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第9部 倒錯のイグニス
#347 破壊された美少女②
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「処理班が到着した。近隣の住民に見られてはまずいから、すぐにでも作業を始めたいそうだ」
死体のオブジェの間から、大山が姿を現した。
いつもの傲慢そうな表情はすっかり影をひそめ、頬が粉を吹いたように白くそそけだっている。
「校長先生、あんたも災難だったな。こんなのが世間に知られたら、あんた、間違いなくクビだろう?」
ぼさぼさ髪をかき上げて、百足丸がせせら笑う。
「イベントで学校中の人間を一気に浄化しようなんて手抜きを考えるからだよ」
「いや…計画自体は、悪くなかった。現に、このラストステージに入るまでは、うまくいってたんだ。あの化け物たちさえ現れなければ…。それに、今だからこそ白状するが、これは私が立てた計画ではない。もともと、君たち委員会の上層部から持ちかけられたものなのだ」
「委員会から?」
ヤチカの眼が細くなる。
校長の大山は、ヤチカと百足丸を、原種薔薇保存委員会のエージェントだと思い込んでいる。
ヤチカたちがそう仕向けたのだから、それはいい。
しかし、このシークレット・イベントの黒幕が委員会だというのは、どういうことなのだろう?
大山から委員会に持ちかけたのではなく、委員会が大山を使ってやらせた…?
まさかとは思う。
でも、ひょっとしたら、あの化け物たちの出現も委員会の計画のうちだとしたら?
ふみが化け物に身体を乗っ取られたのも?
いや、それはない。
後者は明らかに美里の仕業だ。
美里がルナの身体を中間宿主に使って、あのパラサイト生物を杏里に寄生させようと企んだのだ。
その目論見がふみのせいで狂ってしまった…大方そんなところなのだろう。
「まあ、今となってはどうでもいいさ。建物ごと燃やされないうちに、早く逃げようぜ」
「あ、待って」
舞台裏に引っ込もうとした百足丸の腕を、ヤチカは引き留めた。
「そういえば、あの子は? 璃子はどこへ行ったの?」
「璃子だと? ああ、あの銀髪の」
百足丸が露骨に面倒くさそうな顔をした。
「さっき泣き声が聞こえてたから、あのデブの近くにいるんじゃないのか? よくわからないが、あのふたり、なんか一心同体みたいにいつもくっついてたしな」
「ならば彼女はまだ生きてるはずよ。置いてはいけないわ」
百足丸のコートの袖を引っ張って、ヤチカは言った。
「冗談だろ?」
百足丸の長い顔が歪んだ。
「ヤチカ、おまえ、自分の立場を考えてみろ。”奴隷”のおまえが、井沢の右腕の俺にそんな口を利けるのか?」
「杏里ちゃん確保に関する全権は、私に委ねられてるわ。それに少なくとも、私はあなたの奴隷じゃない」
「奴隷…? 何の話かわからないが、向こうから来るのは、あれは璃子君ではないのかな?」
大山の指摘に、ふたりは振り向いた。
死体の山を迂回しながら、銀色の髪の少女が近づいてくる。
鈍く輝くその特徴的な髪の下で、昏い眼がぎらついている。
「あんたら、杏里もふみも見捨てるつもりだろう?」
3人を順繰りに睨み据えると、持ち前のハスキーな声で璃子が言った。
「し、仕方ないだろ? あんなありさまじゃ」
迫力に押され、百足丸がたじたじになる。
「あんなありさま?」
璃子の眼が憎々しげに光った。
「あんたの眼は節穴か? よく見て見ろよ。杏里はまだ死んじゃいない。それどころか…」
璃子の指摘に、ヤチカは故意に避けていたその方角に目をやった。
そして、あっと息を呑んだ。
「まさか…そんな…」
驚愕で声が裏返るのがわかった。
死体のオブジェの間から、大山が姿を現した。
いつもの傲慢そうな表情はすっかり影をひそめ、頬が粉を吹いたように白くそそけだっている。
「校長先生、あんたも災難だったな。こんなのが世間に知られたら、あんた、間違いなくクビだろう?」
ぼさぼさ髪をかき上げて、百足丸がせせら笑う。
「イベントで学校中の人間を一気に浄化しようなんて手抜きを考えるからだよ」
「いや…計画自体は、悪くなかった。現に、このラストステージに入るまでは、うまくいってたんだ。あの化け物たちさえ現れなければ…。それに、今だからこそ白状するが、これは私が立てた計画ではない。もともと、君たち委員会の上層部から持ちかけられたものなのだ」
「委員会から?」
ヤチカの眼が細くなる。
校長の大山は、ヤチカと百足丸を、原種薔薇保存委員会のエージェントだと思い込んでいる。
ヤチカたちがそう仕向けたのだから、それはいい。
しかし、このシークレット・イベントの黒幕が委員会だというのは、どういうことなのだろう?
大山から委員会に持ちかけたのではなく、委員会が大山を使ってやらせた…?
まさかとは思う。
でも、ひょっとしたら、あの化け物たちの出現も委員会の計画のうちだとしたら?
ふみが化け物に身体を乗っ取られたのも?
いや、それはない。
後者は明らかに美里の仕業だ。
美里がルナの身体を中間宿主に使って、あのパラサイト生物を杏里に寄生させようと企んだのだ。
その目論見がふみのせいで狂ってしまった…大方そんなところなのだろう。
「まあ、今となってはどうでもいいさ。建物ごと燃やされないうちに、早く逃げようぜ」
「あ、待って」
舞台裏に引っ込もうとした百足丸の腕を、ヤチカは引き留めた。
「そういえば、あの子は? 璃子はどこへ行ったの?」
「璃子だと? ああ、あの銀髪の」
百足丸が露骨に面倒くさそうな顔をした。
「さっき泣き声が聞こえてたから、あのデブの近くにいるんじゃないのか? よくわからないが、あのふたり、なんか一心同体みたいにいつもくっついてたしな」
「ならば彼女はまだ生きてるはずよ。置いてはいけないわ」
百足丸のコートの袖を引っ張って、ヤチカは言った。
「冗談だろ?」
百足丸の長い顔が歪んだ。
「ヤチカ、おまえ、自分の立場を考えてみろ。”奴隷”のおまえが、井沢の右腕の俺にそんな口を利けるのか?」
「杏里ちゃん確保に関する全権は、私に委ねられてるわ。それに少なくとも、私はあなたの奴隷じゃない」
「奴隷…? 何の話かわからないが、向こうから来るのは、あれは璃子君ではないのかな?」
大山の指摘に、ふたりは振り向いた。
死体の山を迂回しながら、銀色の髪の少女が近づいてくる。
鈍く輝くその特徴的な髪の下で、昏い眼がぎらついている。
「あんたら、杏里もふみも見捨てるつもりだろう?」
3人を順繰りに睨み据えると、持ち前のハスキーな声で璃子が言った。
「し、仕方ないだろ? あんなありさまじゃ」
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「あんなありさま?」
璃子の眼が憎々しげに光った。
「あんたの眼は節穴か? よく見て見ろよ。杏里はまだ死んじゃいない。それどころか…」
璃子の指摘に、ヤチカは故意に避けていたその方角に目をやった。
そして、あっと息を呑んだ。
「まさか…そんな…」
驚愕で声が裏返るのがわかった。
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