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#419話 探し物①
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俺はぼっちである。
だから、基本、昼の弁当は屋上で食う。
もちろん、連れなどいない。
なぜなら俺は、空気より存在感のない、完全無欠のぼっちだからだ。
その日の午後もそうだった。
俺はいつものようにクラスのやつらの冷たい視線を浴びながらそそくさと教室を出ると、弁当箱を抱えて屋上に向かった。
うちの高校の屋上の非常口の鍵はずっと壊れたままで、誰でも自由に出入りできるのだ。
給水塔の裏側に回り、階段に腰をかけていざ弁当箱を開いた時である。
ありえないものを目にして、俺はほぼ5秒ほど絶句した。
今朝俺が詰め込んできた白米の上に、梅干しの代わりに女の子の顔が乗っている。
いや、乗っているというより、弁当箱に女の子の顔がはまりこんでいるような感じである。
「ななな、なんだ?」
弁当箱を裏返してみても、当然そんなところに女の子の胴体など出ていない。
つまりは顔だけが、白米の上を占領しているというわけだ。
「な、なんなんだ? おまえは?」
やっとのことで声を絞り出すと、少女がぱっちりと目を開いた。
秀でた額に、睫毛の長いアーモンド形の大きな目。
控えめだが、形のいい鼻。
少し下のほうが厚い、官能的な唇。
よく見ると、ずいぶん可愛らしい顔立ちをしている。
「こんにちは」
俺を見つめると、鈴を振るような声で、少女が言った。
「はじめまして。私、2年3組の川本真由」
などと言われても、外界と完全没交渉の俺には心当たりなんてない。
同じ2年生でも、クラスが違えばそれこそ名前なんてわからない。
ましてや女子など尚のことだ。
「ど、どうして俺の弁当箱に…?」
まだ信じられない。
弁当箱の中に美少女の顏があり、俺に話しかけてくるなんて。
「びっくりさせてごめんなさい。あなた、5組の相田誠くんでしょ?」
ぱっちりした目で俺を見上げて少女が言った。
「そ、そうだけど…」
正直、気持ち悪かった。
できることなら、弁当箱を放り出して逃げ出したい。
でも、できなかった。
少女の顔つきが、あまりにも真剣そのものだったからである。
「あのね。ひとつ頼みたいことがあるの」
俺の顔をじっと覗き込むようにして、少女が続けた。
「た、頼みたいこと?」
「うん。不躾で、変なお願いだってことは、重々承知の上なんだけど」
「な、なんだよ?」
「私の乳首を探してほしいの。私の死体から切り取られた、大事な大事な乳首を、ふたつとも」
だから、基本、昼の弁当は屋上で食う。
もちろん、連れなどいない。
なぜなら俺は、空気より存在感のない、完全無欠のぼっちだからだ。
その日の午後もそうだった。
俺はいつものようにクラスのやつらの冷たい視線を浴びながらそそくさと教室を出ると、弁当箱を抱えて屋上に向かった。
うちの高校の屋上の非常口の鍵はずっと壊れたままで、誰でも自由に出入りできるのだ。
給水塔の裏側に回り、階段に腰をかけていざ弁当箱を開いた時である。
ありえないものを目にして、俺はほぼ5秒ほど絶句した。
今朝俺が詰め込んできた白米の上に、梅干しの代わりに女の子の顔が乗っている。
いや、乗っているというより、弁当箱に女の子の顔がはまりこんでいるような感じである。
「ななな、なんだ?」
弁当箱を裏返してみても、当然そんなところに女の子の胴体など出ていない。
つまりは顔だけが、白米の上を占領しているというわけだ。
「な、なんなんだ? おまえは?」
やっとのことで声を絞り出すと、少女がぱっちりと目を開いた。
秀でた額に、睫毛の長いアーモンド形の大きな目。
控えめだが、形のいい鼻。
少し下のほうが厚い、官能的な唇。
よく見ると、ずいぶん可愛らしい顔立ちをしている。
「こんにちは」
俺を見つめると、鈴を振るような声で、少女が言った。
「はじめまして。私、2年3組の川本真由」
などと言われても、外界と完全没交渉の俺には心当たりなんてない。
同じ2年生でも、クラスが違えばそれこそ名前なんてわからない。
ましてや女子など尚のことだ。
「ど、どうして俺の弁当箱に…?」
まだ信じられない。
弁当箱の中に美少女の顏があり、俺に話しかけてくるなんて。
「びっくりさせてごめんなさい。あなた、5組の相田誠くんでしょ?」
ぱっちりした目で俺を見上げて少女が言った。
「そ、そうだけど…」
正直、気持ち悪かった。
できることなら、弁当箱を放り出して逃げ出したい。
でも、できなかった。
少女の顔つきが、あまりにも真剣そのものだったからである。
「あのね。ひとつ頼みたいことがあるの」
俺の顔をじっと覗き込むようにして、少女が続けた。
「た、頼みたいこと?」
「うん。不躾で、変なお願いだってことは、重々承知の上なんだけど」
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