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ACT12 腸詰帝国潜入作戦
#26 リコ⑩
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ポメラリアンはふつうの軽自動車ではない。
なんせ宇宙人の技術で創り出されたのだ。
「ちゃんと前を見ろ」
横から手を伸ばしたハルがダッシュボードのパネルを指先でタップすると、とたんに落下が止まった。
陸橋を飛び出したまま、なぜか宙に浮いている。
ウィンドウを下ろし、おそるおそる窓から下を見ると、車体の側面に翼が生え、下部から空気の渦が噴き出していた。
「このまま巡航速度で空から行こう。目的地をナビに入れておけば、車が勝手に連れて行ってくれる」
「なら、最初からそうすればよかったのに」
恨みがましくハルをにらむと、その手がまたスカートの中に滑り込んできた。
「文句を言うな。私は運転中のおまえを弄るのが好きなのだ」
リコの通う会員制スポーツクラブは、ゴルフ場に隣接した丘の上にある。
周囲は森を切り開いてつくられた造成地で、広大な駐車場の周囲にはまだ自然が豊かに残っている。
青空の中、ポメラリアンは音もなくがら空きの駐車場に降りていく。
着地時の振動はほとんどゼロに近く、宇宙人の技術力の高さを想像させる快適さだった。
「わあ、すっごーい! なんだかセレブになったみたあい!」
学ランの上に浮き輪をはめたアリアが、歓声を上げて飛び跳ねた。
「ああ、苦しかった。窒息死するかと思った」
トランクが開いて、中から転げ出してきたビュンビュン丸が、地面に尻もちをついて額の汗をぬぐった。
真っ青な空を背景に、横長の白亜の建物が左右に続いている。
エントランスの上にあるイルカをあしらったロゴは、テレビCMでもおなじみのものだ。
「けっこう有名なタレントや歌手も来ることがある。頼むからおとなしくしていてくれ」
チンドン屋みたいな恰好のアリアに、一応念を押しておく。
だが、本当に心配なのは、これまた場違いなリクルートスーツ姿のハルのほうだ。
今は道に迷った就活生みたいにゆっくり周りを眺めまわしているが、何といっても思考回路が宇宙人なのである。
放っておくと、何をしでかすかわかったものじゃない。
案の定、受付でさっそくひと悶着あった。
「あのう、当センターでは、浮き輪の使用はちょっと…」
アリアが腰にはめた浮き輪を見て、露骨に眉をひそめる受付嬢に、ハルが言ったのだ。
「ここに百万ある。おまえにやるから目をつぶれ。それでもごねるなら、責任者をここに呼べ」
横で聞きながら、リコは内心呆れていた。
これでは地上げに来たやくざである。
「百万…?」
カウンターに投げ出された分厚い封筒に、受付嬢の視線は釘付けになっている。
「あのう、申し訳ありませんが、こういうことされても、困りますので…」
年かさのほうの受付嬢が封筒を押し返そうとした時、
「何をもめてるんだね?」
ハルの後ろに、仕立てのいいブランド物のスーツを着込んだ、恰幅のいい中年男が立ち止まった。
なんせ宇宙人の技術で創り出されたのだ。
「ちゃんと前を見ろ」
横から手を伸ばしたハルがダッシュボードのパネルを指先でタップすると、とたんに落下が止まった。
陸橋を飛び出したまま、なぜか宙に浮いている。
ウィンドウを下ろし、おそるおそる窓から下を見ると、車体の側面に翼が生え、下部から空気の渦が噴き出していた。
「このまま巡航速度で空から行こう。目的地をナビに入れておけば、車が勝手に連れて行ってくれる」
「なら、最初からそうすればよかったのに」
恨みがましくハルをにらむと、その手がまたスカートの中に滑り込んできた。
「文句を言うな。私は運転中のおまえを弄るのが好きなのだ」
リコの通う会員制スポーツクラブは、ゴルフ場に隣接した丘の上にある。
周囲は森を切り開いてつくられた造成地で、広大な駐車場の周囲にはまだ自然が豊かに残っている。
青空の中、ポメラリアンは音もなくがら空きの駐車場に降りていく。
着地時の振動はほとんどゼロに近く、宇宙人の技術力の高さを想像させる快適さだった。
「わあ、すっごーい! なんだかセレブになったみたあい!」
学ランの上に浮き輪をはめたアリアが、歓声を上げて飛び跳ねた。
「ああ、苦しかった。窒息死するかと思った」
トランクが開いて、中から転げ出してきたビュンビュン丸が、地面に尻もちをついて額の汗をぬぐった。
真っ青な空を背景に、横長の白亜の建物が左右に続いている。
エントランスの上にあるイルカをあしらったロゴは、テレビCMでもおなじみのものだ。
「けっこう有名なタレントや歌手も来ることがある。頼むからおとなしくしていてくれ」
チンドン屋みたいな恰好のアリアに、一応念を押しておく。
だが、本当に心配なのは、これまた場違いなリクルートスーツ姿のハルのほうだ。
今は道に迷った就活生みたいにゆっくり周りを眺めまわしているが、何といっても思考回路が宇宙人なのである。
放っておくと、何をしでかすかわかったものじゃない。
案の定、受付でさっそくひと悶着あった。
「あのう、当センターでは、浮き輪の使用はちょっと…」
アリアが腰にはめた浮き輪を見て、露骨に眉をひそめる受付嬢に、ハルが言ったのだ。
「ここに百万ある。おまえにやるから目をつぶれ。それでもごねるなら、責任者をここに呼べ」
横で聞きながら、リコは内心呆れていた。
これでは地上げに来たやくざである。
「百万…?」
カウンターに投げ出された分厚い封筒に、受付嬢の視線は釘付けになっている。
「あのう、申し訳ありませんが、こういうことされても、困りますので…」
年かさのほうの受付嬢が封筒を押し返そうとした時、
「何をもめてるんだね?」
ハルの後ろに、仕立てのいいブランド物のスーツを着込んだ、恰幅のいい中年男が立ち止まった。
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