混血の子は純血貴族に愛される

銀花月

文字の大きさ
14 / 20

お茶会

しおりを挟む
「ルディ様、すみません。ヤンジッチに逃げられてしまいました」

 戻ってきたジールが、ルディに頭を下げた。
 エイリアはベッドで眠っており、二人は声をおさえながら会話を続ける。

「…お前が逃がすなんて珍しいな」
「途中でサリーニァ嬢の使いの者が来たんですよ。そこで突然ヤンジッチが暴れ出し、階段から転げ落ちたんです。その行動に思わず、呆気に取られてしまいました。逃げられる前に、脚の一本でも折っておけばよかったです」
「……」

 黙ったままエイリアを見つめるルディに、ジールは背筋がゾッとした。

 まるでがそこにいるようだ。

「…ルディ様」
「なんだ」

 ルディの赤黒い瞳と視線が合った。昔見た赤い瞳ではなく、今の赤黒い瞳だ。

「…いえ、なんでもありません。それで、そのサリーニァ嬢の使いなんですが、午後からお茶会をするのでルディ様に出席してほしいと」
「出席しよう。きっとサリーニァ嬢には、ビュッシッ卿から話がいってることだろうからな」
「エイリア君は、どうしますか?」

 ジールは、エイリアのボロボロになった服を見た。
 先ほどのことは何も聞けていないが、心に傷を負ったのは見てわかる。

「放ってはおけない」
「でも貴方は今、無理しています。袖口から血が滲んでますよ」

 袖口から見える腕には、えぐるように引っ掻いた傷があった。あの匂いを身近で嗅いで、平気なわけがない。

「…よく我慢なさいました」

 ジールはそれ以上何も言えず、無言でルディの傷を治療し、エイリアが起きるのを待った。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「ルディ様、この紅茶はわたくしの実家が、ルディ様のために送って下さったんです」
「…そうか」

 ルディは、エイリアとジールを連れてサリーニァのお茶会へと参加していた。

(サリーニァ様…)

 正面に座るサリーニァをエイリアは、見ることができなかった。
 起きてから、ヤンジッチにされた事を二人に話したエイリアだったが、サリーニァのことは話していなかった。

(僕が襲われた事にサリーニァ様が、関わっているって話したら…ビュッシッ様が言っていた、婚約の話がダメになってしまうし……)

 グルグルと頭を悩まし、うつむいていると、横に気配を感じた。

「ねぇ、貴方。お菓子が別室にあるの。一緒に取りに行ってくださらないかしら?」

 ニッコリとサリーニァが微笑みかけてきていた。しかし、エイリアはその笑顔が怖いと感じた。

「あ…」
「ジールに行かせる。エイリアはここにいろ」
「私が一緒に参りますよ、サリーニァ嬢」

 隣に座るルディに腕を掴まれ、座っているように促される。

「あら、貴方はルディ様の側近になるんじゃないの?なんでもかんでもジール様がやっていたら、もう側近はいらないわね?」
「サリーニァ嬢!言っておくが、エイリアは――」
「ぼ、僕、サリーニァ様と一緒に取りに行きます!」

 ササッと椅子から立ち上がり、サリーニァに頭を下げる。心配そうに見ているルディには、小さい声で「大丈夫だよ」と返しておく。

「ジール様、そういうことですのでお座りになってて。じゃあ、貴方お願いね」

 スタスタと歩き出す、サリーニァの後を近づきすぎないようについていく。

(隣の部屋だったら、何かあっても大声を出せばルディが助けに来てくれる)

 隣の部屋に入ると、テーブルの上にお菓子が並べられていた。
 サリーニァは、エイリアに皿を渡すと次々とお菓子を乗せ始めた。

「…貴方は、サクールから何も聞かなかったのかしら?」

 黙々とお菓子を盛っていたサリーニァが声をかけてきたので、思わずビクッと身体が反応してしまう。

「…サリーニァ様とサクール君が、ご姉弟ということでしょうか?」
「聞いていたなら、いいわ」

 サッと持っていた皿が取り上げられると同時にエイリアは、後ろから誰かに拘束されてしまった。
 口には布を噛まされ、叫びたくても声が出せない。

「やっぱり、お前から美味しそうな匂いがするな」

 自分を襲ってきた男の声に聞き覚えがあった。
 ベロリと耳を舐められ、エイリアは恐怖で身体が震えてしまう。

「ヤンジッチ様、二度目の失敗は許しませんわよ」
「コイツを俺の奴隷にしたら、犬と番わせてるところを見せてやるよ」
「穢らわしいモノなど見たくないわ」

 初めて見た時の冷たい目線が、再びエイリアへと向けられる。

「今度こそ、ルディ様から離れてくださいませ。な・り・損・な・い・」

 サリーニァが盛った皿と一緒に部屋から出ると、エイリアはヤンジッチに床へと押し倒された。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】人見先輩だけは占いたくない!

鳥居之イチ
BL
【登場人物】 受:新島 爽《にいじま そう》   →鮫島高等学校/高校二年生/帰宅部    身長 :168センチ    体重 :59キロ    血液型:A型    趣味 :タロット占い 攻:人見 孝仁《ひとみ たかひと》   →鮫島高等学校/高校三年生/元弓道部    身長 :180センチ    体重 :78キロ    血液型:O型    趣味 :精神統一、瞑想 ——————————————— 【あらすじ】 的中率95%を誇るタロット占いで、校内の注目を集める高校二年生の新島爽。ある日、占いの逆恨みで襲われた彼は、寡黙な三年生の人見孝仁に救われる。 その凛とした姿に心を奪われた爽だったが、精神統一を重んじ「心を乱されること」を嫌う人見にとって、自分は放っておけない「弟分」でしかないと告げられてしまうが…… ——————————————— ※この作品は他サイトでも投稿しております。

Sランク冒険者クロードは吸血鬼に愛される

あさざきゆずき
BL
ダンジョンで僕は死にかけていた。傷口から大量に出血していて、もう助かりそうにない。そんなとき、人間とは思えないほど美しくて強い男性が現れた。

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

血のつながらない弟に誘惑されてしまいました。【完結】

まつも☆きらら
BL
突然できたかわいい弟。素直でおとなしくてすぐに仲良くなったけれど、むじゃきなその弟には実は人には言えない秘密があった。ある夜、俺のベッドに潜り込んできた弟は信じられない告白をする。

闘乱世界ユルヴィクス -最弱と最強神のまったり世直し旅!?-

mao
BL
 力と才能が絶対的な存在である世界ユルヴィクスに生まれながら、何の力も持たずに生まれた無能者リーヴェ。  無能であるが故に散々な人生を送ってきたリーヴェだったが、ある日、将来を誓い合った婚約者ティラに事故を装い殺されかけてしまう。崖下に落ちたところを不思議な男に拾われたが、その男は「神」を名乗るちょっとヤバそうな男で……?  天才、秀才、凡人、そして無能。  強者が弱者を力でねじ伏せ支配するユルヴィクス。周りをチート化させつつ、世界の在り方を変えるための世直し旅が、今始まる……!?  ※一応はバディモノですがBL寄りなので苦手な方はご注意ください。果たして愛は芽生えるのか。   のんびりまったり更新です。カクヨム、なろうでも連載してます。

追放オメガ聖帝の幸せな結婚〜クールなスパダリ騎士に拾われて溺愛されるまで〜

あきたいぬ大好き(深凪雪花)
BL
ノルディーナ王国の聖帝サーナは、教皇のありもしない嘘のせいで聖宮から追放されてしまう。 行く当てがないサーナが国境に向かうと、そこで隣国ルミルカ王国の騎士であるムーシュと出会う。ムーシュから諸事情により偽装結婚を提案されて、サーナは期限付きの偽装結婚ならばよいと承諾し、一時的に保護してもらうことに。 異国暮らしに慣れていく中で、やがてムーシュから溺愛されるようになり……?

完結·氷の宰相の寝かしつけ係に任命されました

BL
幼い頃から心に穴が空いたような虚無感があった亮。 その穴を埋めた子を探しながら、寂しさから逃げるようにボイス配信をする日々。 そんなある日、亮は突然異世界に召喚された。 その目的は―――――― 異世界召喚された青年が美貌の宰相の寝かしつけをする話 ※小説家になろうにも掲載中

美しい世界を紡ぐウタ

日燈
BL
 精靈と人間が共に生きる世界。  “ウタ”を紡いで調和をもたらす、カムナギという存在がいた。  聖界から追放された一族の末裔である少年、リュエルは、 “ウタ紡ぎ” として独自の活動をする日々の中、思いがけずカムナギを育成する学び舎への招待状を渡される。  意を決して飛び込んだそこは、貴族ばかりの別世界。出会いと波乱に満ちた学生生活の幕が上がった。  強く、大らかに開花してゆくリュエルの傍には、導き手のような二人の先輩。ほころんだ心に芽生えた、初めての想いと共に。  ――かつて紡がれた美しい世界が、永久になるまで。

処理中です...