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#9 ギブ・アンド・テイクはイヤすぎる③
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貧乏は貧乏なりに、そこは花の女子高生である。
私の一週間はあわただしく過ぎ、やがて運命の次の週末がやってきた。
その朝、私は覚悟を決めて、鏡の前に立った。
まあ、下着の上から触らせるくらいなら。
改めて、自分にそう言い聞かせる。
なんせ、10万円のためなのだ。
別に、減るもんじゃあるまいし。
あまりダサい下着を身につけていって邦彦がへそを曲げるのも面倒なので、勝負パンツを穿くことにした。
ブラもいつものスポーツブラはやめ、パンツとセットのアダルトなデザインのにしてやった。
正午過ぎに邦彦の家に到着すると、家政婦のおばさんと教授が満面の笑みで私を迎えてくれた。
「いやあ、すごいよ、美咲ちゃん効果は」
私を居間の卓袱台の前に座らせると、勢い込んで教授が言った。
「あれからすぐにね、邦彦のやつが佐和さんに用事を頼んできたんだ」
「はあ」
「それがね、散髪してくれって言うんですよ。おまけに、部屋も綺麗に掃除してくれって」
家政婦のおばさん、つまり佐和さんが、教授の言葉に目を輝かせてうなずいた。
「邦彦が自分からものを頼んでくるなんて、こんなこと初めてだよ。しかも、他人を部屋に招き入れるなんてね」
教授も嬉しそうだ。
前金で1万円くらいくれそうな勢いである。
「やはり持つべきものは初恋の相手だね。いやはや、まさかこんなに早く効果が現れるとは思ってもみなかった」
初恋の相手?
聞き捨てならない言葉だが、面倒だから深くはつっこまないことにする。
「それであのう、10万円はやっぱり成功報酬ですか?」
もしやと思って訊いてみた。
ただ週に1回、邦彦の話し相手をするだけで貰えるなら、何もイチャイチャの真似事などしなくて済むからだ。
「ああ、そうだね。アルバイト代のこと、はっきりさせてなかったね」
教授が居住まいを正し、うなずいた。
「一応、君の言う通り、邦彦の引きこもりが治ったら10万ということで、どうだろう。その代わり、1か月続けてうまくいかなければ、手当として3万円支給しようと思う。もっと出してあげたいのは山々なんだが、昆虫学というのは、ぜんぜんお金にならなくてね」
うーん、やっぱり、月々10万というのは母の早とちりか。
まあいいや。でも、3万じゃ、ちと労力に合わない気がするから、ここはやっぱり、10万狙いといくしかない。
「わかりました。ただ、食事代は別ということで」
私もうなずいた。
「さっそくですが、今はちょうどお昼です。邦彦君と一緒に食べますから、お寿司でもとってくれませんか。できれば回らない店の、極上のを」
焼肉は報酬が手に入ったら食べるから、ここはやはり寿司だろう。
「わはは。相変わらずだな、美咲ちゃんは。いいよ、お安いご用だ。私と佐和さんもお昼はお寿司と洒落こむか」
にこにこ笑って、教授が言った。
私の一週間はあわただしく過ぎ、やがて運命の次の週末がやってきた。
その朝、私は覚悟を決めて、鏡の前に立った。
まあ、下着の上から触らせるくらいなら。
改めて、自分にそう言い聞かせる。
なんせ、10万円のためなのだ。
別に、減るもんじゃあるまいし。
あまりダサい下着を身につけていって邦彦がへそを曲げるのも面倒なので、勝負パンツを穿くことにした。
ブラもいつものスポーツブラはやめ、パンツとセットのアダルトなデザインのにしてやった。
正午過ぎに邦彦の家に到着すると、家政婦のおばさんと教授が満面の笑みで私を迎えてくれた。
「いやあ、すごいよ、美咲ちゃん効果は」
私を居間の卓袱台の前に座らせると、勢い込んで教授が言った。
「あれからすぐにね、邦彦のやつが佐和さんに用事を頼んできたんだ」
「はあ」
「それがね、散髪してくれって言うんですよ。おまけに、部屋も綺麗に掃除してくれって」
家政婦のおばさん、つまり佐和さんが、教授の言葉に目を輝かせてうなずいた。
「邦彦が自分からものを頼んでくるなんて、こんなこと初めてだよ。しかも、他人を部屋に招き入れるなんてね」
教授も嬉しそうだ。
前金で1万円くらいくれそうな勢いである。
「やはり持つべきものは初恋の相手だね。いやはや、まさかこんなに早く効果が現れるとは思ってもみなかった」
初恋の相手?
聞き捨てならない言葉だが、面倒だから深くはつっこまないことにする。
「それであのう、10万円はやっぱり成功報酬ですか?」
もしやと思って訊いてみた。
ただ週に1回、邦彦の話し相手をするだけで貰えるなら、何もイチャイチャの真似事などしなくて済むからだ。
「ああ、そうだね。アルバイト代のこと、はっきりさせてなかったね」
教授が居住まいを正し、うなずいた。
「一応、君の言う通り、邦彦の引きこもりが治ったら10万ということで、どうだろう。その代わり、1か月続けてうまくいかなければ、手当として3万円支給しようと思う。もっと出してあげたいのは山々なんだが、昆虫学というのは、ぜんぜんお金にならなくてね」
うーん、やっぱり、月々10万というのは母の早とちりか。
まあいいや。でも、3万じゃ、ちと労力に合わない気がするから、ここはやっぱり、10万狙いといくしかない。
「わかりました。ただ、食事代は別ということで」
私もうなずいた。
「さっそくですが、今はちょうどお昼です。邦彦君と一緒に食べますから、お寿司でもとってくれませんか。できれば回らない店の、極上のを」
焼肉は報酬が手に入ったら食べるから、ここはやはり寿司だろう。
「わはは。相変わらずだな、美咲ちゃんは。いいよ、お安いご用だ。私と佐和さんもお昼はお寿司と洒落こむか」
にこにこ笑って、教授が言った。
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