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#384話 施餓鬼会㊼
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そして、もうひとつ。
水槽の中を我が物顔に遊泳するひも状の生物を眺めながら、考える。
気になるのは、これに寄生された時の影響だ。
あの時ー。
濁流が流れ込み、沼と化した和室の中。
間断なく閃く稲光に照らし出されたあの少女。
紺色のスクール水着に身を包んだその姿は、とても10代半ばの子供のものには見えなかった。
妖艶というか、淫らというか…。
私たちの前に現れた彼女は、そんな爛熟し切った発情期の”牝”のオーラを色濃くまとっていたのだ。
ところが、である。
舌を引きちぎられ、気を失った彼女は、違っていた。
何かそれまで憑依していたものが抜けてしまったかのように、ごく普通の華奢な少女に戻っていたのである。
未知の巻貝に潜むイリジウムに寄生された人間が餓鬼に変貌するのなら、この舌に寄生された人間は、ひょっとするとインキュバスかサキュバスのような、いわゆる淫魔のような存在に変身してしまうのではないか…。
そして、淫魔に変身した者は、濃厚な性的フェロモンをまき散らすことで獲物をおびき寄せ、ディ―プキスという形で相手の精力を吸収するー。
それを言えば、巌夫の勃起がいつまでも収まらないのは、その影響が体内に残っているからかもしれない…。
水槽の表面には、私の顔が映っている。
そばかすだらけの、およそ27歳という年齢には不似合いな、子供じみた顔である。
身体つきは、もっとひどい。
胸にも尻にもメリハリがなく、あちこち骨ばっていて、どう見ても第二次性徴期以前の貧弱さなのだ。
だから、当然のことながら、これまで恋愛というものとは無縁で生きてきた。
とっくの昔に高望みはやめている。
その証拠に、今回の件で知り合った巌夫にも色々試してみたが、あんなチンケで冴えない中年男にすら、まったく相手にされなかった。
変態ロリコンクズ野郎になら需要があるのかもしれないが、どうやら私の外観はノーマルな男性の気を引くには色々足りなさすぎるようなのだ。
表向きは声高にルッキズムを批判するふりをして、所詮、世の中などこんなものである。
人間、外見じゃなく、中身が大事。
などという綺麗ごとは、恵まれたやつらのマウント取りの一種に過ぎないのだ。
でも、と思う。
私には、今、”これ”がある。
これさえあれば、もしかして私も、第二の亜季になれるかもしれないのだ。
問題は、この生物をどう体内に取り込むかだけど、それにも一つ、考えがあった。
人差し指の先をカッターナイフで切り、滲んだ血を水槽に落とす。
ぐにゅっ。
それまでただ悠然と泳いでいた”舌”が一瞬身をくねらせたかと思うと、すごい勢いで血の滴に飛び掛かる。
やっぱり。
持参の携帯用水槽に”それ”を移すと、私は研究室のドアを閉めた。
さっそく今夜、試してみよう。
時期的にもちょうどいい。
水槽の中を我が物顔に遊泳するひも状の生物を眺めながら、考える。
気になるのは、これに寄生された時の影響だ。
あの時ー。
濁流が流れ込み、沼と化した和室の中。
間断なく閃く稲光に照らし出されたあの少女。
紺色のスクール水着に身を包んだその姿は、とても10代半ばの子供のものには見えなかった。
妖艶というか、淫らというか…。
私たちの前に現れた彼女は、そんな爛熟し切った発情期の”牝”のオーラを色濃くまとっていたのだ。
ところが、である。
舌を引きちぎられ、気を失った彼女は、違っていた。
何かそれまで憑依していたものが抜けてしまったかのように、ごく普通の華奢な少女に戻っていたのである。
未知の巻貝に潜むイリジウムに寄生された人間が餓鬼に変貌するのなら、この舌に寄生された人間は、ひょっとするとインキュバスかサキュバスのような、いわゆる淫魔のような存在に変身してしまうのではないか…。
そして、淫魔に変身した者は、濃厚な性的フェロモンをまき散らすことで獲物をおびき寄せ、ディ―プキスという形で相手の精力を吸収するー。
それを言えば、巌夫の勃起がいつまでも収まらないのは、その影響が体内に残っているからかもしれない…。
水槽の表面には、私の顔が映っている。
そばかすだらけの、およそ27歳という年齢には不似合いな、子供じみた顔である。
身体つきは、もっとひどい。
胸にも尻にもメリハリがなく、あちこち骨ばっていて、どう見ても第二次性徴期以前の貧弱さなのだ。
だから、当然のことながら、これまで恋愛というものとは無縁で生きてきた。
とっくの昔に高望みはやめている。
その証拠に、今回の件で知り合った巌夫にも色々試してみたが、あんなチンケで冴えない中年男にすら、まったく相手にされなかった。
変態ロリコンクズ野郎になら需要があるのかもしれないが、どうやら私の外観はノーマルな男性の気を引くには色々足りなさすぎるようなのだ。
表向きは声高にルッキズムを批判するふりをして、所詮、世の中などこんなものである。
人間、外見じゃなく、中身が大事。
などという綺麗ごとは、恵まれたやつらのマウント取りの一種に過ぎないのだ。
でも、と思う。
私には、今、”これ”がある。
これさえあれば、もしかして私も、第二の亜季になれるかもしれないのだ。
問題は、この生物をどう体内に取り込むかだけど、それにも一つ、考えがあった。
人差し指の先をカッターナイフで切り、滲んだ血を水槽に落とす。
ぐにゅっ。
それまでただ悠然と泳いでいた”舌”が一瞬身をくねらせたかと思うと、すごい勢いで血の滴に飛び掛かる。
やっぱり。
持参の携帯用水槽に”それ”を移すと、私は研究室のドアを閉めた。
さっそく今夜、試してみよう。
時期的にもちょうどいい。
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