超短くても怖い話【ホラーショートショート集】

戸影絵麻

文字の大きさ
460 / 625

#436話 妖怪探偵局②

しおりを挟む
 うちの『悪役令嬢探偵局』はボロい雑居ビルの2階にあり、その裏が月極駐車場になっている。
 あたしのハーレーダビッドソンをひと目見るなり、唯は皿のように目を丸くした。
「高校の制服のまま、これに乗るんですか?」
 私はセーラー服の夏服と、極度に短いミニひだスカートといったいつものスタイルである。
 革のツナギも持ってはいるが、胸囲90?強の胸がきつくてファスナーが上まで上がらないのだ。
「悪いか?」
 ハーレーに跨り、後ろに乗るように目で促すと、
「だってパンツ見えちゃいません?」
 至極もっともなことを訊いてきた。
「馬鹿だな。パンツは見せるために穿くものだ」
「え? そうなんですか?」
「当たり前だ。いやならズボンを履けばいいだけのことさ。だから、あたしに言わせれば、ミニスカの下にスパッツ穿いたり、ブルマ穿いたりするのは邪道なんだよ」
「さすが悪役令嬢…。パンチラひとつにも哲学があるんですね」
「そうさ。この世のすべては哲学的なんだ」

 一般道を時速150キロで爆走するのは、自殺行為である。
 だがそれは愚かな民衆についていえることであり、悪役令嬢には当てはまらない。
 なぜって悪役令嬢は、いわば万能だからである。
 人間より、むしろ神に近いといってもいい。
「オラオラオラオラ! どけどけどけ!」
 ミニスカをはためかせ、Gカップのバストを揺すりながら大型バイクを走らせる女子高生ほど無敵なものはない。
 だからわずか15分で郊外にある唯の家に到着した。
 見たところ、近郊農業を営む典型的な兼業農家である。
 地場産業として、キャベツを栽培しているようだ。
 が、そのキャベツ畑一面に妙なものが生えていた。
 子どものチンコを引き延ばしたような形の、細長いミミズ状の物体である。
「あれがクネクネです」
 恐ろしそうに唯が言った。
「任せろ」
 あたしは背中に火炎放射器を背負ったまま、畑の中の畦道を歩き出した。
 これで一気に殲滅してやる。
 そう思ったのだ。
 
 畑一面に生えるチンコ、いや、クネクネは、見たところただ気色悪いだけだった。
 しかも、別に攻撃してくることもなく、火炎放射器のひと吹きででことごとく丸焼けになってしまった。
 一緒にキャベツも燃えてしまったが、これは仕方ないというべきだろう。
「ありがとうございます。おかげで助かりました」
 謝礼の5,000円を私に差し出しながら、夕食の席で唯が言った。
「悪役さんもひとり暮らしは大変でしょう。どうぞ家族と一緒にお夕食でも」
 というので、せっかくだからよばれていくことにしたのである。
 だが、長方形のテーブルに並んだ料理はすべて焼きキャベツだった。
 いやいや食べていると、中に丸焼けになった芋虫まで入っていた。
 最悪にもほどがある。
「いやあ、しかし、あなたが探偵さんとは」
 サラリーマン然とした唯の父親が、眼を細めて私を見た。
 視線が乳に集中しているように見えるのは、私の気のせいか。
「ハーレイに火炎放射器。JKなのに、すごい装備だね」
「JKである前に、私、悪役令嬢ですから」
 焼きキャベツに食傷し、箸を置くと私は答えた。
「悪役令嬢って、唯のはまってるあの乙女ゲ~によく出てくるキャラ?」
「乙女ゲ~?」
 私は眉をひそめた。
 なんだ、それは?
 ゲームといえば、普通、格闘ゲームとレースゲームだろう。
 頭を使わなくて済むからだ。
「なんにしても、これからも唯のこと、よろしくお願いしますね」
 にこにこ笑いながら、ふくよかな感じの唯の母親が言った。
「悪いことが起こらねば、いいだが…」
 横から口を出したのは、農夫姿の祖父である。
「じゃ、また何かあったら」
 私は立ち上がった。
 スカートが翻り、パンツがチラ見えする。
 親父の眼が吸いついてくるのが分かった。
 まったく、娘がいるのにしょうがないおっさんだ。

 翌日は土曜日だったので、朝から一平が遊びに、いや、仕事にやってきた。
 ふたりで将棋を指していると、電話が鳴った。
「唯からだよ」
 一平から受話器を受取ると、切羽詰まった唯の声が耳に飛び込んできた。
「大変なんです! またクネクネが生えてきちゃいました。それも、なんだかパワーアップして! 今、ラインで画像送りましたから、スマホ見てください!」
「パワーアップ? どういうことだ?」
 スマホを手に取り、唯からの画像を開く。
「げ」
 とたんに私は呻いていた。
「どうしたの?」
 横から一平が覗きこんできた。
「チンコが、進化している…」
 うわ言のように、私はつぶやいた。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

10秒で読めるちょっと怖い話。

絢郷水沙
ホラー
 ほんのりと不条理な『ギャグ』が香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

女子切腹同好会

しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。 はたして、彼女の行き着く先は・・・。 この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。 また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。 マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。 世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

処理中です...