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格差

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「大人しくしていろ、愚物がっ」
「うぅー!!」

 背中にヤンジッチが馬乗りになって、手首を押さえつけてきた。

 打ちつけた肩とお腹が痛むが、脚をバタつかせ、エイリアは抵抗してみせた。

「んー!んんーっ!!」

 塞がれた口から一生懸命叫んでみるが、声にはならない。だが、少しでも隣にいるルディ達に気づいてもらえるように叫び続ける。

「なり損ない、お前のこの匂いはなんだ?」

 後ろから首元をベロリと舐められ、エイリアは嫌悪感に顔を歪ませた。

 ズブッと首筋にヤンジッチの牙が、皮膚に入り込んでくる。

「あっ、ぐぅう!!」

 咬まれた場所に熱が集まり、心臓が激しく脈を打つ。何かが身体中を駆け巡り、自分の意思とは関係なく手足が痙攣し始めた。

「ひっ、いっんんっ」

 発情させられた時とは、比べものにならないほどの感覚が身体のあちらこちらに現れた。
 敏感になったせいで、痛いはずの首筋も快楽へと変わってしまう。

「んっ、んぅ…っ」
「…はっ、催淫が効いてきたみたいだな。犬のように腰なんて振りやがって」

 昂った股間がもどかしく、エイリアは無我夢中に床へと腰を擦り付ける。張り詰めたモノを出したくて、仕方がない。

 ヤンジッチは、抵抗を見せなくなったエイリアの口から布を外し、その布で手首を拘束した。

「もう抵抗もする気にならないだろう?みんな噛まれるとそうなる。あとは、よがって従順になるだけだ」

 後ろからズボンの中に手を入れられ、勃起したモノをヤンジッチに握られた。

「あっ、あっ、ああっ」

 嫌なはずなのに身体の疼きを収めたくて、自分からヤンジッチの手に股間を押し付ける。

「さぁ、俺にお前の本当の名を寄越せ!褒美が欲しいだろ」
「ん、んんっ」

 先っぽをグリグリと指先でいじられ、その気持ちよさにエイリアが腰をくねらせた。

「あっ、あ…言うからぁ、やぁっ」
「名前は?」
「な、名前は…エ、イマ……」

「エイリア、言うな」

 突然、音もなくルディが現れた。床に倒れ込む二人を見下ろし、黙って見ている。

「はっ、またお前かよ。ルディ!これを見てみろ!」

 グイッと金髪を掴み上げ、エイリアの顔を上げさせた。目がうつろになっており、普通じゃないのが見てわかる。

「もうコイツは、お前のことなんて見えていない。頭の中は、腰を振るのでいっぱいだからな。誰のモノでも咥える愛玩道具のできあがりだ」

 ルディと視線を合わせ、ヤンジッチの目が赤く光る。能力を使い、従わせるために命令口調で叫んだ。

「動くなよ、ルディ!そこで、俺がお前のモノを犯し尽くすのを黙って見ているんだ!」

 自分のズボンをずり下ろし、勃起したモノをあらわにする。
 そして、エイリアのズボンに手をかけた瞬間―――

 ボトッと手首が落ちた。

「がっ、あああああああ!!!」

 激痛にヤンジッチが叫び声を上げ、横へと転がった。ルディは淡々とそれを見下ろしている。

「お前に手はいらないだろ」

 痛みで声が出せないヤンジッチに近づき、ルディは落ちている手首を踏みつけた。

「俺がエイリアに手を出されて、怒らないとでも?ああ、それ以前になんでお前の能力が、俺に効かないのか分からないようだな…」

 ヤンジッチは、動かないように能力を使ったはずだった。効かなかった理由が分からず、苦痛な顔でルディを見上げた。

「知っているよな?強い者に弱い者の能力は効かない。つまり、お前より俺の方が格上だということだ」
「おっ、俺がっ!お前より下だと!?ヴァンパイアの能力を使えないお前がなんでっ」

「さぁ…なんでだろうな。エイリアを守れず、当主としてのちからも示せず…ただ、今は忘れていたちからが湧いてきているのを感じる。お前を殺すことも簡単にできそうだ。それともやるか?」

 ルディの赤い瞳がぼんやりと光った。

 自殺をさせようとしているのだと分かり、「ひぃっ」と慌ててヤンジッチが視線を逸らした。
 そして、感じることができなかった圧倒的な強者のちからを感じ取った。

「ヤンジッチ=ボレッチム。お前は俺のモノに二度も手を出した…意味分かるよな?」
「あっ、あれはビュッシッ卿が」
「ビュッシッ卿が?」
「俺に金髪の奴隷がいらないかを聞いてきたんだ!」

 叫んだ瞬間、ヤンジッチの股間にあったモノが無くなり、おびただしい血が床に広がった。

「ぐがああああああ!!!」

 部屋の中にヤンジッチの叫び声が響いた。

 ルディは顔色を変えず、ヤンジッチに近づく。すると横からジールが、手を伸ばし待ったをかけてきた。

「ルディ様、それぐらいにして下さい。雑魚とは言え、三大貴族に名を連ねる者です」
「…俺にコイツを殺すなと?」
「ええ、そうです。は私に任せて、早くエイリア君を別室に連れていってください」

 ジールに言われ、倒れているエイリアに視線を向けた。息も絶え絶えになり、苦しそうに悶えている。

 ルディは、無言のままエイリアを抱き上げ、振り返ることなく部屋を後にした。
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