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人形伏魔澱⑥
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躰が弾き飛ばされそうな#18衝撃が来た。
間一髪のところで、乙都の胸から射出された二本の触手が、”大口”の襲撃を食い止めたのだ。
先が”手”になった触手が、上下の唇をがっしり掴んだのである。
が、吸引は止みそうにない。
周囲の空気がすごい勢いで化け物の喉に吸い込まれていく。
乙都の髪がはためき、風に引っ張られて激しく頬を叩く。
ショートカットにしていてよかったと思う。
長いままだったら、今頃は髪の毛があの乱杭歯に引っかかって首が捩じ切れてしまうに違いない。
抵抗する乙都の顔を、化け物の口から伸び出た分厚い舌が、べろりと舐めてくる。
うえっ。
乙都はえずいた。
たまらなく、臭い。
顔中に汚物をぶっかけられたような、そんなとてつもない不快感にめまいがした。
おぞましい唾液をたっぷりまぶした肉厚の絨毯みたいな赤い舌が、乙都の顔を、胸を舐めまくる。
まずい。
えずきながら乙都は顔をしかめた。
このままでは呼吸困難に陥って、触手の力が緩んでしまう。
こんな防戦一方の戦い方では、とても勝ち目はない。
相手のほうが体力があるだろうことは、外観からして明らかだ。
舌が、はだけたナース服の前を割って、中に分け入ってくる。
そうして乙都のくびれた裸の腰に巻きつくと、今度は凄い力で締め上げ始めた。
「ぐっ」
乙都は上体を折って、うめいた。
苦しい。
今にも潰れそうなまでに、内臓が圧迫されている。
これでは、痛みが快感に転換される頃には、内臓破裂で瀕死の状態に陥ってしまうに違いない。
乙都が、口から白い泡を吹き始めた時だった。
「オト、ちょっとごめんね」
なぜか足元で、蓮月の声がした。
躰が浮き上がるような感覚とともに、乙都の両足が押し広げられ、間から蓮月が顔を出した。
後は一瞬だった。
乙都の股の間をすり抜けた蓮月がだしぬけに立ち上がり、両手に握ったハサミの刃を突き出した。
ぎゃうっ!
喉の奥に鋭利な刃を突き立てられ、怪物が絶叫した。
吸引力がゆるみ、乙都の躰に自由が戻った。
怪物の喉から緑色の体液が吹き出し、巨大な口を満たしていく。
ガクッ。
怪物の口が閉じ、その向こうに初めて本体が見えた。
瑞季女医の推測通りだった。
口にはホース状の長い首がついていて、ロボットのような円柱型の掃除機本体へとつながっている。
口だけが横長に異様に大きいが、あとは普通の業務用掃除機程度のサイズである。
「動けないように、押さえてて」
蓮月がそう言い残し、掃除機本体に向かって、軽々と跳躍した。
間一髪のところで、乙都の胸から射出された二本の触手が、”大口”の襲撃を食い止めたのだ。
先が”手”になった触手が、上下の唇をがっしり掴んだのである。
が、吸引は止みそうにない。
周囲の空気がすごい勢いで化け物の喉に吸い込まれていく。
乙都の髪がはためき、風に引っ張られて激しく頬を叩く。
ショートカットにしていてよかったと思う。
長いままだったら、今頃は髪の毛があの乱杭歯に引っかかって首が捩じ切れてしまうに違いない。
抵抗する乙都の顔を、化け物の口から伸び出た分厚い舌が、べろりと舐めてくる。
うえっ。
乙都はえずいた。
たまらなく、臭い。
顔中に汚物をぶっかけられたような、そんなとてつもない不快感にめまいがした。
おぞましい唾液をたっぷりまぶした肉厚の絨毯みたいな赤い舌が、乙都の顔を、胸を舐めまくる。
まずい。
えずきながら乙都は顔をしかめた。
このままでは呼吸困難に陥って、触手の力が緩んでしまう。
こんな防戦一方の戦い方では、とても勝ち目はない。
相手のほうが体力があるだろうことは、外観からして明らかだ。
舌が、はだけたナース服の前を割って、中に分け入ってくる。
そうして乙都のくびれた裸の腰に巻きつくと、今度は凄い力で締め上げ始めた。
「ぐっ」
乙都は上体を折って、うめいた。
苦しい。
今にも潰れそうなまでに、内臓が圧迫されている。
これでは、痛みが快感に転換される頃には、内臓破裂で瀕死の状態に陥ってしまうに違いない。
乙都が、口から白い泡を吹き始めた時だった。
「オト、ちょっとごめんね」
なぜか足元で、蓮月の声がした。
躰が浮き上がるような感覚とともに、乙都の両足が押し広げられ、間から蓮月が顔を出した。
後は一瞬だった。
乙都の股の間をすり抜けた蓮月がだしぬけに立ち上がり、両手に握ったハサミの刃を突き出した。
ぎゃうっ!
喉の奥に鋭利な刃を突き立てられ、怪物が絶叫した。
吸引力がゆるみ、乙都の躰に自由が戻った。
怪物の喉から緑色の体液が吹き出し、巨大な口を満たしていく。
ガクッ。
怪物の口が閉じ、その向こうに初めて本体が見えた。
瑞季女医の推測通りだった。
口にはホース状の長い首がついていて、ロボットのような円柱型の掃除機本体へとつながっている。
口だけが横長に異様に大きいが、あとは普通の業務用掃除機程度のサイズである。
「動けないように、押さえてて」
蓮月がそう言い残し、掃除機本体に向かって、軽々と跳躍した。
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