超短くても怖い話【ホラーショートショート集】

戸影絵麻

文字の大きさ
344 / 625

第320話 真夏の災厄(後編)

しおりを挟む
「君、誰?」
「誰でもいいでしょ」
 返事はそっけなかった。
 取り付く島もない、とはこのことだ。
 俺は少女が右目に眼帯をしていることに気づいた。
 今まで前髪に隠れていたのだ。
 肩までの髪縁どられた、アーモンド形の顔。
 黒い眼帯のせいでひどくシャープに見える。
「いったい何が起こってるんだ?」
 校庭のほうから聴こえてくる喧騒に耳をそばだて、俺はたずねた。
「君が誰であるにせよ、知ってるなら教えてくれよ」 
「あなたも見たでしょ」
 少女が無事なほうの目で俺を見つめてきた。
 感情のない、深い湖のような瞳に、俺の怯えた顔が映っている。
「あのミミズみたいなやつのことか? みんなの、耳や、鼻の穴から生えてきていた…」
「おそらく、寄生生物だと思う。一部の人にネットで騒がれてたけど、数日前、裏の里山に光る物体が落下した。ちょうど、この街の水源である、貯水池のあたり。あとは、言わなくてもわかるよね?」
「宇宙生物…? マジかよ…」
 半そでシャツから出た上腕部にぞくっと鳥肌が立った。
 隕石に付着していた地球外の生命体が、街の飲み水に混入し、町民の体内に寄生したというのか?
 俺は急いでカバンからスマホを出し、SNSに目を通した。
 少女の言う通りだった。
 謎の物体の落下の記事は4日ほど前から始まっている。
 そして、最近は、こんな内容のポストが増えてきていた。
 ー家族や友人が、別人みたいに思えるときがあるんだけどー
 ーそうそう、あたしも! なんか、彼、性格が変わっちゃったっていうかー
 ーうちのパパもそうだよ。なんだか、こう、ロボットみたいに無機質って感じでー
「ヤバいな」 
 無意識のうちにつぶやいていた。
 パラサイト生物による侵略は、着々と進行しているようだ。
 これじゃまるで、昔見たSF映画そのものじゃないか。
「隠れるの隠れないの、どっち?」
 茫然とスマホの画面を見つめる俺に、少女が言った。
「あなたが捕まりたいならそうしてればいい。あのミミズに身体を乗っ取られて、やつらの仲間になりたいならね」
「い、いや、それは…」
 もしそうなったら、どうなるのだろう?
 寄生生物たちのネットワークに組み込まれて、集合的無意識の一部として吸収されてしまうのだろうか。
 そこには孤独も意見の相違も何もない、そんな穏やかな精神の海に…。
 俺は焼却炉の中を覗き込んだ。
 鋼鉄の窯の内部は、業務用の燃えるゴミの袋でいっぱいだ。
「やっぱ、入るよ。俺、人間でいるの、やめたくないから」
「そうだね。じゃ、お先にどうぞ」
「わかった」
 匂いを我慢して、ゴミ袋の間に潜り込む。
 聴こえてくる喧騒はかなり大きくなっている。
 やつらが近づいている証拠だった。
「見つかるとまずいから、いっぺん閉めるよ」
「うん」
 少女がフタを閉め、中が真っ暗になった。
 と、ほとんど同時に、ざわめきが周りを取り囲むのがわかった。
「この辺で、男子生徒を見なかったか?」
 先生の声。
 少女に訊いている。
 なんで彼女は無事なのだ?
 疑問に思った瞬間、少女が答えた。
「不適合者なら、この中に捕らえてありますよ。あとは、点火すればおしまいです」
「そうか。よくやった」
 不適合者?
 な、なんだそれ?
 ま、待てよ!
 ゴミ袋に埋もれてもがいた時だった。
 カチッと音がして、突然、周囲が紅蓮の炎に包まれた。
 

しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

10秒で読めるちょっと怖い話。

絢郷水沙
ホラー
 ほんのりと不条理な『ギャグ』が香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

女子切腹同好会

しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。 はたして、彼女の行き着く先は・・・。 この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。 また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。 マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。 世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

処理中です...