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恐怖と怒り
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エイリアが出て行ってから数分、コツコツコツと靴を鳴らす音だけが部屋に響いている。
「エイリアが心配だ」
「私が見てきましょう」
苛立ちを隠せない主人の空気を読み、ジールが立ち上がるとドアが開いた。そこには二人の見知った顔が立っている。
「おや、もう始まっていたか」
二人の視線を気にすることなく、部屋の中へと入り、空いている席へと男が座った。
「帰ってなかったのですか、父上」
「サリーニァ嬢からお茶会の誘いがあったのでね。時間がくるまで、学院の客室で待たせてもらっていた。さぁ、立っていないで座りなさい」
ジールの父親が座るように促すが、ジールは座ろうとはしなかった。
この場で誰が自分の主人なのかを示すためだ。
「…ビュッシッ卿、サリーニァ嬢が戻って来たら話があります。ライディア家の当主として」
「ほう、当主としてか。なら、その話がサリーニァ嬢にとって良い話だと嬉しいが」
その答えには答えず、ルディは立っているジールへと視線を向けた。
「ジール、連れ戻してこい」
「はい」
「待ちなさい」
横を通りすぎようとするジールを手で遮り、歩みを止める。
「サリーニァ嬢が、どこへ行ったというのだ。お前が迎えにいくほどの事なのか?」
「隣の部屋にいらっしゃいますよ…お菓子を取りに行きました。それに一人では持てないでしょう?」
「サリーニァ嬢を待っていろ。主人の命令と言えど、主催者を待たず部屋から出るなど不粋だぞ。それにあちらには、シュノタル家の小倅がいるだろう?」
その言葉にルディとジールが反応した。
サリーニァが混血を嫌いなのは、この場にいる者はみんな知っている。
そのサリーニァが混血のエイリアを連れて、別室に行くなど考えられようか。
ましてや、今来たばかりの者に二人が一緒にいるなどと答えられるはずがない。
「なぜエイリアが、サリーニァ嬢と一緒だと思ったんだ?ビュッシッ卿…」
顔をしかめたルディが、ジールの父親を睨みつける。
「何を怒っている、ルディ。この場に居ないのだから、そう考えるだろう?」
「サリーニァ嬢が混血を嫌っているのを知っているならば、その答えは出てこないはずだ」
張り詰めた空気が、ルディとジールの父親の間に漂った。
自分の父親を不審に思ったジールは、隣の部屋へ行こうと足を進めた。ドアを開けようと手を伸ばすと、先にドアが開いた。
「お待たせしましたわ。あら、ジール様」
「…お菓子をこちらへ。お持ちしますよ」
皿を受け取りつつ、サリーニァについているはずのエイリアの姿を探す。しかし、後ろには誰もいない。
「エイリア君はどこですか?」
「まだ戻ってませんの?」
その言葉にルディが素早く反応し、サリーニァに視線を向けた。
「サリーニァ嬢。エイリアはどうした」
「先に帰らせましたのに、おかしいですわね。自分の部屋にでも戻ったのかしら?」
ザワッと寒気を感じたジールが、サリーニァを庇い床に伏せた。
バァンッ
激しい音と共に部屋にある窓ガラスが全て割れ、飛び散った。
「え!?なんですの!?」
突然の出来事にサリーニァが狼狽えている中、ジールはその発生源を見つめていた。
「ルディ様の瞳の色が…赤い。まさか、記憶が戻った…?」
真っ先に視界に入ったのは、かつて目にしていた従兄弟の赤い瞳。
元祖の力を色濃く受け継ぎ、自分が敵わないと思わされた威圧感がそこにあった。
「ルディ!その力、ヴァンパイアとしての能力が戻ったのか!?」
衝撃で椅子から転げ落ちていたジールの父親が、嬉しそうに立ち上がった。
だが、ルディの視線は射殺すほどに冷たく、目が合ったジールの父親は身体を強張せた。
「俺は今、怒りしかない。分かるか?大切なモノを罵られ、貶される俺の気持ちが」
ルディの言葉に全員が、死の恐怖を感じた。
冷や汗が流れ、身動きすることも出来ず、震える身体を倒れないように支えることしかできない。
「ビュッシッ卿、それにサリーニァ嬢。お前達が混血が嫌いなのは知っている。だが、俺はエイリアを伴侶として望んでいる」
「ダメだ!純血のお前に混血など!!」
「今の俺にそれが言えるのか」
決死に叫んだジールの父親だったが、ルディの当主としての力の強さを感じ、顔を歪めた。
「ひぃいいっ」
恐怖からか、サリーニァが叫び声を上げて顔を床に伏せた。
「エイリアが何処にいるか、知っているな?」
「と、隣の部屋に…で、でも…もう遅いですわ!あの混血は、貴方以外のモノになってますもの!!あんな混血に関わるのは、おやめくださいまし!!」
途端に凄まじい圧が部屋にかかり、誰一人言葉を発することができなくなった。
ルディは、隣に繋がっているであろう壁の前へと足を進めた。
「俺のモノに手を出したら、殺すしかない」
壁に手をあて、ルディが立ち止まった。
その場にいる者達は固唾を呑み、これから起こることを見ていることしかできなかった―――
「エイリアが心配だ」
「私が見てきましょう」
苛立ちを隠せない主人の空気を読み、ジールが立ち上がるとドアが開いた。そこには二人の見知った顔が立っている。
「おや、もう始まっていたか」
二人の視線を気にすることなく、部屋の中へと入り、空いている席へと男が座った。
「帰ってなかったのですか、父上」
「サリーニァ嬢からお茶会の誘いがあったのでね。時間がくるまで、学院の客室で待たせてもらっていた。さぁ、立っていないで座りなさい」
ジールの父親が座るように促すが、ジールは座ろうとはしなかった。
この場で誰が自分の主人なのかを示すためだ。
「…ビュッシッ卿、サリーニァ嬢が戻って来たら話があります。ライディア家の当主として」
「ほう、当主としてか。なら、その話がサリーニァ嬢にとって良い話だと嬉しいが」
その答えには答えず、ルディは立っているジールへと視線を向けた。
「ジール、連れ戻してこい」
「はい」
「待ちなさい」
横を通りすぎようとするジールを手で遮り、歩みを止める。
「サリーニァ嬢が、どこへ行ったというのだ。お前が迎えにいくほどの事なのか?」
「隣の部屋にいらっしゃいますよ…お菓子を取りに行きました。それに一人では持てないでしょう?」
「サリーニァ嬢を待っていろ。主人の命令と言えど、主催者を待たず部屋から出るなど不粋だぞ。それにあちらには、シュノタル家の小倅がいるだろう?」
その言葉にルディとジールが反応した。
サリーニァが混血を嫌いなのは、この場にいる者はみんな知っている。
そのサリーニァが混血のエイリアを連れて、別室に行くなど考えられようか。
ましてや、今来たばかりの者に二人が一緒にいるなどと答えられるはずがない。
「なぜエイリアが、サリーニァ嬢と一緒だと思ったんだ?ビュッシッ卿…」
顔をしかめたルディが、ジールの父親を睨みつける。
「何を怒っている、ルディ。この場に居ないのだから、そう考えるだろう?」
「サリーニァ嬢が混血を嫌っているのを知っているならば、その答えは出てこないはずだ」
張り詰めた空気が、ルディとジールの父親の間に漂った。
自分の父親を不審に思ったジールは、隣の部屋へ行こうと足を進めた。ドアを開けようと手を伸ばすと、先にドアが開いた。
「お待たせしましたわ。あら、ジール様」
「…お菓子をこちらへ。お持ちしますよ」
皿を受け取りつつ、サリーニァについているはずのエイリアの姿を探す。しかし、後ろには誰もいない。
「エイリア君はどこですか?」
「まだ戻ってませんの?」
その言葉にルディが素早く反応し、サリーニァに視線を向けた。
「サリーニァ嬢。エイリアはどうした」
「先に帰らせましたのに、おかしいですわね。自分の部屋にでも戻ったのかしら?」
ザワッと寒気を感じたジールが、サリーニァを庇い床に伏せた。
バァンッ
激しい音と共に部屋にある窓ガラスが全て割れ、飛び散った。
「え!?なんですの!?」
突然の出来事にサリーニァが狼狽えている中、ジールはその発生源を見つめていた。
「ルディ様の瞳の色が…赤い。まさか、記憶が戻った…?」
真っ先に視界に入ったのは、かつて目にしていた従兄弟の赤い瞳。
元祖の力を色濃く受け継ぎ、自分が敵わないと思わされた威圧感がそこにあった。
「ルディ!その力、ヴァンパイアとしての能力が戻ったのか!?」
衝撃で椅子から転げ落ちていたジールの父親が、嬉しそうに立ち上がった。
だが、ルディの視線は射殺すほどに冷たく、目が合ったジールの父親は身体を強張せた。
「俺は今、怒りしかない。分かるか?大切なモノを罵られ、貶される俺の気持ちが」
ルディの言葉に全員が、死の恐怖を感じた。
冷や汗が流れ、身動きすることも出来ず、震える身体を倒れないように支えることしかできない。
「ビュッシッ卿、それにサリーニァ嬢。お前達が混血が嫌いなのは知っている。だが、俺はエイリアを伴侶として望んでいる」
「ダメだ!純血のお前に混血など!!」
「今の俺にそれが言えるのか」
決死に叫んだジールの父親だったが、ルディの当主としての力の強さを感じ、顔を歪めた。
「ひぃいいっ」
恐怖からか、サリーニァが叫び声を上げて顔を床に伏せた。
「エイリアが何処にいるか、知っているな?」
「と、隣の部屋に…で、でも…もう遅いですわ!あの混血は、貴方以外のモノになってますもの!!あんな混血に関わるのは、おやめくださいまし!!」
途端に凄まじい圧が部屋にかかり、誰一人言葉を発することができなくなった。
ルディは、隣に繋がっているであろう壁の前へと足を進めた。
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