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第10部 ヒバナ、アブノーマルヘブン!
#43 メンバー集合
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「こりゃ、大変なことになっっちゃったね」
壁面のテレビ画面を凝視しながら、糸魚川貢(いといがわみつぐ)がつぶやいた。
白鶴公園内の八幡古墳の中。
キャンプ極楽湯の最深部。
大型液晶スクリーンを囲むソファに、メンバーたちが思い思いの姿勢で腰をかけている。
画面に映っているのは、三河湾の航空写真である。
といっても、一面に灰色の靄のようなものが映し出されているだけで、ぱっと見では何がなんだかよくわからない。
「ルルイエが浮上したということか」
自動販売機の上で暖をとっていた青色のエリマキトカゲ、レオンがいった。
「こりゃ、準備を急がないとな」
「でも、玉ちゃんも心配だよね。桜子さんはあんなことになっちゃったし、お爺さんはまだ島なんでしょ」
ソファに深々と身を沈めていた八代ひずみが口を開いた。
モスグリーンのトレーナーにジーンズ姿のひずみは中学3年生。
ショートカットのボーイッシュな少女である。
「ジジイは大丈夫さ」
おかっぱ頭の小学生、玉子がぶっきらぼうな口調で答えた。
玉子は人外少女隊随一の魔道師であり、白虎の使い手だ。
外見は小学生だが、その実、転生した八白万の神の一柱でもある。
豊玉姫が彼女の前世の姿らしい。
「ああ見えても常世の神の一員だからな。煮ても焼いても死なないよ。それに、敵地に置いておけば、いずれ役に立つときがくる」
もともと玉子は不機嫌そうな表情がトレードマークなのだが、桜子の一件以来、ますます無表情になってしまった。
口には出さないが、年の離れた友人の死が、よほどこたえているのに違いなかった。
「この状況じゃとてもプロレスどころじゃないから、俺はいつでもいけるよ」
玉子を膝に乗せた巨漢、岩崎明日香がいった。
明日香はリングネーム”ブッチャー岩崎”。
現役の女子プロレスラーである。
玄武の御霊を内に宿し、この人外少女隊では、主に盾役を務めている。
鶏の鶏冠のように逆立てた髪、革ジャンに包まれたはちきれそうなボディ。
ただ、肉に埋もれた眼だけはゾウのように優しげだ。
「つやちゃんは、本当にいいのかい?」
ひずみ首に巻きついたマフラー状の生物がふいにしゃべった。
太古の神、蛭子の化身、ミミである。
普段は蛭に擬態していて、ひずみと共生関係にある。
このひとりと一匹のペアは、人外少女隊の貴重なヒーラーなのだ。
「私は平気です」
貢の隣に座っている線の細い娘が答えた。
艶野夜18歳、通称”お通夜"。
貢と同じ、那古野市立大学『超常現象研究会』のメンバーである。
これまでずっと端役の人生を送ってきたお通夜だったが、今、彼女は重要な任務を負わされようとしていた。
「もう、決心しましたから、いいんです。父もきっと許してくれると思います」
お通夜はつい先日、ダゴンに父親を食い殺されたばかりである。
癌で余命わずかだったとはいえ、辛い体験だったに違いない。
それ以来、この娘、少し強くなったように見える。
「しっかし、俺はいまだに信じられないよ」
貢がお通夜の横顔を眺めながら、ぼやいた。
「おまえがヒバナたちの仲間入りなんてなあ。しかも、よりによって最強の”黄竜”なんだろ?」
貢がそういい終わるか終わらないかのうちだった。
「お待たせー」
場違いに陽気な声とともに、浴場のすりガラスのドアが開き、派手なビキニ姿の娘が姿を現した。
「おお~」
貢が口笛を鳴らす。
「ヒバナ、傷はもういいの?」
「うん。ほら見て」
浴場から出てきたのは、岬ヒバナだった。
少し垂れ気味の大きな目。
ハート型の小顔をふわふわした髪が覆っている。
体は細身だが、よく見ると四肢にも腹にも筋肉が発達していることがわかる。
湯気を上げる体で仁王立ちになると、ビキニのトップとパンツの間の平らで滑らかな腹を指し示した。
「ぜんぜん痕残ってないでしょ? あんなにでっかい穴開いてたのに。さっすが常世細胞って感じだね」
「まあ、あんまり薬湯に頼るのは感心しないけどね」
そういいながらヒバナの後ろから現れたのは、秋津緋美子である。
緋美子は、漆黒の髪に小麦色の肌をした正統派美少女だ。
おとなしめのセパレーツの水着を着ているだけだが、スタイルが良過ぎるだけに余計にセクシーだった。
19歳のヒバナよりふたつ年下の高校生だが、ともすればヒバナより年上に見える。
ちなみにヒバナは青竜、緋美子は朱雀の御霊使いであり、ゲームに例えれば、そのポジションはふたりともアタッカーだった。
「ここ1ケ月ほぼ毎日お湯に浸かってたから、少しふやけたかも」
ひずみからバスタオルを受け取ると、胸のあたりを特に念入りにを拭きながらヒバナが生真面目な顔でいった。
「なんでもいいから、ふたりともさっさと着替えてきてよ。糸魚川さんが鼻血出さないうちにね。だいたい、なんでひみ先輩まで一緒にお風呂入ってるの? わけわかんない」
半ば腰を浮かしてふたりの水着美女を注視している貢を横目で睨みながら、ひずみがいった。
声に少なからず嫉妬の響きが混じっている。
「ヒバナをひとりにしておくと、お風呂の中で寝ちゃうのよ」
弁解がましく緋美子がいう。
「なんちゃって、ほんとはふたりでいいことしてたんじゃないのかい?」
貢の突っ込みに、
「違います!」
ヒバナが耳のつけ根まで赤くなる。
「いくらメンバー公認だからって、ヒバナ君、時と場所をわきまえたまえ」
「おい、小僧。おまえ、いっぺん、地獄の業火で焼いてやろうか?」
だしぬけに玉子がすごんだので、貢が急速にしゅんとなった。
「い、いや、玉ちゃん、それだけは御勘弁を」
「さ、おまえたちの準備が出来次第、第2回作戦会議を始めるぞ」
レオンの言葉に、
「はあい」
緋美子に肩を抱かれるようにして、ヒバナが奥の脱衣所へと入っていった。
「ふたりとも、そのままの格好でいいのに」
つぶやく貢に、苦笑しながらお通夜が声をかける。
「貢はほんと懲りないね。でも、私は君のそういうネジのはずれたとこ、嫌いじゃないよ」
「お通夜。おまえはいいやつだ」
貢がうなずいて、そっとお通夜の手を握った。
お通夜の左手首には、例の”大いなる腕輪”が嵌っている。
壁面のテレビ画面を凝視しながら、糸魚川貢(いといがわみつぐ)がつぶやいた。
白鶴公園内の八幡古墳の中。
キャンプ極楽湯の最深部。
大型液晶スクリーンを囲むソファに、メンバーたちが思い思いの姿勢で腰をかけている。
画面に映っているのは、三河湾の航空写真である。
といっても、一面に灰色の靄のようなものが映し出されているだけで、ぱっと見では何がなんだかよくわからない。
「ルルイエが浮上したということか」
自動販売機の上で暖をとっていた青色のエリマキトカゲ、レオンがいった。
「こりゃ、準備を急がないとな」
「でも、玉ちゃんも心配だよね。桜子さんはあんなことになっちゃったし、お爺さんはまだ島なんでしょ」
ソファに深々と身を沈めていた八代ひずみが口を開いた。
モスグリーンのトレーナーにジーンズ姿のひずみは中学3年生。
ショートカットのボーイッシュな少女である。
「ジジイは大丈夫さ」
おかっぱ頭の小学生、玉子がぶっきらぼうな口調で答えた。
玉子は人外少女隊随一の魔道師であり、白虎の使い手だ。
外見は小学生だが、その実、転生した八白万の神の一柱でもある。
豊玉姫が彼女の前世の姿らしい。
「ああ見えても常世の神の一員だからな。煮ても焼いても死なないよ。それに、敵地に置いておけば、いずれ役に立つときがくる」
もともと玉子は不機嫌そうな表情がトレードマークなのだが、桜子の一件以来、ますます無表情になってしまった。
口には出さないが、年の離れた友人の死が、よほどこたえているのに違いなかった。
「この状況じゃとてもプロレスどころじゃないから、俺はいつでもいけるよ」
玉子を膝に乗せた巨漢、岩崎明日香がいった。
明日香はリングネーム”ブッチャー岩崎”。
現役の女子プロレスラーである。
玄武の御霊を内に宿し、この人外少女隊では、主に盾役を務めている。
鶏の鶏冠のように逆立てた髪、革ジャンに包まれたはちきれそうなボディ。
ただ、肉に埋もれた眼だけはゾウのように優しげだ。
「つやちゃんは、本当にいいのかい?」
ひずみ首に巻きついたマフラー状の生物がふいにしゃべった。
太古の神、蛭子の化身、ミミである。
普段は蛭に擬態していて、ひずみと共生関係にある。
このひとりと一匹のペアは、人外少女隊の貴重なヒーラーなのだ。
「私は平気です」
貢の隣に座っている線の細い娘が答えた。
艶野夜18歳、通称”お通夜"。
貢と同じ、那古野市立大学『超常現象研究会』のメンバーである。
これまでずっと端役の人生を送ってきたお通夜だったが、今、彼女は重要な任務を負わされようとしていた。
「もう、決心しましたから、いいんです。父もきっと許してくれると思います」
お通夜はつい先日、ダゴンに父親を食い殺されたばかりである。
癌で余命わずかだったとはいえ、辛い体験だったに違いない。
それ以来、この娘、少し強くなったように見える。
「しっかし、俺はいまだに信じられないよ」
貢がお通夜の横顔を眺めながら、ぼやいた。
「おまえがヒバナたちの仲間入りなんてなあ。しかも、よりによって最強の”黄竜”なんだろ?」
貢がそういい終わるか終わらないかのうちだった。
「お待たせー」
場違いに陽気な声とともに、浴場のすりガラスのドアが開き、派手なビキニ姿の娘が姿を現した。
「おお~」
貢が口笛を鳴らす。
「ヒバナ、傷はもういいの?」
「うん。ほら見て」
浴場から出てきたのは、岬ヒバナだった。
少し垂れ気味の大きな目。
ハート型の小顔をふわふわした髪が覆っている。
体は細身だが、よく見ると四肢にも腹にも筋肉が発達していることがわかる。
湯気を上げる体で仁王立ちになると、ビキニのトップとパンツの間の平らで滑らかな腹を指し示した。
「ぜんぜん痕残ってないでしょ? あんなにでっかい穴開いてたのに。さっすが常世細胞って感じだね」
「まあ、あんまり薬湯に頼るのは感心しないけどね」
そういいながらヒバナの後ろから現れたのは、秋津緋美子である。
緋美子は、漆黒の髪に小麦色の肌をした正統派美少女だ。
おとなしめのセパレーツの水着を着ているだけだが、スタイルが良過ぎるだけに余計にセクシーだった。
19歳のヒバナよりふたつ年下の高校生だが、ともすればヒバナより年上に見える。
ちなみにヒバナは青竜、緋美子は朱雀の御霊使いであり、ゲームに例えれば、そのポジションはふたりともアタッカーだった。
「ここ1ケ月ほぼ毎日お湯に浸かってたから、少しふやけたかも」
ひずみからバスタオルを受け取ると、胸のあたりを特に念入りにを拭きながらヒバナが生真面目な顔でいった。
「なんでもいいから、ふたりともさっさと着替えてきてよ。糸魚川さんが鼻血出さないうちにね。だいたい、なんでひみ先輩まで一緒にお風呂入ってるの? わけわかんない」
半ば腰を浮かしてふたりの水着美女を注視している貢を横目で睨みながら、ひずみがいった。
声に少なからず嫉妬の響きが混じっている。
「ヒバナをひとりにしておくと、お風呂の中で寝ちゃうのよ」
弁解がましく緋美子がいう。
「なんちゃって、ほんとはふたりでいいことしてたんじゃないのかい?」
貢の突っ込みに、
「違います!」
ヒバナが耳のつけ根まで赤くなる。
「いくらメンバー公認だからって、ヒバナ君、時と場所をわきまえたまえ」
「おい、小僧。おまえ、いっぺん、地獄の業火で焼いてやろうか?」
だしぬけに玉子がすごんだので、貢が急速にしゅんとなった。
「い、いや、玉ちゃん、それだけは御勘弁を」
「さ、おまえたちの準備が出来次第、第2回作戦会議を始めるぞ」
レオンの言葉に、
「はあい」
緋美子に肩を抱かれるようにして、ヒバナが奥の脱衣所へと入っていった。
「ふたりとも、そのままの格好でいいのに」
つぶやく貢に、苦笑しながらお通夜が声をかける。
「貢はほんと懲りないね。でも、私は君のそういうネジのはずれたとこ、嫌いじゃないよ」
「お通夜。おまえはいいやつだ」
貢がうなずいて、そっとお通夜の手を握った。
お通夜の左手首には、例の”大いなる腕輪”が嵌っている。
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