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第9部 倒錯のイグニス
#339 ラストステージ⑭
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床に落ち、バウンドして止まった唯佳の首が、杏里を見上げていた。
何か信じられないものを目の当たりにしたかのようにかっと見開かれた瞳には、すでに生命の光はない。
首をねじ切られて意志系統を遮断された肢が、巨体を支えきれなくなったのだろう。
続いて地響きを立て、怪物の胴がくずれ落ちた。
同時に唯佳の指と舌が力を失い、杏里の身体を離れ、ふわりと床に沈んでいった。
これは…どういうこと?
何が起こったの?
そう思った瞬間、支えを失い、杏里は身体ごと床に叩きつけられた。
「つっ…」
打撲した右肩を左手でかばいながら半身を起こすと、広がった視界に、体育館の正面入り口が見えた。
片方だけ開いた扉を背にして、ほっそりとした人影が立っている。
体育館の強烈な照明を浴びて、顔の周りで放射状に波打つブロンドの髪が後光のように輝いている。
白いブラウスに真紅のリボン。
短めのスカートから伸びた脚が驚くほど長い。
アクアマリンの瞳がつかの間周囲を見回し、やがて杏里の上で止まった。
「ルナ…」
杏里はわが目を疑った。
美里に拉致され、行方知れずになったルナが、今そこにいる。
念動力だ。
ルナのサイコキネシスが、唯佳の怪物を屠ったのだ。
そう認識するなり、歓喜の念が津波のように押し寄せてきた。
ルナは無事だったんだ。
しかも、それだけではなく、パトスとしての任務を全うすべく、私を助けに来てくれたのだ!
「ルナ…」
軋む身体を起こし、杏里はルナに近寄ろうとした。
が、あることに気づいて、自然とその足が止まる。
ルナはひどく疲れているように見えた。
ブラウスは汚れ、あちこちに茶褐色の染みがついている。
ミニひだスカートからのぞく太腿に、血が滴っていた。
まるで生理を放置しているかのように、股の間から漏れる鮮血が両の太腿を伝い、床に染みを作っているのだ。「寄るな」
だらりと両腕を脇に垂らし、背中を丸めてルナが言った。
「まだ何も終わっちゃいない。だから…」
ルナの整った顔が、苦痛に歪む。
あたかも激痛に耐えているかのように、眉間に深いしわが刻まれている。
「ルナ…どうしたの? 何があったの?」
そう、声をかけたとたんだった。
突然、糸が切れたマリオネットのように、ルナがその場にくず折れた。
横倒しに倒れたそのスカートの間から、真新しい血がすごい勢いで広がっていく。
そして、その血の海の中から、床を這うようにして、”何か”が現れた。
「な、なに…?」
絶句する杏里。
血だらけの眼のない丸い頭部が持ち上がり、鋭い歯のぎっしり並んだ口を開け、杏里を見上げて、
ギイ。
とひと声、”それ”が鳴いた。
何か信じられないものを目の当たりにしたかのようにかっと見開かれた瞳には、すでに生命の光はない。
首をねじ切られて意志系統を遮断された肢が、巨体を支えきれなくなったのだろう。
続いて地響きを立て、怪物の胴がくずれ落ちた。
同時に唯佳の指と舌が力を失い、杏里の身体を離れ、ふわりと床に沈んでいった。
これは…どういうこと?
何が起こったの?
そう思った瞬間、支えを失い、杏里は身体ごと床に叩きつけられた。
「つっ…」
打撲した右肩を左手でかばいながら半身を起こすと、広がった視界に、体育館の正面入り口が見えた。
片方だけ開いた扉を背にして、ほっそりとした人影が立っている。
体育館の強烈な照明を浴びて、顔の周りで放射状に波打つブロンドの髪が後光のように輝いている。
白いブラウスに真紅のリボン。
短めのスカートから伸びた脚が驚くほど長い。
アクアマリンの瞳がつかの間周囲を見回し、やがて杏里の上で止まった。
「ルナ…」
杏里はわが目を疑った。
美里に拉致され、行方知れずになったルナが、今そこにいる。
念動力だ。
ルナのサイコキネシスが、唯佳の怪物を屠ったのだ。
そう認識するなり、歓喜の念が津波のように押し寄せてきた。
ルナは無事だったんだ。
しかも、それだけではなく、パトスとしての任務を全うすべく、私を助けに来てくれたのだ!
「ルナ…」
軋む身体を起こし、杏里はルナに近寄ろうとした。
が、あることに気づいて、自然とその足が止まる。
ルナはひどく疲れているように見えた。
ブラウスは汚れ、あちこちに茶褐色の染みがついている。
ミニひだスカートからのぞく太腿に、血が滴っていた。
まるで生理を放置しているかのように、股の間から漏れる鮮血が両の太腿を伝い、床に染みを作っているのだ。「寄るな」
だらりと両腕を脇に垂らし、背中を丸めてルナが言った。
「まだ何も終わっちゃいない。だから…」
ルナの整った顔が、苦痛に歪む。
あたかも激痛に耐えているかのように、眉間に深いしわが刻まれている。
「ルナ…どうしたの? 何があったの?」
そう、声をかけたとたんだった。
突然、糸が切れたマリオネットのように、ルナがその場にくず折れた。
横倒しに倒れたそのスカートの間から、真新しい血がすごい勢いで広がっていく。
そして、その血の海の中から、床を這うようにして、”何か”が現れた。
「な、なに…?」
絶句する杏里。
血だらけの眼のない丸い頭部が持ち上がり、鋭い歯のぎっしり並んだ口を開け、杏里を見上げて、
ギイ。
とひと声、”それ”が鳴いた。
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