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第9部 倒錯のイグニス
#121 戦略①
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まだ着換えの済んでいないメンバーだけ、体育館裏の部室に赴いた。
杏里は部室の隅でバスタオルを体に巻きつけて、苦労の末、ユニフォームに着替えた。
ユニフォームは、実戦用に新調された例の赤いビキニである。
みんなそれなりに様になっているが、杏里のものだけ趣が違う。
体育館に戻って8人並んでみると、違いがよくわかった。
杏里のユニフォームのみ、明らかにデザインがセクシー調に変えられているのだ。
それは言ってみれば、海水浴用の水着と、グラビア撮影用の水着の違いのようなものだった。
だから、ほかのメンバーが健康的な色気を醸し出しているのに対して、杏里だけが場違いに猥褻なのである。
しかも、杏里のものにだけ、乳首と股間の部分に小さなファスナーがついている。
その目的は、明日の試合まで、誰にも知られないようにしなければならないのだ。
レスリング部の練習をひと目見ようと、直径9メートルのマットの周りには、何重もの人垣ができている。
「おまえらは自分とこの練習しなよ! 紅白戦は明日なんだよ! 練習の邪魔すんなって!」
璃子がこめかみに青筋を立て、怒鳴っている。
と、そこにふみがのそりと進み出て、ビア樽のような腹を揺すって気味の悪い声で呼びかけた。
「みんな、このふみちゃん目当てなのかなあ? いいよお、いつでも相手になってあげるぅ。まずはキッスからかなあ? それともいきなりハグしちゃう?」
ざわめきが起こり、人垣が崩れた。
マジかよ。
キモすぎ。
杏里出せよ。
なんだよ、あれ。
怪獣かよ。
化け物引っ込めって。
口々に悪態をつきながら戻っていく生徒たちの背を、ふみは憎しみを込めた目で睨みつけている。
「ひっどーい! あたしが何したっていうのよ! もう!」
その姿を遠目に見て、杏里は心の中でため息をついた。
ふみのストレスが解消されないはずである。
物心ついてからずっとあんな扱いを受けてきたとしたら、璃子の言い分じゃないけれど、ちょっとやそっとの浄化では昇華できないに違いない。
「ジャ、らんにんぐ、行キマスヨ。体育館10周デス。レディ・ゴー!」
アニスの号令で、8人が走り出す。
意図せずして、自然と杏里はしんがりになる。
「頑張って、杏里」
時折、純がそう励ましてくれるのはありがたいが、困るのは他の部活の生徒たちの執拗な視線だった。
そばを杏里が通りかかるたび、練習の手を休めて、視線で犯そうとしてくるのである。
もとより杏里は長距離走が大の苦手だ。
乳房が大きすぎて、バランスが取りにくく、おまけに肩への負担が半端ない。
足のリズムに合わせてゆさゆさ上下左右に揺れまくるから、すぐに肩の筋肉が痛くなってしまうのだ。
尻も同じだった。
杏里の臀部は、成人女性並みに発育している。
だから、ボトムが小さいと、布地が尻の肉の間に食い込んでしまうのだ。
特にこのユニフォームはひどかった。
初めからTバック気味のデザインであるため、1周回っただけで杏里の尻の双丘はむき出しになってしまっている。
しかも、杏里は肉体の発育具合とは裏腹に、アイドル級の美少女ときているのだ。
そんな淫らな格好の美少女が自分のすぐそばをよたよた走っていくのである。
体育館中の生徒が練習に上の空になるのは、ある意味必然といってよかった。
地獄のようなランニングが終わると、杏里は白組のメンバーに呼ばれ、マットの隅で円陣を組んだ。
「紅白戦の戦略を立てる」
純、杏里、トモの顔を見渡して、真剣な表情で咲良が言った。
「まずは順番だ。こういう時は、緒戦を取るために、トップバッターはエース級が出るものだ。だから純、まずおまえから行け」
「任せてよ」
にかっと白い歯を見せる純。
「じゃ、2番手は誰にする? トリは咲良で決まりでしょ? てことは、自然、トモか杏里のどっちかってことになるよね」
杏里は部室の隅でバスタオルを体に巻きつけて、苦労の末、ユニフォームに着替えた。
ユニフォームは、実戦用に新調された例の赤いビキニである。
みんなそれなりに様になっているが、杏里のものだけ趣が違う。
体育館に戻って8人並んでみると、違いがよくわかった。
杏里のユニフォームのみ、明らかにデザインがセクシー調に変えられているのだ。
それは言ってみれば、海水浴用の水着と、グラビア撮影用の水着の違いのようなものだった。
だから、ほかのメンバーが健康的な色気を醸し出しているのに対して、杏里だけが場違いに猥褻なのである。
しかも、杏里のものにだけ、乳首と股間の部分に小さなファスナーがついている。
その目的は、明日の試合まで、誰にも知られないようにしなければならないのだ。
レスリング部の練習をひと目見ようと、直径9メートルのマットの周りには、何重もの人垣ができている。
「おまえらは自分とこの練習しなよ! 紅白戦は明日なんだよ! 練習の邪魔すんなって!」
璃子がこめかみに青筋を立て、怒鳴っている。
と、そこにふみがのそりと進み出て、ビア樽のような腹を揺すって気味の悪い声で呼びかけた。
「みんな、このふみちゃん目当てなのかなあ? いいよお、いつでも相手になってあげるぅ。まずはキッスからかなあ? それともいきなりハグしちゃう?」
ざわめきが起こり、人垣が崩れた。
マジかよ。
キモすぎ。
杏里出せよ。
なんだよ、あれ。
怪獣かよ。
化け物引っ込めって。
口々に悪態をつきながら戻っていく生徒たちの背を、ふみは憎しみを込めた目で睨みつけている。
「ひっどーい! あたしが何したっていうのよ! もう!」
その姿を遠目に見て、杏里は心の中でため息をついた。
ふみのストレスが解消されないはずである。
物心ついてからずっとあんな扱いを受けてきたとしたら、璃子の言い分じゃないけれど、ちょっとやそっとの浄化では昇華できないに違いない。
「ジャ、らんにんぐ、行キマスヨ。体育館10周デス。レディ・ゴー!」
アニスの号令で、8人が走り出す。
意図せずして、自然と杏里はしんがりになる。
「頑張って、杏里」
時折、純がそう励ましてくれるのはありがたいが、困るのは他の部活の生徒たちの執拗な視線だった。
そばを杏里が通りかかるたび、練習の手を休めて、視線で犯そうとしてくるのである。
もとより杏里は長距離走が大の苦手だ。
乳房が大きすぎて、バランスが取りにくく、おまけに肩への負担が半端ない。
足のリズムに合わせてゆさゆさ上下左右に揺れまくるから、すぐに肩の筋肉が痛くなってしまうのだ。
尻も同じだった。
杏里の臀部は、成人女性並みに発育している。
だから、ボトムが小さいと、布地が尻の肉の間に食い込んでしまうのだ。
特にこのユニフォームはひどかった。
初めからTバック気味のデザインであるため、1周回っただけで杏里の尻の双丘はむき出しになってしまっている。
しかも、杏里は肉体の発育具合とは裏腹に、アイドル級の美少女ときているのだ。
そんな淫らな格好の美少女が自分のすぐそばをよたよた走っていくのである。
体育館中の生徒が練習に上の空になるのは、ある意味必然といってよかった。
地獄のようなランニングが終わると、杏里は白組のメンバーに呼ばれ、マットの隅で円陣を組んだ。
「紅白戦の戦略を立てる」
純、杏里、トモの顔を見渡して、真剣な表情で咲良が言った。
「まずは順番だ。こういう時は、緒戦を取るために、トップバッターはエース級が出るものだ。だから純、まずおまえから行け」
「任せてよ」
にかっと白い歯を見せる純。
「じゃ、2番手は誰にする? トリは咲良で決まりでしょ? てことは、自然、トモか杏里のどっちかってことになるよね」
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