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ACT13 怪獣牧場

#7 リコ⑥

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 リコとキング・マラブンタの背丈は地上20メートルでほぼ同じ。

 だが、敵はその後ろに更に20メートルにも及ぶ胴体を持っていて、その威圧感といったら半端ない。
 
 Uの字を横倒しにしたような形でゆらゆら揺れる尾の部分だけで、優にプラス10メートルはあるだろう。

 -リコ、油断は禁物です。早まってはいけません。まずは敵の攻撃手段を見定めなくては。

 前頭葉からイオが緊迫した思念を送ってくる。
 
 が、その時にはリコはすでに飛び出していた。
 
 元来、短気な性格なのだ。

「こんなムカデ野郎、一撃で真っ二つさ!」

 駆けながら、頭上にサーベルを振りかぶる。

 ジャンプして、その切っ先を怪獣の頭部に叩きつけようとした瞬間だった。

 ふいに、マラブンタの単眼が、ぎらりと光った。

 と思った時には、二筋の光線がリコのビキニアーマーを貫いていた。

「マジか! 光線技かよ!」

 わめいた時には、すでに遅かった。

 身体中の筋肉が痺れて動かない。

 リコの手から、サーベルが抜けて地面にどさりと落ちた。

 -大変です! 今のはどうやら、麻痺光線と思われます。四肢の筋肉と運動神経が機能を停止しました!

「な、なんだって?」

 リコは歯軋りした。

 心臓をやられなくてよかったとは思うものの、これではマネキン人形と同じである。

 サンドバック代わりにボコボコにされるのは、もう目に見えている。

 いや、腸詰帝国は、繁華街の半グレ集団とはわけが違う。

 皇帝珍墨彩以下、変態怪人や変態海獣の巣窟なのだ。

 その程度の被害で済むとはとても思えない。

 キシェーッ!

 蒸気機関車みたいな音を立てて、マラブンタが動き始めた。

 蜘蛛のような節くれだった脚を交互に動かし、リコのほうにその巨体をのしのしと運んでくる。

 一番上に生えている一対の腕が伸び、リコの両腕をつかんでひねり上げた。

 万歳をするような姿勢を取らされ、リコのすべすべの腋の下が露わになる。

 嫌な予感がした。

 夜道でレイプ魔に遭遇した時のような、とてつもなく嫌な予感だった。

 そして。

 予感は当たった。

「や、やめろ!」

 反射的に、そう叫んだ時である。

 マラブンタの二対目の腕が伸び、熊手のような五本の指がいきなりリコの乳房をがっしりと鷲掴みにしたのだ。

 


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