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#403話 旧トンネルの怪⑧
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異変が起こったのは、零がそう言い終わるか、終わらないかのうちだった。
ゴゴゴゴゴ…。
突如として、激しく大地が震動し始めたのである。
「な、なんだ? 地震か?」
よろめきながら、ニラさんがわめく。
「ど、どうやら、そうではないようです」
辛うじて体のバランスを取りつつ、私は答えた。
目の前で、信じ難い現象が起ころうとしていた。
ぬうううっ。
まるで巨大な芋虫が脱皮するかのように、トンネルの中から、もうひとつのトンネルが身をくねらせて現れたのだ。
「なあに、あれ…?」
茫然とつぶやく私に、
「ノヅチだ」
低い声で零が言った。
「あの化け物が、トンネルに擬態して、夜な夜な獲物を喰ってたんだよ」
「そ、そんな、馬鹿な…」
ぐわああああっ。
トンネルから顔を出したそれは、その大きさを度外視すれば、環形動物の特徴を備えていた。
大きく開いたまん丸の口。
体節のある円筒形の胴体。
その表面には、貧弱な足のようなものが無数に生えていて、風にそよぐみたいにわらわらと蠢いている。
零の全身からは、何か黒い波動のようなものが噴き出して、周囲を陽炎のように歪めている。
そのオーラが化け物を挑発するのか、そのノヅチとやらは、明らかに零に対して怒っているように見えた。
「零! 危ないよ! あとは自衛隊にでも任せよう!」
私が叫んだ、その瞬間だった。
ノヅチがやにわに頭部を下げ、細かい歯のびっしり並ぶ丸い口を開けたまま凄い勢いで零に襲いかかった。
わっ!
やられる!
目を覆いかけたその刹那、左方向に素早く飛びのきながら、零が胸の前で両腕を交差させるのが見えた。
ぎゃああああああっ!
咆哮を上げ、のけぞるノヅチ。
見ると、口の両側、どうやら目に当たる器官らしい小さなくぼみに、それぞれ苦無が突き立っている。
ずずずずずずず・・・。
トンネルから全身を現した怪物は、視力を奪われて完全に戦意を喪失したらしく、ぶるぶる震えながら、私たちがついさっき登ってきたばかりの谷側の斜面を下っていく。
そうして斜面の中腹に辿り着くと、盛大に土砂を噴き上げつつ、新たな穴を掘って地中へ消えていってしまった。
「なんだったんだ、あれは?」
何事もなかったように戻ってきた零に向かって、顔面蒼白のニラさんがたずねた。
「最近、この地方で地震が続いていたから、それで目覚めて出てきたんだろうな」
「だから、何が、だよ?」
「物わかりの悪いオッサンだな。さっきから、ノヅチだって言ってるだろ」
「まさか、トンネルのほうが動いて車を食べにきた、だなんて…」
私は化け物の消えた斜面の穴を見下ろして、深いため息をついた。
「世の中、いろいろ、ありすぎる…」
ゴゴゴゴゴ…。
突如として、激しく大地が震動し始めたのである。
「な、なんだ? 地震か?」
よろめきながら、ニラさんがわめく。
「ど、どうやら、そうではないようです」
辛うじて体のバランスを取りつつ、私は答えた。
目の前で、信じ難い現象が起ころうとしていた。
ぬうううっ。
まるで巨大な芋虫が脱皮するかのように、トンネルの中から、もうひとつのトンネルが身をくねらせて現れたのだ。
「なあに、あれ…?」
茫然とつぶやく私に、
「ノヅチだ」
低い声で零が言った。
「あの化け物が、トンネルに擬態して、夜な夜な獲物を喰ってたんだよ」
「そ、そんな、馬鹿な…」
ぐわああああっ。
トンネルから顔を出したそれは、その大きさを度外視すれば、環形動物の特徴を備えていた。
大きく開いたまん丸の口。
体節のある円筒形の胴体。
その表面には、貧弱な足のようなものが無数に生えていて、風にそよぐみたいにわらわらと蠢いている。
零の全身からは、何か黒い波動のようなものが噴き出して、周囲を陽炎のように歪めている。
そのオーラが化け物を挑発するのか、そのノヅチとやらは、明らかに零に対して怒っているように見えた。
「零! 危ないよ! あとは自衛隊にでも任せよう!」
私が叫んだ、その瞬間だった。
ノヅチがやにわに頭部を下げ、細かい歯のびっしり並ぶ丸い口を開けたまま凄い勢いで零に襲いかかった。
わっ!
やられる!
目を覆いかけたその刹那、左方向に素早く飛びのきながら、零が胸の前で両腕を交差させるのが見えた。
ぎゃああああああっ!
咆哮を上げ、のけぞるノヅチ。
見ると、口の両側、どうやら目に当たる器官らしい小さなくぼみに、それぞれ苦無が突き立っている。
ずずずずずずず・・・。
トンネルから全身を現した怪物は、視力を奪われて完全に戦意を喪失したらしく、ぶるぶる震えながら、私たちがついさっき登ってきたばかりの谷側の斜面を下っていく。
そうして斜面の中腹に辿り着くと、盛大に土砂を噴き上げつつ、新たな穴を掘って地中へ消えていってしまった。
「なんだったんだ、あれは?」
何事もなかったように戻ってきた零に向かって、顔面蒼白のニラさんがたずねた。
「最近、この地方で地震が続いていたから、それで目覚めて出てきたんだろうな」
「だから、何が、だよ?」
「物わかりの悪いオッサンだな。さっきから、ノヅチだって言ってるだろ」
「まさか、トンネルのほうが動いて車を食べにきた、だなんて…」
私は化け物の消えた斜面の穴を見下ろして、深いため息をついた。
「世の中、いろいろ、ありすぎる…」
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