137 / 625
第137話 青ネギの恐怖
しおりを挟む
「昔から苦手でさ、青ネギって。どこがうまいのかわからない」
煙草をふかしながら、俺は言った。
休日の喫茶店。
対面には久しぶりに会った友人のKがいる。
「ネギトロもそうだし、イクラ丼なんか、よく、刻んだ青ネギをご飯の上に敷き詰めてあるじゃないか。あれって、みんな、本当に平気なのかって思う」
どんな流れからそんな話題になったのか、忘れてしまったが、とにかく俺は青ネギについて熱弁をふるっていた。
ガキの頃からどうもなじめない青ネギのあの味、あの匂い。
「でも、けっこう世間の人たちは、好きみたいなんだよな、青ネギ。ほら、漫画やドラマでよく見るだろ? 主婦が買い物かごから長い青ネギ突き出して歩いてるシーン。あれ、気がついてみると、現実でもよく見かけるんだよ。一般大衆って、そんなに青ネギが好きなんだろうか、って思うぐらい。あんな長いネギ買って帰って、ほんとに全部料理に使うのかよって」
現に今、俺らの席の近くにも、買い物帰りらしき主婦たちのグループがいる。
もちろん、全員、マイバッグから50センチはありそうな青ネギを突き出して、だ。
俺がそこまで言った時、
「シーッ! 声がでかいよ」
突然、Kが立てた人差し指を口に当てた。
見ると、真っ青な顔であたりの様子をうかがっている。
「なんだ、どうした?」
不思議に思って訊くと、
「その青ネギなんだけど」
テーブルに身を乗り出し、声を潜めるK。
「最近、気づいたことがあるんだ」
「気づいたこと?」
「うん。これ、機密事項だから、誰にも言うなよ」
「あ、ああ」
機密事項? なんだそれ?
俺はあっけにとられた。
Kと会うのは高校以来だ。
久しぶりに会わないかと電話がかかってきたのが今朝のこと。
話したいことがある、そう言ってー。
「青ネギってさ、正体はネギ星人なんだ」
「はあ?」
「侵略者だよ。食材に化けて人類の中に紛れ込み、世の中の主婦たちを操ってるんだ。あの青ネギに擬したアンテナで」
「んな馬鹿な」
俺は吹き出した。
青ネギが宇宙人?
これって、新手の宗教の勧誘か?
「笑いごとじゃない。目が合ったんだ。それで気づいた。やつらは…」
Kが必至で言い募った、その時だった。
俺はふと、刺すような視線を感じ、振り返った。
近くのテーブルに陣取った主婦たちが、楽しげに会話にいそしんでいる。
全員、マイバックから青ネギを飛び出させて。
あることに気づき、俺はうめいた。
「マジか」
顔から血の気が引くのが分かった。
青ネギにはみな一対の眼があり、俺たちのほうをそろってじっと睨みつけていたのだ。
煙草をふかしながら、俺は言った。
休日の喫茶店。
対面には久しぶりに会った友人のKがいる。
「ネギトロもそうだし、イクラ丼なんか、よく、刻んだ青ネギをご飯の上に敷き詰めてあるじゃないか。あれって、みんな、本当に平気なのかって思う」
どんな流れからそんな話題になったのか、忘れてしまったが、とにかく俺は青ネギについて熱弁をふるっていた。
ガキの頃からどうもなじめない青ネギのあの味、あの匂い。
「でも、けっこう世間の人たちは、好きみたいなんだよな、青ネギ。ほら、漫画やドラマでよく見るだろ? 主婦が買い物かごから長い青ネギ突き出して歩いてるシーン。あれ、気がついてみると、現実でもよく見かけるんだよ。一般大衆って、そんなに青ネギが好きなんだろうか、って思うぐらい。あんな長いネギ買って帰って、ほんとに全部料理に使うのかよって」
現に今、俺らの席の近くにも、買い物帰りらしき主婦たちのグループがいる。
もちろん、全員、マイバッグから50センチはありそうな青ネギを突き出して、だ。
俺がそこまで言った時、
「シーッ! 声がでかいよ」
突然、Kが立てた人差し指を口に当てた。
見ると、真っ青な顔であたりの様子をうかがっている。
「なんだ、どうした?」
不思議に思って訊くと、
「その青ネギなんだけど」
テーブルに身を乗り出し、声を潜めるK。
「最近、気づいたことがあるんだ」
「気づいたこと?」
「うん。これ、機密事項だから、誰にも言うなよ」
「あ、ああ」
機密事項? なんだそれ?
俺はあっけにとられた。
Kと会うのは高校以来だ。
久しぶりに会わないかと電話がかかってきたのが今朝のこと。
話したいことがある、そう言ってー。
「青ネギってさ、正体はネギ星人なんだ」
「はあ?」
「侵略者だよ。食材に化けて人類の中に紛れ込み、世の中の主婦たちを操ってるんだ。あの青ネギに擬したアンテナで」
「んな馬鹿な」
俺は吹き出した。
青ネギが宇宙人?
これって、新手の宗教の勧誘か?
「笑いごとじゃない。目が合ったんだ。それで気づいた。やつらは…」
Kが必至で言い募った、その時だった。
俺はふと、刺すような視線を感じ、振り返った。
近くのテーブルに陣取った主婦たちが、楽しげに会話にいそしんでいる。
全員、マイバックから青ネギを飛び出させて。
あることに気づき、俺はうめいた。
「マジか」
顔から血の気が引くのが分かった。
青ネギにはみな一対の眼があり、俺たちのほうをそろってじっと睨みつけていたのだ。
0
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
10秒で読めるちょっと怖い話。
絢郷水沙
ホラー
ほんのりと不条理な『ギャグ』が香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)
女子切腹同好会
しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。
はたして、彼女の行き着く先は・・・。
この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。
また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。
マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。
世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる