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#444話 妖怪探偵局⑩【最終回】
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あたしのチクリのせいで、結局、唯の両親は離婚することになり、結衣は母親に引き取られた。
あたしとしても迷わないではなかったのだが、あんな鬼畜のような男と唯をひとつ屋根の下で暮らさせるわけにはいかないと、最終的に判断した結果である。
唯の親父がさまざまな魔物を呼び出せたのは、土蔵の中から発見したコトリバコなる呪物のおかげらしい。
一平によると、コトリバコも都市伝説の一つで、なんでも呪いの道具としてはかなり強力なものだということだった。
そこであたしは親父からコトリバコを奪い、おっぱいビームで焼き払うことにした。
おっぱいビームは無属性だから、相手がどんな妖怪であろうと、それこそ瞬殺なのである。
さぞ悲嘆にくれるかと思いきや、結衣は思いのほかケロッとしていた。
「私も前々からおかしいなと思ってたんですよ。下着がよくなくなるし、お風呂に入ってると必ずのぞかれてるような気がしましたから。あ。母さんですか? 母さんなら大丈夫です。そんなこともあろうかと、半年前から不倫してたんですって。お相手はパート先のコンビニの店長さん。私も顔見知りですけど、男やもめで、とってもいい人なんです。たぶん母さん、あの人と再婚する気じゃないかな」
そして唯自身は、今、うちの探偵事務所にバイトに来ていた。
正直、事件の依頼もないのにバイトばかり増えても仕方ないのだが、給料は安くて構わないというから置いておくことにした。
まあ、一平に比べれば結衣のほうが受付係としては何倍も優秀だし、見栄えもいい。
そんなある日のこと。
受付を唯に任せ、エアコンを効かせた奥の部屋でBL漫画を読んでいると、足音も荒く一平が入ってきた。
「なんだ、塾の夏期講習じゃなかったのかよ」
夏休みに入って一平が姿を見せるのは、これが初めてである。
朝から晩までの夏期講習とやらが20日間もあって、とてもバイトどころではないというのがその理由だった。
「そうなんだけどさ、悪役、ちょっと助けてほしいんだよ」
いつもずうずうしい一平にしては弱気な口調である。
「は? なにを?」
「仕事さ、仕事」
「面倒くさいな」
あたしはごろりと仰向けになった。
「そんなこと、言わないでさ。お金なら塾側が出すって確約取ってきたし、こんなにうまい話はないと思うぜ」
「なんでそこで塾が出てくるんだ」
「今度の舞台が、塾の教室だからだよ」
「舞台?」
「そう。出るんだ」
一平の顔は、なぜか真っ青だ。
「何が?」
「花子だよ」
「は?」
「トイレの花子」
「あたしは探偵だぞ」
「でも、妖怪退治のほうが実績あるじゃないか」
「あれはたまたまだ」
「俺と唯のバイト代、どうすんだ? 先月分、まだもらってないぞ」
「それを言うか」
私はため息をついた。
しょうがない。
ブラとパンティのセミヌードの上から、セーラー服とミニひだスカートを身につける。
「案内しろ。退治してやる」
「やったー、さすが悪役」
「あ。お仕事ですか?」
カウンターの前を通る時、結衣に声をかけられた。
「ああ、ちょっとトイレの花子と戦ってくる。留守番、頼んだぞ」
「いってらっしゃーい。がんばってくださいね~」
こうして、またしても、不本意ながら、あたしの妖怪退治の日常が始まったのである。
ー完ー
あたしとしても迷わないではなかったのだが、あんな鬼畜のような男と唯をひとつ屋根の下で暮らさせるわけにはいかないと、最終的に判断した結果である。
唯の親父がさまざまな魔物を呼び出せたのは、土蔵の中から発見したコトリバコなる呪物のおかげらしい。
一平によると、コトリバコも都市伝説の一つで、なんでも呪いの道具としてはかなり強力なものだということだった。
そこであたしは親父からコトリバコを奪い、おっぱいビームで焼き払うことにした。
おっぱいビームは無属性だから、相手がどんな妖怪であろうと、それこそ瞬殺なのである。
さぞ悲嘆にくれるかと思いきや、結衣は思いのほかケロッとしていた。
「私も前々からおかしいなと思ってたんですよ。下着がよくなくなるし、お風呂に入ってると必ずのぞかれてるような気がしましたから。あ。母さんですか? 母さんなら大丈夫です。そんなこともあろうかと、半年前から不倫してたんですって。お相手はパート先のコンビニの店長さん。私も顔見知りですけど、男やもめで、とってもいい人なんです。たぶん母さん、あの人と再婚する気じゃないかな」
そして唯自身は、今、うちの探偵事務所にバイトに来ていた。
正直、事件の依頼もないのにバイトばかり増えても仕方ないのだが、給料は安くて構わないというから置いておくことにした。
まあ、一平に比べれば結衣のほうが受付係としては何倍も優秀だし、見栄えもいい。
そんなある日のこと。
受付を唯に任せ、エアコンを効かせた奥の部屋でBL漫画を読んでいると、足音も荒く一平が入ってきた。
「なんだ、塾の夏期講習じゃなかったのかよ」
夏休みに入って一平が姿を見せるのは、これが初めてである。
朝から晩までの夏期講習とやらが20日間もあって、とてもバイトどころではないというのがその理由だった。
「そうなんだけどさ、悪役、ちょっと助けてほしいんだよ」
いつもずうずうしい一平にしては弱気な口調である。
「は? なにを?」
「仕事さ、仕事」
「面倒くさいな」
あたしはごろりと仰向けになった。
「そんなこと、言わないでさ。お金なら塾側が出すって確約取ってきたし、こんなにうまい話はないと思うぜ」
「なんでそこで塾が出てくるんだ」
「今度の舞台が、塾の教室だからだよ」
「舞台?」
「そう。出るんだ」
一平の顔は、なぜか真っ青だ。
「何が?」
「花子だよ」
「は?」
「トイレの花子」
「あたしは探偵だぞ」
「でも、妖怪退治のほうが実績あるじゃないか」
「あれはたまたまだ」
「俺と唯のバイト代、どうすんだ? 先月分、まだもらってないぞ」
「それを言うか」
私はため息をついた。
しょうがない。
ブラとパンティのセミヌードの上から、セーラー服とミニひだスカートを身につける。
「案内しろ。退治してやる」
「やったー、さすが悪役」
「あ。お仕事ですか?」
カウンターの前を通る時、結衣に声をかけられた。
「ああ、ちょっとトイレの花子と戦ってくる。留守番、頼んだぞ」
「いってらっしゃーい。がんばってくださいね~」
こうして、またしても、不本意ながら、あたしの妖怪退治の日常が始まったのである。
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