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#383話 施餓鬼会㊻
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矢崎巌夫の病室を出ると、私はその足で大学の研究室に向かった。
餓鬼病の中間宿主である新種の淡水巻貝の発見で、助手ながら学内での私の地位はかなり向上している。
こうして廊下を歩いていても、教授や助教授たちが向こうから声をかけてくるほどだ。
少し前までは私のことなど小間使いか清掃係のアルバイトくらいにしか思っていなかったくせに、ずいぶんな変わりようである。
そんな意味で、あの巻貝と餓鬼病をつなぐヒントをくれた矢崎巌夫には感謝している。
そのうちにあの貝にミヤイリガイならぬノザワナガイなる和名でもつくかと思うと胸が高鳴らないこともない。
胸が高鳴るといえばもうひとつ。
今朝見た巌夫の”症状”だ。
巌夫は一見したところ何の魅力もない中年男である。
歳は50前後、顔は平凡で、肌はたるみ、頭は頭頂が薄くなっている。
しかも小太りの身体は下腹だけがぷっくり膨らんでいて、それこそ餓鬼のようだ。
だが、一か所だけ、常人離れした箇所がある。
それが下半身、はっきり言うと、男性器の逞しさだった。
あの夜もそう。
アレに寄生された亜季という名の少女に全裸にむかれ、”地獄のキス”で文字通り命を吸い取られている間ー。
巌夫の男根はまるで独立した生物ででもあるかのように、獰猛なほど雄々しく股間から聳え立っていたのである。
今朝もシーツをあり得ないほど高く持ち上げていたように…。
巌夫が目覚める前、見舞いに行くたびに私は彼の病衣をはだけ、それを確かめていた。
時には扱いて中味を出してやることもあった。
ある日好奇心から手に付着した液を口に含むと濃厚なミルクの味がして、一度で病みつきになった。
その意味では、今朝の巌夫の覚醒は残念な出来事であるといえなくもない。
こうなると、エキスをもう勝手に採取することができないからだ。
あの歳で、彼は独身である。
彼には悪いが、あの冴えない風体ではそれも無理ないと思う。
マッチングアプリで性悪な女にひっかかって金を吸い上げられるのがオチ。
そんなタイプの男なのだ。
私にしたって、矢崎巌夫自身には何の興味もない。
が、あの下半身だけは別だった。
恋とか愛とかそんなくだらぬものではなく、単に味の嗜好から私は彼に強烈に引かれ始めていたのだ。
それにもう一つ。
もっと重大な関心事はこれだ。
研究室に入り、ドアに内鍵をかけると、私は部屋の奥の水槽に向き直った。
たっぷり水を張り、浄化装置を働かせたその中を優雅に泳ぐのは、長さ30センチほどの線形の生き物である。
ガラスに顔を近づけてよく見ると、発見当時は裂断していた片方の断面は完全に修復されているようだ。
まったく、呆れ果てた生命力である。
むろん、そのくらいでないと、1000年以上の歳月を休眠状態で生き続けることなどできないのだが…。
あの巻貝の発見に続き、私にはもう一つ、仮説があった。
空洞になった蛇舌観音の舌の部分。
その中に封印されていたものこそ、この蛭と蛇のキメラのような生物なのではなかったかー。
餓鬼病の中間宿主である新種の淡水巻貝の発見で、助手ながら学内での私の地位はかなり向上している。
こうして廊下を歩いていても、教授や助教授たちが向こうから声をかけてくるほどだ。
少し前までは私のことなど小間使いか清掃係のアルバイトくらいにしか思っていなかったくせに、ずいぶんな変わりようである。
そんな意味で、あの巻貝と餓鬼病をつなぐヒントをくれた矢崎巌夫には感謝している。
そのうちにあの貝にミヤイリガイならぬノザワナガイなる和名でもつくかと思うと胸が高鳴らないこともない。
胸が高鳴るといえばもうひとつ。
今朝見た巌夫の”症状”だ。
巌夫は一見したところ何の魅力もない中年男である。
歳は50前後、顔は平凡で、肌はたるみ、頭は頭頂が薄くなっている。
しかも小太りの身体は下腹だけがぷっくり膨らんでいて、それこそ餓鬼のようだ。
だが、一か所だけ、常人離れした箇所がある。
それが下半身、はっきり言うと、男性器の逞しさだった。
あの夜もそう。
アレに寄生された亜季という名の少女に全裸にむかれ、”地獄のキス”で文字通り命を吸い取られている間ー。
巌夫の男根はまるで独立した生物ででもあるかのように、獰猛なほど雄々しく股間から聳え立っていたのである。
今朝もシーツをあり得ないほど高く持ち上げていたように…。
巌夫が目覚める前、見舞いに行くたびに私は彼の病衣をはだけ、それを確かめていた。
時には扱いて中味を出してやることもあった。
ある日好奇心から手に付着した液を口に含むと濃厚なミルクの味がして、一度で病みつきになった。
その意味では、今朝の巌夫の覚醒は残念な出来事であるといえなくもない。
こうなると、エキスをもう勝手に採取することができないからだ。
あの歳で、彼は独身である。
彼には悪いが、あの冴えない風体ではそれも無理ないと思う。
マッチングアプリで性悪な女にひっかかって金を吸い上げられるのがオチ。
そんなタイプの男なのだ。
私にしたって、矢崎巌夫自身には何の興味もない。
が、あの下半身だけは別だった。
恋とか愛とかそんなくだらぬものではなく、単に味の嗜好から私は彼に強烈に引かれ始めていたのだ。
それにもう一つ。
もっと重大な関心事はこれだ。
研究室に入り、ドアに内鍵をかけると、私は部屋の奥の水槽に向き直った。
たっぷり水を張り、浄化装置を働かせたその中を優雅に泳ぐのは、長さ30センチほどの線形の生き物である。
ガラスに顔を近づけてよく見ると、発見当時は裂断していた片方の断面は完全に修復されているようだ。
まったく、呆れ果てた生命力である。
むろん、そのくらいでないと、1000年以上の歳月を休眠状態で生き続けることなどできないのだが…。
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空洞になった蛇舌観音の舌の部分。
その中に封印されていたものこそ、この蛭と蛇のキメラのような生物なのではなかったかー。
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