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お茶会
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「ルディ様、すみません。ヤンジッチに逃げられてしまいました」
戻ってきたジールが、ルディに頭を下げた。
エイリアはベッドで眠っており、二人は声をおさえながら会話を続ける。
「…お前が逃がすなんて珍しいな」
「途中でサリーニァ嬢の使いの者が来たんですよ。そこで突然ヤンジッチが暴れ出し、階段から転げ落ちたんです。その行動に思わず、呆気に取られてしまいました。逃げられる前に、脚の一本でも折っておけばよかったです」
「……」
黙ったままエイリアを見つめるルディに、ジールは背筋がゾッとした。
まるでかつてのルディがそこにいるようだ。
「…ルディ様」
「なんだ」
ルディの赤黒い瞳と視線が合った。昔見た赤い瞳ではなく、今の赤黒い瞳だ。
「…いえ、なんでもありません。それで、そのサリーニァ嬢の使いなんですが、午後からお茶会をするのでルディ様に出席してほしいと」
「出席しよう。きっとサリーニァ嬢には、ビュッシッ卿から話がいってることだろうからな」
「エイリア君は、どうしますか?」
ジールは、エイリアのボロボロになった服を見た。
先ほどのことは何も聞けていないが、心に傷を負ったのは見てわかる。
「放ってはおけない」
「でも貴方は今、無理しています。袖口から血が滲んでますよ」
袖口から見える腕には、えぐるように引っ掻いた傷があった。あの匂いを身近で嗅いで、平気なわけがない。
「…よく我慢なさいました」
ジールはそれ以上何も言えず、無言でルディの傷を治療し、エイリアが起きるのを待った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ルディ様、この紅茶はわたくしの実家が、ルディ様のために送って下さったんです」
「…そうか」
ルディは、エイリアとジールを連れてサリーニァのお茶会へと参加していた。
(サリーニァ様…)
正面に座るサリーニァをエイリアは、見ることができなかった。
起きてから、ヤンジッチにされた事を二人に話したエイリアだったが、サリーニァのことは話していなかった。
(僕が襲われた事にサリーニァ様が、関わっているって話したら…ビュッシッ様が言っていた、婚約の話がダメになってしまうし……)
グルグルと頭を悩まし、うつむいていると、横に気配を感じた。
「ねぇ、貴方。お菓子が別室にあるの。一緒に取りに行ってくださらないかしら?」
ニッコリとサリーニァが微笑みかけてきていた。しかし、エイリアはその笑顔が怖いと感じた。
「あ…」
「ジールに行かせる。エイリアはここにいろ」
「私が一緒に参りますよ、サリーニァ嬢」
隣に座るルディに腕を掴まれ、座っているように促される。
「あら、貴方はルディ様の側近になるんじゃないの?なんでもかんでもジール様がやっていたら、もう側近はいらないわね?」
「サリーニァ嬢!言っておくが、エイリアは――」
「ぼ、僕、サリーニァ様と一緒に取りに行きます!」
ササッと椅子から立ち上がり、サリーニァに頭を下げる。心配そうに見ているルディには、小さい声で「大丈夫だよ」と返しておく。
「ジール様、そういうことですのでお座りになってて。じゃあ、貴方お願いね」
スタスタと歩き出す、サリーニァの後を近づきすぎないようについていく。
(隣の部屋だったら、何かあっても大声を出せばルディが助けに来てくれる)
隣の部屋に入ると、テーブルの上にお菓子が並べられていた。
サリーニァは、エイリアに皿を渡すと次々とお菓子を乗せ始めた。
「…貴方は、サクールから何も聞かなかったのかしら?」
黙々とお菓子を盛っていたサリーニァが声をかけてきたので、思わずビクッと身体が反応してしまう。
「…サリーニァ様とサクール君が、ご姉弟ということでしょうか?」
「聞いていたなら、いいわ」
サッと持っていた皿が取り上げられると同時にエイリアは、後ろから誰かに拘束されてしまった。
口には布を噛まされ、叫びたくても声が出せない。
「やっぱり、お前から美味しそうな匂いがするな」
自分を襲ってきた男の声に聞き覚えがあった。
ベロリと耳を舐められ、エイリアは恐怖で身体が震えてしまう。
「ヤンジッチ様、二度目の失敗は許しませんわよ」
「コイツを俺の奴隷にしたら、犬と番わせてるところを見せてやるよ」
「穢らわしいモノなど見たくないわ」
初めて見た時の冷たい目線が、再びエイリアへと向けられる。
「今度こそ、ルディ様から離れてくださいませ。な・り・損・な・い・」
サリーニァが盛った皿と一緒に部屋から出ると、エイリアはヤンジッチに床へと押し倒された。
戻ってきたジールが、ルディに頭を下げた。
エイリアはベッドで眠っており、二人は声をおさえながら会話を続ける。
「…お前が逃がすなんて珍しいな」
「途中でサリーニァ嬢の使いの者が来たんですよ。そこで突然ヤンジッチが暴れ出し、階段から転げ落ちたんです。その行動に思わず、呆気に取られてしまいました。逃げられる前に、脚の一本でも折っておけばよかったです」
「……」
黙ったままエイリアを見つめるルディに、ジールは背筋がゾッとした。
まるでかつてのルディがそこにいるようだ。
「…ルディ様」
「なんだ」
ルディの赤黒い瞳と視線が合った。昔見た赤い瞳ではなく、今の赤黒い瞳だ。
「…いえ、なんでもありません。それで、そのサリーニァ嬢の使いなんですが、午後からお茶会をするのでルディ様に出席してほしいと」
「出席しよう。きっとサリーニァ嬢には、ビュッシッ卿から話がいってることだろうからな」
「エイリア君は、どうしますか?」
ジールは、エイリアのボロボロになった服を見た。
先ほどのことは何も聞けていないが、心に傷を負ったのは見てわかる。
「放ってはおけない」
「でも貴方は今、無理しています。袖口から血が滲んでますよ」
袖口から見える腕には、えぐるように引っ掻いた傷があった。あの匂いを身近で嗅いで、平気なわけがない。
「…よく我慢なさいました」
ジールはそれ以上何も言えず、無言でルディの傷を治療し、エイリアが起きるのを待った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ルディ様、この紅茶はわたくしの実家が、ルディ様のために送って下さったんです」
「…そうか」
ルディは、エイリアとジールを連れてサリーニァのお茶会へと参加していた。
(サリーニァ様…)
正面に座るサリーニァをエイリアは、見ることができなかった。
起きてから、ヤンジッチにされた事を二人に話したエイリアだったが、サリーニァのことは話していなかった。
(僕が襲われた事にサリーニァ様が、関わっているって話したら…ビュッシッ様が言っていた、婚約の話がダメになってしまうし……)
グルグルと頭を悩まし、うつむいていると、横に気配を感じた。
「ねぇ、貴方。お菓子が別室にあるの。一緒に取りに行ってくださらないかしら?」
ニッコリとサリーニァが微笑みかけてきていた。しかし、エイリアはその笑顔が怖いと感じた。
「あ…」
「ジールに行かせる。エイリアはここにいろ」
「私が一緒に参りますよ、サリーニァ嬢」
隣に座るルディに腕を掴まれ、座っているように促される。
「あら、貴方はルディ様の側近になるんじゃないの?なんでもかんでもジール様がやっていたら、もう側近はいらないわね?」
「サリーニァ嬢!言っておくが、エイリアは――」
「ぼ、僕、サリーニァ様と一緒に取りに行きます!」
ササッと椅子から立ち上がり、サリーニァに頭を下げる。心配そうに見ているルディには、小さい声で「大丈夫だよ」と返しておく。
「ジール様、そういうことですのでお座りになってて。じゃあ、貴方お願いね」
スタスタと歩き出す、サリーニァの後を近づきすぎないようについていく。
(隣の部屋だったら、何かあっても大声を出せばルディが助けに来てくれる)
隣の部屋に入ると、テーブルの上にお菓子が並べられていた。
サリーニァは、エイリアに皿を渡すと次々とお菓子を乗せ始めた。
「…貴方は、サクールから何も聞かなかったのかしら?」
黙々とお菓子を盛っていたサリーニァが声をかけてきたので、思わずビクッと身体が反応してしまう。
「…サリーニァ様とサクール君が、ご姉弟ということでしょうか?」
「聞いていたなら、いいわ」
サッと持っていた皿が取り上げられると同時にエイリアは、後ろから誰かに拘束されてしまった。
口には布を噛まされ、叫びたくても声が出せない。
「やっぱり、お前から美味しそうな匂いがするな」
自分を襲ってきた男の声に聞き覚えがあった。
ベロリと耳を舐められ、エイリアは恐怖で身体が震えてしまう。
「ヤンジッチ様、二度目の失敗は許しませんわよ」
「コイツを俺の奴隷にしたら、犬と番わせてるところを見せてやるよ」
「穢らわしいモノなど見たくないわ」
初めて見た時の冷たい目線が、再びエイリアへと向けられる。
「今度こそ、ルディ様から離れてくださいませ。な・り・損・な・い・」
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