超短くても怖い話【ホラーショートショート集】

戸影絵麻

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第480話 冥府の王㉛

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 武器を手にして、僕らは気が大きくなりすぎていたのかもしれない。
 血の気の多い剛が、まさにその典型だったろう。
「待って、剛!」
 由里亜が叫んだ時には、剛はすでに走り出していた。
「てめえ! かあちゃんの仇!」
 巨大な斧を振りかぶり、ハンザキめがけて突進し始めたのだ。
 と、ハンザキの左腕が一閃した。
 指が鉤爪になった凶器のような左手が、振り下ろされた斧をいともたやすく受け止めた。
「くそっ」
 光の斧を弾かれ、たたらを踏む剛。
 そこに、ハンザキの鎌になった右腕が襲いかかる。
「だから言ったのに!」
 由里亜が弓を引き絞った。
 次の瞬間、光の矢が放たれ、ハンザキの顔をかすめた。
 当たらないまでも、それはハンザキの動きを止めるには十分だった。
「逃げるよ! みんな!」
 第2矢を弓につがえて、由里亜が言う。
「今戦っても、勝ち目はない。だって、私たち、武器なんて使ったことないんだから」
 由里亜の言う通りだった。
 僕は両手に握った長い槍を見た。
 もらったのはいいけれど、これ、いったいどうやって使うのか。
 せめて、練習ぐらいしないと、今の剛みたいに反対にやられるのがオチだろう。
「逃げるって、どこへだよ?」
 地面から跳ね起きて、剛が怒鳴った。
「あの狭い洞穴は無理だろ? 抜ける前につかまって殺されちまう!」
「奥に逃げるしかないわね。きっとどこかに、地上に出る別の道があるはず。だって、風が吹いてきてるもの」
 由里亜の放った2発目の矢は、ハンザキの手前で地面に落ち、ただバウンドしただけだった。
「こっちだよ」
 香澄が駆け出したのは、。その時だ。
「出口ならあるよ。さっき、上に登った時、見えたもの」


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