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背徳病棟⑬
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「麦踏み、麦踏み…」
弓削氷見子は蓮月の躰を踏みつけるのを、いっこうに止めようとしない。
まるで幼児に対抗したかのように、そんな童歌を口ずさみながら長靴で膨張し切った腹を踏みつけてくる。
氷見子の履く大きな長靴は、そこが頑丈なラバーでできており、踏まれるとかなり痛い。
氷見子自身は小柄で体重もそれほどないのだが、力任せに踏みつけてくるからたちが悪かった。
「や、やめて、お願い」
蓮月には、弱々しく哀願することしかできない。
両手両足ともに風船のごとく膨れ上がった胴体の下敷きになり、指一本動かせないときているのだ。
しかも、体内にお湯を注ぎ込まれるのと違い、躰を踏まれるのは想像以上に痛かった。
長靴の底で傷つけられた皮膚から血が滲み、白かった肌にあちこち赤い斑点が浮き出ている。
「うわあ、血が出てきたあ」
氷見子は傷口を見つけると狂喜乱舞して喜び、そこに長靴のつま先を入れてきた。
「ほらほらほらほら」
硬い長靴の先端で、蓮月の臍の横に開いた傷口をこじ開ける。
容赦のない攻撃にやがて表皮が爆ぜ、その下から黄味がかった脂肪層が現れた。
「い、いたいったら!」
泣き声を上げる蓮月。
あまりの激痛に、目尻に熱い涙が滲んだ。
「ぐりぐりぐりぐりっ!」
かさにかかったように叫びながら、氷見子が狂おしく長靴のつま先で傷口を広げていく。
筋肉が弾け、下から肉色の薄い膜のようなものがせり上がってくるのがわかった。
内圧で、内臓が飛び出そうとしているのだ。
「それ以上は、だめ! そんなことしたら、おなかがあっ!」
悲鳴混じりに蓮月がわめいた、その瞬間だった。
ぶちっ。
何かが切れるような音が響き渡ったかと思うと、蓮月の風船のような腹部の真ん中に真っ赤な亀裂が走った。
へそのあたりに生じた裂け目が、見る間に正中線に沿って上下に広がっていく。
「あああああああああっ!」
蓮月の喉から、絶望の悲鳴がほとばしった。
ぶちっ。
ぶちぶちぶちっ!
薄い皮膜を破って、内側から肉色の物体がもりもり隆起してくるのだ。
血にまみれた太い蛇のようなものー。
節くれだったテッポウムシのようなその長い管は、明らかに中身をパンパンに詰め込んだ大腸だ。
大蛇が鎌首をもたげるように、蓮月の大腸が亀裂から頭部を持ち上げた。
そしてー。
弓削氷見子は蓮月の躰を踏みつけるのを、いっこうに止めようとしない。
まるで幼児に対抗したかのように、そんな童歌を口ずさみながら長靴で膨張し切った腹を踏みつけてくる。
氷見子の履く大きな長靴は、そこが頑丈なラバーでできており、踏まれるとかなり痛い。
氷見子自身は小柄で体重もそれほどないのだが、力任せに踏みつけてくるからたちが悪かった。
「や、やめて、お願い」
蓮月には、弱々しく哀願することしかできない。
両手両足ともに風船のごとく膨れ上がった胴体の下敷きになり、指一本動かせないときているのだ。
しかも、体内にお湯を注ぎ込まれるのと違い、躰を踏まれるのは想像以上に痛かった。
長靴の底で傷つけられた皮膚から血が滲み、白かった肌にあちこち赤い斑点が浮き出ている。
「うわあ、血が出てきたあ」
氷見子は傷口を見つけると狂喜乱舞して喜び、そこに長靴のつま先を入れてきた。
「ほらほらほらほら」
硬い長靴の先端で、蓮月の臍の横に開いた傷口をこじ開ける。
容赦のない攻撃にやがて表皮が爆ぜ、その下から黄味がかった脂肪層が現れた。
「い、いたいったら!」
泣き声を上げる蓮月。
あまりの激痛に、目尻に熱い涙が滲んだ。
「ぐりぐりぐりぐりっ!」
かさにかかったように叫びながら、氷見子が狂おしく長靴のつま先で傷口を広げていく。
筋肉が弾け、下から肉色の薄い膜のようなものがせり上がってくるのがわかった。
内圧で、内臓が飛び出そうとしているのだ。
「それ以上は、だめ! そんなことしたら、おなかがあっ!」
悲鳴混じりに蓮月がわめいた、その瞬間だった。
ぶちっ。
何かが切れるような音が響き渡ったかと思うと、蓮月の風船のような腹部の真ん中に真っ赤な亀裂が走った。
へそのあたりに生じた裂け目が、見る間に正中線に沿って上下に広がっていく。
「あああああああああっ!」
蓮月の喉から、絶望の悲鳴がほとばしった。
ぶちっ。
ぶちぶちぶちっ!
薄い皮膜を破って、内側から肉色の物体がもりもり隆起してくるのだ。
血にまみれた太い蛇のようなものー。
節くれだったテッポウムシのようなその長い管は、明らかに中身をパンパンに詰め込んだ大腸だ。
大蛇が鎌首をもたげるように、蓮月の大腸が亀裂から頭部を持ち上げた。
そしてー。
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