女神に頼まれて村作りをしてみた

ひいらぎ

文字の大きさ
19 / 25
女神に頼まれて村作りをしてみた

闇と光 喜びと悲しみ

しおりを挟む
  あの時計塔の光、多分あれはなにかが関係してる筈だ。純粋に考えればあの光の先に何かあるんだろう。今日は珍しく村に俺しかいない。バンはなんか何処かに出掛けてるしアールは釣り。リカは街へ買い出しだ。
  「ほーんと。何がなんだかわからないなぁ」 
  「それなら教えてやろうか?」
え?と情けない声が思わず口から飛び出した。目の前に居た聞いたことのない声の正体は見るのはこれがはじめてではなかったのだ。リカが女神の存在を思い出すきっかけともなったあの黒い何かだ。
「そんなに怖がるな。私は……そうだな。神だ。神となるものだ」
  「神?そんな話信じると思うか?ここの神はミーアだ。あいつが神だ。例え他の神がいたとしてもお前だけは絶対に違う」
黒い何かをじっと睨み付けながら言ったその言葉は行き先を失っていた。その言葉はコイツには届いていないだろう。いや、正常には届いてないという方が正しいかもしれない。それは、ニヤッと笑って見せるとそのままゲラゲラと笑いはじめた。
  「それもそうだな!ハハハハ!あんな小娘が主神なんだ、この私があんなのに仕える訳がない!ハハハハハハハ、お前、思ったよりは良い目をしている」
目は見えない。口も見えない。しかし見ているし喋っているだろう。少なくともこっちを指差しているのだけは把握できた。 
「気に入った。お前には真実を教えてやろう。私は悪魔だ、あの小娘と賭けをしている。賭けの内容は……言うわけにはいかないな」
それはまだ残る笑いを堪えながら説明をはじめた。一息置いて再度口を開いたのだろう。ふぅ、という声の後、また説明が続いた。
  「あの小娘が何を思っているか。この世界で何が起きてるか。気にならないか?気になるだろう?私と契約をしようじゃないか」
気になる。凄く気になる。この世界で今、何が起きているのかそれが知りたい。その気持ちで胸がいっぱいになっていた。
「契約が成立すれば私はお前に全てを話してやろう。しかしお前はこの世界から出ることができなくなり死後、魂は私の所有物となる」
それくらいなら、と。気持ちが傾いた。気付けば顔を縦に振っている事に気付いた。が、気付いた時にはもう目の前に見たことのない文字が書いてあった。 
「さ、これが契約内容だ。一番下に名前を書けば契約が成立する。さぁはやく!」
そっと手が伸びる。不思議だ。今は何も考えられない。契約内容が掛かれた場所に手が触れそうな時、何かが手を引き離したのだ。 
  「……村に見覚えのある気配が侵入したと思って来てみれば。最近の悪魔はモラルが無さすぎですね。昔はせめて契約内容は相手が読める字を使っていたしなにより、契約相手に暗示を掛けるなんて真似はしませんでしたが?それでも悪魔の王とやらですか?」
  「チッ、小娘が……!なんの真似だ、これはコイツとの契約だ。お前が介入することは」
「ありますとも。彼は私の都合で呼んだ被害者です。私は彼を最低限護る義務がある」
そこにはミーアがいた。いや、女神がいた。今まで見てきた彼女とは何もかもが違っていた。れは正に女神だったのだ。
  「立ち去れ。彼には危害を加えないという契約だったはずですが?」
  「ククク、契約は危害かな?」
相変わらず不気味に笑うそれに女神は更に怒りをあらわにした。周りを包み込む気配が重くなるのを肌で感じることができるほどに。
「即座に死をもたらす契約が危害を加えないと言えるのか!何もかもデタラメの契約をさせるのは危害じゃないと言えるか!」
  「はぁ、わかったとも。確かにグレーではあるからな。ここは退こう」
黒い何かは明らかにめんどくさいというため息をしながら踵を返した。が、それをミーアが呼び止める。
  「何かね?もう話は終わっただろう」
  「契約内容の修正です。彼に危害を加えない。という内容を彼に今後一切貴方は接触をしないに変更。これにしなさい」
  「ほぉ、それは何かしらこちらのメリットも追加してもらえるのかね?」
  「良いでしょう。全てが終わった後、私の魂の所有権を貴方に渡します。好きに殺せば良い」
  「………ほう。ハハハ、これは傑作だよ。あぁ、傑作だ、傑作。ハハハ!笑えるなぁ!?小娘。そんなにそれが大事か?大事だよなぁ?なんせ、は」
「黙れ!契約の内容の変更はもう終わりました。一刻もはやく立ち去ってもらいましょうか」
  「ふむ。それもそうだ。そろそろ契約がこちらにも適応される。帰るとしようか」
そう言うと黒かった場所が元の色に戻っていく。あぁ、あれはなんだったんだろうか。謎が増えた。
  「ふぅ、大丈夫ですか?今暗示を解きますね」
だんだん思考に掛かっていた雲が晴れていく。そしてようやっと現状が理解できた。
  「なんで、ここに?もう会わないんだろう?」
  「そのつもりだったんですけどね?駒が敵に奪われそうだったので仕方なく」
  「そっか…ありがとうな」
  「えぇ。そう言えば今月もあと一週間ですね。では、次こそはお会いする事はないでしょうね」
ニコッと笑ってみせるとミーアはそっと消えた。するとバンが戻って来た。後ろにはリカもいる。
  「喜べ!今日はニュースがある!」
  「はい!あります!」
二人は大喜びの様子だ。なんか両手には色々あるし……主にバンの両手に。
  「ニュースってなんだよ?勿論バットニュースじゃないんだろうな?」
  「勿論。ハッピーニュースってやつだ」
  「ハッピーニュースです!」
テンションが落ちる気配がない。そこに丁度アールが帰ってきた。魚はかなり釣れたらしい。
  「お、アールも帰ってきたし発表するか。聞いて驚けよ?なんと、なんとだ!この村が正式に村として認められた!」
「認められました!」
予想の何倍も嬉しいニュースが飛び込んできた。頑張りが認められた気分だ。
  「正式に村になるにあたって主に声を上げてくれたのはあの街の住民だ。つまり、お前の売り込みのおかげだぞ!一翔」
  「ほ、ほんとか?ほんとのほんとに?ここが村に?」
  「あぁ!今日は宴だ!村になったことで来月から住民も来る。俺達だけのこのだだっ広い空間ももうそろそろおしまいだ」
  「私が正式にここの住民となるのと同時に私を追ったいたスーマルク国にその行為の差止めとその行為への責任問題が発生しました。これでやっと皆も……報われるんですかね?」
涙を浮かべながら笑うリカを俺は抱き締める事しかできなかった。ずっと無理をしていたんだ。無理をして笑ってたんだ。やっとそれから解放されたんだ。今は、思う存分泣いてもらいたい。
  「うし、アール。宴の準備は俺達だけでやるぞ」
  「そうなりますよねぇ、わかりました。魚はかなり釣れたので」
この場にいる全員が嬉しさを抱えていた。この場にいる一人が悲しみを抱えていた。今日はこの世界で一番の宴が始まるだろう。何せ神官と神がいるのだから。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

神の手違い転生。悪と理不尽と運命を無双します!

yoshikazu
ファンタジー
橘 涼太。高校1年生。突然の交通事故で命を落としてしまう。 しかしそれは神のミスによるものだった。 神は橘 涼太の魂を神界に呼び謝罪する。その時、神は橘 涼太を気に入ってしまう。 そして橘 涼太に提案をする。 『魔法と剣の世界に転生してみないか?』と。 橘 涼太は快く承諾して記憶を消されて転生先へと旅立ちミハエルとなる。 しかし神は転生先のステータスの平均設定を勘違いして気付いた時には100倍の設定になっていた。 さらにミハエルは〈光の加護〉を受けておりステータスが合わせて1000倍になりスキルも数と質がパワーアップしていたのだ。 これは神の手違いでミハエルがとてつもないステータスとスキルを提げて世の中の悪と理不尽と運命に立ち向かう物語である。

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情され、異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

1歳児天使の異世界生活!

春爛漫
ファンタジー
 夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。 ※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

処理中です...