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プロローグB-②
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黒い羊は、M3号のコードネームで呼ばれている。
1号でなく、3号なのは、中国で同様のDNA組成を持つ個体が2体、過去に発見されているからだ。
が、14年も生存したのは、この3号が初めてだった。
1号と2号は、ともに6歳を待たずして死んだ、と伝えられている。
一説によると、精神に異常を来たして、お互いがお互いを喰らい合った結果だという。
黒い羊と人間との差異は、ほとんどない。
強いて違いを挙げるとしたら、感情を露わにした時、眉間に出現する縦長の”眼”だ。
そして、これは人間の肉眼では捉えられないのだが、”眼”の出現とともに黒い羊は武器らしきものを発現する。
その攻撃力は半端ではなく、瞬時に鉄筋コンクリート製のビルを1棟破壊してしまうほどだ。
ただ、不可視なだけに、それがどういう具合に作用する力なのか、今のところ分かってはいない。
わかっているのは、ポルターガイスト現象に似ているが、その力がもっと強力で指向性のあるものらしいということだ。
だから人間にできることと言えば、M3号を”鉄の処女”で拘束して、力の発動を止めることぐらいなのである。
「危険ですね。拘束具の内部モニターによると、彼女の額に例の第3の眼ができかかっています」
「困ったな」
美晴の緊迫した報告に、矢崎にもやっと事の重大さが認識されてきた。
「とりあえず、最悪の事態に備えて、警備の強化を要請しよう。乾(いぬい)長官には俺から報告しておくから、君はデータを整理して制御室に送ってくれ」
「通路の隔壁をすべて遮断することを提案します。M3号は、この前暴走した時から、5年分成長しています。9歳のあの時ですら、3枚の隔壁が破られ、10人が死傷しました。今度はそれ以上の被害が予想されます」
「5年前はまだ君はここにいなかったはずだが、よく調べてるな」
「父から直接聞きました。父は、あの事件の傷がもとで他界しましたから」
「すまん、そうだった」
風見美晴の父親は、この施設の警備部の責任者だったのだ。
M3号に吹き飛ばされた隔壁の直撃を喰らって、重傷を負ったと聞いている。
「よし、隔壁の全閉鎖を要請しよう。乾長官なら、きっと迅速に動いてくれるはずだ」
そう言って、矢崎が通話器のスイッチをオンにした。その瞬間だった。
画面の中で、変化が起こった。
突然鈍い金属音が響き渡り、ふいに”鉄の処女”の前面が開いたのだ。
1号でなく、3号なのは、中国で同様のDNA組成を持つ個体が2体、過去に発見されているからだ。
が、14年も生存したのは、この3号が初めてだった。
1号と2号は、ともに6歳を待たずして死んだ、と伝えられている。
一説によると、精神に異常を来たして、お互いがお互いを喰らい合った結果だという。
黒い羊と人間との差異は、ほとんどない。
強いて違いを挙げるとしたら、感情を露わにした時、眉間に出現する縦長の”眼”だ。
そして、これは人間の肉眼では捉えられないのだが、”眼”の出現とともに黒い羊は武器らしきものを発現する。
その攻撃力は半端ではなく、瞬時に鉄筋コンクリート製のビルを1棟破壊してしまうほどだ。
ただ、不可視なだけに、それがどういう具合に作用する力なのか、今のところ分かってはいない。
わかっているのは、ポルターガイスト現象に似ているが、その力がもっと強力で指向性のあるものらしいということだ。
だから人間にできることと言えば、M3号を”鉄の処女”で拘束して、力の発動を止めることぐらいなのである。
「危険ですね。拘束具の内部モニターによると、彼女の額に例の第3の眼ができかかっています」
「困ったな」
美晴の緊迫した報告に、矢崎にもやっと事の重大さが認識されてきた。
「とりあえず、最悪の事態に備えて、警備の強化を要請しよう。乾(いぬい)長官には俺から報告しておくから、君はデータを整理して制御室に送ってくれ」
「通路の隔壁をすべて遮断することを提案します。M3号は、この前暴走した時から、5年分成長しています。9歳のあの時ですら、3枚の隔壁が破られ、10人が死傷しました。今度はそれ以上の被害が予想されます」
「5年前はまだ君はここにいなかったはずだが、よく調べてるな」
「父から直接聞きました。父は、あの事件の傷がもとで他界しましたから」
「すまん、そうだった」
風見美晴の父親は、この施設の警備部の責任者だったのだ。
M3号に吹き飛ばされた隔壁の直撃を喰らって、重傷を負ったと聞いている。
「よし、隔壁の全閉鎖を要請しよう。乾長官なら、きっと迅速に動いてくれるはずだ」
そう言って、矢崎が通話器のスイッチをオンにした。その瞬間だった。
画面の中で、変化が起こった。
突然鈍い金属音が響き渡り、ふいに”鉄の処女”の前面が開いたのだ。
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