超短くても怖い話【ホラーショートショート集】

戸影絵麻

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第193話 双子霊

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 帰省するのは1年ぶりだった。
 大学生活一年目はとにかく都会暮らしが楽しくて、辺鄙な田舎には帰る気にならなかったからである。
 祖母は私が物心つく前に、父は小学生の頃死んでいて、実家には母と姉、そして祖母が住んでいた。
 4つ上の姉は一度嫁いで家を出ていたのだが、数年前になぜか実家に戻ってきていた。
 まだ離婚までは至っていないが、嫁ぎ先と折り合いが悪く、別居状態なのだという。
 電車とバスを乗り継いで都心から5時間。
 お盆に入ったばかりというのに村には人影もなく、過疎化が更に進んでいることをうかがわせた。
 最後のバスは私一人の貸し切りで、むろんバス停で降りたのも私だけだった。
 埃っぽい道をとぼとぼと歩く。
 実家は広い敷地に立つ二階家で、家族3人で住むには明らかに広すぎた。
 古びた門をくぐると左手が庭で、今どき珍しい割烹着を着た姉が隅っこのほうにかがみこんでいた。
 姉の前には土饅頭みたいなものがふたつあり、花が供えられている。
 ペットの墓だろうか。
 でも、実家で犬や猫を飼っていたという記憶はなかった。
「あ、みのり、帰ってきたのね」
 見ていると、私に気づいて姉が腰を上げ、懐かしげに微笑んだ。
 まだ三十路前なのに姉はずいぶんと生気のない顔をしていて、それが少し気になった。

 最初に異変が起こったのは、2階に上がり、仏壇のある部屋で父と祖父に挨拶しようとした時である。
 誰もいないはずの廊下のほうから、子供の笑い声が聴こえてきたのだ。
 クスクス笑いに続き襖の開く気配がして何事かと振り返ると、キャッいう叫びを残して、パタパタと足音が遠ざかっていった。
 不思議に思って夕食の時、訊いてみた。
「姉ちゃん、子供いたの? 全然知らんかった」
「何言ってんの、みのり」
 怒ったように答えたのは母だった。
「いるわけないでしょ、そんなもん」
 ボケ始めた祖母はもぐもぐと口を動かしているだけ。
 その横で、姉はなぜか血の気の失せた顔をしてじっとうつむいていた。
 二度目は夜中。
 私はここに住んでいた時に使っていた二階の隅の小部屋に布団を敷いて寝ていた。
 妙に寝苦しい気がして薄目を開けると、今度はびっくりするほど近くで、あの笑い声がした。
 そちらのほうを向こうにも、金縛りに遭ったように、身体が動かない。
 パタパタという軽い足音が、私の布団の周りをぐるぐる駆け回る。
 目に見えない子供は、どうやらふたりいるようだった。
 私は子供たちの笑い声と足音を聞きながら、まんじりともせず夜明けを迎えた…。

 翌朝、眠い目をこすりながら庭に降りて、あの土饅頭のところに行ってみた。
 落ちていた枝をスコップ代わりに土を掘り返してみると、灰褐色の丸いものがふたつ出てきた。
 ソフトボールくらいの大きさのそれは、どうやら人間の子供の頭蓋骨のようだった。
「それは義理の父に孕まされた子供たち。だから産んで育てるわけにはいかなかったのよ」
 うしろから声がした。
 消え入りそうなそれは、苦渋に満ちた姉の声だった。
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