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#402話 旧トンネルの怪⑦
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文字通り這い上がるようにして旧道にまろび出た私は、眼前に広がる光景をひと目見て、ポカンと口を開けた。
「なに・・・これ?」
道路の真ん中あたりが大きくえぐれ、その陥没が彼方に見える旧トンネルの入口まで延々と続いている。
新道側に居る時は、中央分離帯の隔壁が邪魔で見えなかったのだ。
更に不可解なのは、そのえぐれた跡の底に、点々と血痕やら車の破片らしきものやらが落ちていることだった。
零はその中を、何の躊躇もなく、正面に口を開いたトンネルに向かってまっすぐに歩いていく。
「何かでけえもんが通った跡みてえだな」
背後からニラさんの声が聴こえてきた。
老体に鞭打って斜面を登ってきたニラさんは、まさに息も絶え絶えの風情である。
「でけえもんって、被害者のミニバンですか? でも、そんなのあり得ませんよ。ただのミニバンが路肩の斜面に穴を掘って地下に潜り、新道の下を通って旧道側の斜面に出て、そこを登って今度は…」
「んなこたぁ、わかってるよ。そのためにあいつが居るんじゃねえか」
ニラさんが角ばった顎で指し示したのは、トンネルの前で仁王立ちになった零だ。
「零、何してるの?」
這う這うの体で駈け寄ると、
「そこでストップ」
フードの中から、零が鋭い声で言った。
「それ以上近づくと命の保証はないから」
「は? 零ったら、何言ってるの?」
そこまで口にして私は、零が戦闘機の翼みたい角度に開いた両手にぶっそうなものを握っていることに気づいてゾッとなった。
苦無である。
クナイとは、その昔、忍者などが使用したと言われる飛び道具だ。
色々な種類があるけど、零のは鋼鉄製で鋭い三角錐の形をしている。
彼女が苦無を出してるってことは、もしかして…。
「ちょ、ちょっと、このトンネルの中に、ひょっとして居るってこと? その、外道とか、妖怪とか、そういう…」
零は隠れ里のマヨイガから降りてきた外道ハンターだ。
この星に巣くう”宿痾”から生じる”淀み”、すなわち”外道”を狩るのがその主な仕事である。
外道とは”人ではないもの”、つまりは”人でなし”、まあ、妖怪や魔物の類いと思ってもらえればいい。
「なるほどなあ、このトンネル、もともと有名な心霊すスポットだったもんねえ。外道の一匹くらい住んでても、不思議はないってことか」
私がそう、納得の言葉を口にした時だった。
「来る」
低く零がつぶやいて、苦無を両手に握ったまま、腰を落として身構えた。
「なに・・・これ?」
道路の真ん中あたりが大きくえぐれ、その陥没が彼方に見える旧トンネルの入口まで延々と続いている。
新道側に居る時は、中央分離帯の隔壁が邪魔で見えなかったのだ。
更に不可解なのは、そのえぐれた跡の底に、点々と血痕やら車の破片らしきものやらが落ちていることだった。
零はその中を、何の躊躇もなく、正面に口を開いたトンネルに向かってまっすぐに歩いていく。
「何かでけえもんが通った跡みてえだな」
背後からニラさんの声が聴こえてきた。
老体に鞭打って斜面を登ってきたニラさんは、まさに息も絶え絶えの風情である。
「でけえもんって、被害者のミニバンですか? でも、そんなのあり得ませんよ。ただのミニバンが路肩の斜面に穴を掘って地下に潜り、新道の下を通って旧道側の斜面に出て、そこを登って今度は…」
「んなこたぁ、わかってるよ。そのためにあいつが居るんじゃねえか」
ニラさんが角ばった顎で指し示したのは、トンネルの前で仁王立ちになった零だ。
「零、何してるの?」
這う這うの体で駈け寄ると、
「そこでストップ」
フードの中から、零が鋭い声で言った。
「それ以上近づくと命の保証はないから」
「は? 零ったら、何言ってるの?」
そこまで口にして私は、零が戦闘機の翼みたい角度に開いた両手にぶっそうなものを握っていることに気づいてゾッとなった。
苦無である。
クナイとは、その昔、忍者などが使用したと言われる飛び道具だ。
色々な種類があるけど、零のは鋼鉄製で鋭い三角錐の形をしている。
彼女が苦無を出してるってことは、もしかして…。
「ちょ、ちょっと、このトンネルの中に、ひょっとして居るってこと? その、外道とか、妖怪とか、そういう…」
零は隠れ里のマヨイガから降りてきた外道ハンターだ。
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「なるほどなあ、このトンネル、もともと有名な心霊すスポットだったもんねえ。外道の一匹くらい住んでても、不思議はないってことか」
私がそう、納得の言葉を口にした時だった。
「来る」
低く零がつぶやいて、苦無を両手に握ったまま、腰を落として身構えた。
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