の存在を今バンは知らない。その事を追求する前に一翔の体は限界を迎えた。一翔は間もなく意識を手放したのだ。

村作り進歩率0.0% 終わりの始まり?
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