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第9部 倒錯のイグニス
#342 ラストステージ⑰
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「どうしてルナがここに? おまえの家に監禁したんじゃなかったのか?」
舞台袖から外をうかがい、百足丸がうめいた。
「見張りの女はどうした? まさかルナにやられたんじゃ?」
百足丸の視線の先に、引き裂かれたボンテージスーツを身にまとった杏里の後ろ姿。
その向こうに小山のようにうずくまる半裸のふみ。
そして更にその向こうに倒れ伏した制服姿のルナが見える。
「美里さんがそんなにあっさりやられるとは思えないけど…それより、見て。ふみの様子が変」
サングラスの奥でヤチカは目を細めた。
ふたりが見ている前で起こった一連の出来事は、まるきり常軌を逸してしまっていた。
正面入り口に突然ルナが姿を現したかと思うと、杏里を触手で緊縛していた怪物が首をねじ切られ、絶命した。
更にルナがその直後に昏倒し、スカートの間から気味の悪い生物を吐き出した。
そしてその生物は、杏里を守ろうとしたふみに襲いかかると、その口から体内に潜り込んでしまったのである。
生物を呑み込んだふみは、うつぶせになったまま、ぶるぶる震えている。
遠目には細かいところまではわからないが、気のせいか、身体が少しずつ膨張しているように見えるのだ。
ふみには璃子が取りすがり、何やら懸命に呼びかけていた。
「まるで妖怪大戦争だな」
百足丸が苦虫を噛み潰したような渋面でつぶやいた。
「ルナの身体から出てきて、今さっきふみの身体に入ったあの蔦みたいなのも、変異外来種なのか? だとしたらだ、変異外来種ってのは、俺たちとはまったく別種のイキモノだと考えたほうがいいんじゃないか? あんな化け物じみた変態の仕方、とても地球上の生命体とは思えない」
「同感ね。DNAのリミッターがはずれたみたいに、一体一体の形状がバラエティに富んでいる。だいたい、どれもすでにヒトとしての形を留めていないもの」
「とにかく、おまえの言うように、急いだほうがよさそうだな。今なら杏里も油断してる。さっさと済ませてずらかろう」
「そうね。そろそろ委員会の処理班も着く頃でしょうしね」
体育館の中は死体の山だ。
正体不明の怪物の死骸まである。
外来種の存在を世間から隠し通したい委員会は、容赦なくここを焼き払うだろう。
それこそ、骨も残らぬほど完璧に。
その前に、杏里だけは”救出”しなければならないのだ。
「しかし、まさかこんな悲惨な展開になろうとはな」
右手の手袋をはずしながら、百足丸がぼやいた。
「俺はまた、生徒や先公たちに犯されまくってラリッてる杏里を横取りすりゃそれで終わりだと思ってたんだが」
「私もそのつもりだったわ。おそらく井沢もね」
ヤチカはサングラスをはずし、こめかみを伝う汗を拭った。
「でも、こうなってしまったからには、仕方ないじゃない。私たちはただ、与えられた任務をこなすだけ」
「まあな。それじゃ、最初の計画通り、杏里の注意を引きつけておいてくれ。俺が仕事しやすいように」
「わかった。ただ、ふみの様子が気になるわね。あの身体の中には、さっきのイキモノがまだ潜んでいる。あなたも十分気をつけて」
百足丸を残し、ヤチカは広大な1階フロアに足を踏み出した。
濃厚な血の匂いの立ち込めるなかを、杏里の背中めざして歩いていく。
あと数メートルまで近づいたところで、息を調え、思い切って声をかけた。
「杏里ちゃん、お久しぶり。やっと会えたわね」
舞台袖から外をうかがい、百足丸がうめいた。
「見張りの女はどうした? まさかルナにやられたんじゃ?」
百足丸の視線の先に、引き裂かれたボンテージスーツを身にまとった杏里の後ろ姿。
その向こうに小山のようにうずくまる半裸のふみ。
そして更にその向こうに倒れ伏した制服姿のルナが見える。
「美里さんがそんなにあっさりやられるとは思えないけど…それより、見て。ふみの様子が変」
サングラスの奥でヤチカは目を細めた。
ふたりが見ている前で起こった一連の出来事は、まるきり常軌を逸してしまっていた。
正面入り口に突然ルナが姿を現したかと思うと、杏里を触手で緊縛していた怪物が首をねじ切られ、絶命した。
更にルナがその直後に昏倒し、スカートの間から気味の悪い生物を吐き出した。
そしてその生物は、杏里を守ろうとしたふみに襲いかかると、その口から体内に潜り込んでしまったのである。
生物を呑み込んだふみは、うつぶせになったまま、ぶるぶる震えている。
遠目には細かいところまではわからないが、気のせいか、身体が少しずつ膨張しているように見えるのだ。
ふみには璃子が取りすがり、何やら懸命に呼びかけていた。
「まるで妖怪大戦争だな」
百足丸が苦虫を噛み潰したような渋面でつぶやいた。
「ルナの身体から出てきて、今さっきふみの身体に入ったあの蔦みたいなのも、変異外来種なのか? だとしたらだ、変異外来種ってのは、俺たちとはまったく別種のイキモノだと考えたほうがいいんじゃないか? あんな化け物じみた変態の仕方、とても地球上の生命体とは思えない」
「同感ね。DNAのリミッターがはずれたみたいに、一体一体の形状がバラエティに富んでいる。だいたい、どれもすでにヒトとしての形を留めていないもの」
「とにかく、おまえの言うように、急いだほうがよさそうだな。今なら杏里も油断してる。さっさと済ませてずらかろう」
「そうね。そろそろ委員会の処理班も着く頃でしょうしね」
体育館の中は死体の山だ。
正体不明の怪物の死骸まである。
外来種の存在を世間から隠し通したい委員会は、容赦なくここを焼き払うだろう。
それこそ、骨も残らぬほど完璧に。
その前に、杏里だけは”救出”しなければならないのだ。
「しかし、まさかこんな悲惨な展開になろうとはな」
右手の手袋をはずしながら、百足丸がぼやいた。
「俺はまた、生徒や先公たちに犯されまくってラリッてる杏里を横取りすりゃそれで終わりだと思ってたんだが」
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ヤチカはサングラスをはずし、こめかみを伝う汗を拭った。
「でも、こうなってしまったからには、仕方ないじゃない。私たちはただ、与えられた任務をこなすだけ」
「まあな。それじゃ、最初の計画通り、杏里の注意を引きつけておいてくれ。俺が仕事しやすいように」
「わかった。ただ、ふみの様子が気になるわね。あの身体の中には、さっきのイキモノがまだ潜んでいる。あなたも十分気をつけて」
百足丸を残し、ヤチカは広大な1階フロアに足を踏み出した。
濃厚な血の匂いの立ち込めるなかを、杏里の背中めざして歩いていく。
あと数メートルまで近づいたところで、息を調え、思い切って声をかけた。
「杏里ちゃん、お久しぶり。やっと会えたわね」
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