激甚のタナトス ~世界でおまえが生きる意味について~【激闘編】

戸影絵麻

文字の大きさ
347 / 463
第9部 倒錯のイグニス

#347 破壊された美少女②

しおりを挟む
「処理班が到着した。近隣の住民に見られてはまずいから、すぐにでも作業を始めたいそうだ」
 死体のオブジェの間から、大山が姿を現した。
 いつもの傲慢そうな表情はすっかり影をひそめ、頬が粉を吹いたように白くそそけだっている。
「校長先生、あんたも災難だったな。こんなのが世間に知られたら、あんた、間違いなくクビだろう?」
 ぼさぼさ髪をかき上げて、百足丸がせせら笑う。
「イベントで学校中の人間を一気に浄化しようなんて手抜きを考えるからだよ」
「いや…計画自体は、悪くなかった。現に、このラストステージに入るまでは、うまくいってたんだ。あの化け物たちさえ現れなければ…。それに、今だからこそ白状するが、これは私が立てた計画ではない。もともと、君たち委員会の上層部から持ちかけられたものなのだ」
「委員会から?」
 ヤチカの眼が細くなる。
 校長の大山は、ヤチカと百足丸を、原種薔薇保存委員会のエージェントだと思い込んでいる。
 ヤチカたちがそう仕向けたのだから、それはいい。
 しかし、このシークレット・イベントの黒幕が委員会だというのは、どういうことなのだろう?
 大山から委員会に持ちかけたのではなく、委員会が大山を使ってやらせた…?
 まさかとは思う。
 でも、ひょっとしたら、あの化け物たちの出現も委員会の計画のうちだとしたら?
 ふみが化け物に身体を乗っ取られたのも?
 いや、それはない。
 後者は明らかに美里の仕業だ。
 美里がルナの身体を中間宿主に使って、あのパラサイト生物を杏里に寄生させようと企んだのだ。
 その目論見がふみのせいで狂ってしまった…大方そんなところなのだろう。
「まあ、今となってはどうでもいいさ。建物ごと燃やされないうちに、早く逃げようぜ」
「あ、待って」
 舞台裏に引っ込もうとした百足丸の腕を、ヤチカは引き留めた。
「そういえば、あの子は? 璃子はどこへ行ったの?」
「璃子だと? ああ、あの銀髪の」
 百足丸が露骨に面倒くさそうな顔をした。
「さっき泣き声が聞こえてたから、あのデブの近くにいるんじゃないのか? よくわからないが、あのふたり、なんか一心同体みたいにいつもくっついてたしな」
「ならば彼女はまだ生きてるはずよ。置いてはいけないわ」
 百足丸のコートの袖を引っ張って、ヤチカは言った。
「冗談だろ?」
 百足丸の長い顔が歪んだ。
「ヤチカ、おまえ、自分の立場を考えてみろ。”奴隷”のおまえが、井沢の右腕の俺にそんな口を利けるのか?」
「杏里ちゃん確保に関する全権は、私に委ねられてるわ。それに少なくとも、私はあなたの奴隷じゃない」
「奴隷…? 何の話かわからないが、向こうから来るのは、あれは璃子君ではないのかな?」
 大山の指摘に、ふたりは振り向いた。
 死体の山を迂回しながら、銀色の髪の少女が近づいてくる。
 鈍く輝くその特徴的な髪の下で、昏い眼がぎらついている。
「あんたら、杏里もふみも見捨てるつもりだろう?」
 3人を順繰りに睨み据えると、持ち前のハスキーな声で璃子が言った。
「し、仕方ないだろ? あんなありさまじゃ」
 迫力に押され、百足丸がたじたじになる。
「あんなありさま?」
 璃子の眼が憎々しげに光った。
「あんたの眼は節穴か? よく見て見ろよ。杏里はまだ死んじゃいない。それどころか…」
 璃子の指摘に、ヤチカは故意に避けていたその方角に目をやった。
 そして、あっと息を呑んだ。
「まさか…そんな…」
 驚愕で声が裏返るのがわかった。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

女子切腹同好会

しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。 はたして、彼女の行き着く先は・・・。 この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。 また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。 マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。 世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

処理中です...