73 / 88
#73 史上最低の戦い⑦
しおりを挟む
「あれがエイリアンだとして…」
私はぴくぴく蠢いているその白い生き物たちを見た。
1匹1匹は人間の姿に似ている。
貧弱な2本の手と2本の足。
胴体ももやしみたいに細く、頭だけがやけに大きい。
顔は逆三角形で顎が尖っていて、鼻はなく、ナイフで入れた切れ目みたいな口と、少女漫画の主人公みたいな大きな目が2つ。
体長は10センチあるかないかといったところで、エイリアンにしては見るからに弱々しい生き物だ。
「どうして精液がかかってるんですか?」
「よくぞ聞いてくれた」
私の素朴な問いに、万城目教授がしゃしゃり出る。
「実はだな、ある偶然から、あのエイリアンたちの苦手とするものが、人間の精液だとわかったからじゃよ」
は?
私はまじまじと白ひげの老人を見返した。
精液が苦手な宇宙人?
そんな話、聞いたことないんですけど。
映画で言えば、間違いなくZ級のおバカ設定のグロSFである。
「もっとも、普通の人間の精液では、大して効果がないのだ。うちの研究員たち全員の精液で試してみたが、あの通り、動きを鈍らせるだけでせいいっぱいで、駆除するところまではいかなかった。全員、睾丸がカラカラになるまで射精させたのじゃが…」
そういうことか。
納得である。
廊下でへばっていた男たちは、別に変態ではなかったのだ。
教授の命令で、宇宙人相手に限界までオナニーさせられていたというわけだ。
「ということは、つまり…」
私の眼は、自然と足元に横たわる邦彦の股間に落ちた。
「そう。もっとも殺傷力の高いのは、邦彦君の精液なのじゃ。彼の精液なら、ひとしずくで百匹のエイリアンを駆除できる」
「百匹? って、いったいどんだけいるんですか? あの中に」
「推定1億匹。考えてもみたまえ。1億匹のエイリアンがあの卵巣から生まれ、成長したところを。ただでさえ狭い我が国じゃ。人口が一気に2倍近くなったら、大変なことになる。食料は枯渇し、住む家は足りなくなり、街には失業者があふれ、挙句の果ては日本は最低レベルの貧困国に陥落してしまうに違いない。なにしろ、1億人の難民を引き受けるようなものじゃからのう」
「だから殺すんですか? 邦彦の精液で」
「そうじゃ」
教授が重々しくうなずいた。
「これは自然淘汰の戦いなのじゃ。可哀想などと、虫のいいことは言っておれんのじゃよ。あれを駆除しなければ、滅ぶのは我々なのじゃ。わかるかな?」
#74 史上最低の戦い?
しかし、考えてみれば、バカバカしい話である。
人間の精液が苦手な宇宙人というのもマヌケなら、その宇宙人に精液をかけることを思いついたやつも相当のバカだろう。
その点がひっかかり、思い切ってたずねてみると、万城目教授の説明はざっとこんな感じだった。
きょうの夕方5時ごろのこと。
邦彦が部屋でオナニーに耽っていると、あろうことか、そこに突然空から宇宙船が突っ込んできたのだという。
やがて宇宙船からわらわらと宇宙人の幼体が孵化してきたのだが、絶頂に達しかけていた邦彦はオナニーを中断することができず、ひたすらペニスをしごき続けたあげく、襲ってきた宇宙人の群れに向けて大量のザーメンを放出してしまったというわけである。
「まったく、稀有な偶然が功を奏したというわけなのじゃが…彼の精液を浴びたエイリアンたちは、不思議なことにあっけなく死んでしまったのじゃ。一匹残らず、な。まだ分析中で答えは出ておらぬのだが、どうやら彼の精液には何か特殊な成分がふくまれているらしい」
万城目教授は、遠い眼をして髭をしごいている。
特殊な成分?
というより、邦彦は恐ろしく遅漏だから、金玉の中でただ精液が発酵してただけじゃないかと思うんだけど。
ともあれ、邦彦も邦彦だ。
未知の宇宙船が壁を突き破って部屋に墜落したってのに、なんでのんきにオナニーなんか続けてたわけ?
まったくもって、鈍感にもほどがある。
「でも、不思議ですよね…。邦彦、いったい何をずりネタにしてたんでしょうか? UFOの墜落にもまさるオカズなんて、ちょっと想像つかないんですけど」
首をかしげて更にたずねると、教授が倒れている邦彦の股の間からB5サイズのタブレットを拾い上げた。
「見るかね?」
私の返事も待たず、慣れた手つきで起動スイッチを押す。
明るくなった画面に現れた動画を見て、私はあっと声を上げた。
邦彦のやつ、いつのまにこんなものを…。
ベッドの上に裸の邦彦が仰向けになっている。
洗濯竿のように屹立したペニスに貫かれ、スク水姿の少女が足を広げてコマみたいに回転している。
回っているのは、もちろん、この私である。
「美咲君、これは君じゃないのかね」
万城目教授が、好色そうに相好を崩して私のテニスルックを見た。
なんだか、妙にうれしそうである。
「わしゃ、今年85歳じゃが、こんなアクロバティックな体位を見るのは、マジで生まれて初めてじゃよ」
私はぴくぴく蠢いているその白い生き物たちを見た。
1匹1匹は人間の姿に似ている。
貧弱な2本の手と2本の足。
胴体ももやしみたいに細く、頭だけがやけに大きい。
顔は逆三角形で顎が尖っていて、鼻はなく、ナイフで入れた切れ目みたいな口と、少女漫画の主人公みたいな大きな目が2つ。
体長は10センチあるかないかといったところで、エイリアンにしては見るからに弱々しい生き物だ。
「どうして精液がかかってるんですか?」
「よくぞ聞いてくれた」
私の素朴な問いに、万城目教授がしゃしゃり出る。
「実はだな、ある偶然から、あのエイリアンたちの苦手とするものが、人間の精液だとわかったからじゃよ」
は?
私はまじまじと白ひげの老人を見返した。
精液が苦手な宇宙人?
そんな話、聞いたことないんですけど。
映画で言えば、間違いなくZ級のおバカ設定のグロSFである。
「もっとも、普通の人間の精液では、大して効果がないのだ。うちの研究員たち全員の精液で試してみたが、あの通り、動きを鈍らせるだけでせいいっぱいで、駆除するところまではいかなかった。全員、睾丸がカラカラになるまで射精させたのじゃが…」
そういうことか。
納得である。
廊下でへばっていた男たちは、別に変態ではなかったのだ。
教授の命令で、宇宙人相手に限界までオナニーさせられていたというわけだ。
「ということは、つまり…」
私の眼は、自然と足元に横たわる邦彦の股間に落ちた。
「そう。もっとも殺傷力の高いのは、邦彦君の精液なのじゃ。彼の精液なら、ひとしずくで百匹のエイリアンを駆除できる」
「百匹? って、いったいどんだけいるんですか? あの中に」
「推定1億匹。考えてもみたまえ。1億匹のエイリアンがあの卵巣から生まれ、成長したところを。ただでさえ狭い我が国じゃ。人口が一気に2倍近くなったら、大変なことになる。食料は枯渇し、住む家は足りなくなり、街には失業者があふれ、挙句の果ては日本は最低レベルの貧困国に陥落してしまうに違いない。なにしろ、1億人の難民を引き受けるようなものじゃからのう」
「だから殺すんですか? 邦彦の精液で」
「そうじゃ」
教授が重々しくうなずいた。
「これは自然淘汰の戦いなのじゃ。可哀想などと、虫のいいことは言っておれんのじゃよ。あれを駆除しなければ、滅ぶのは我々なのじゃ。わかるかな?」
#74 史上最低の戦い?
しかし、考えてみれば、バカバカしい話である。
人間の精液が苦手な宇宙人というのもマヌケなら、その宇宙人に精液をかけることを思いついたやつも相当のバカだろう。
その点がひっかかり、思い切ってたずねてみると、万城目教授の説明はざっとこんな感じだった。
きょうの夕方5時ごろのこと。
邦彦が部屋でオナニーに耽っていると、あろうことか、そこに突然空から宇宙船が突っ込んできたのだという。
やがて宇宙船からわらわらと宇宙人の幼体が孵化してきたのだが、絶頂に達しかけていた邦彦はオナニーを中断することができず、ひたすらペニスをしごき続けたあげく、襲ってきた宇宙人の群れに向けて大量のザーメンを放出してしまったというわけである。
「まったく、稀有な偶然が功を奏したというわけなのじゃが…彼の精液を浴びたエイリアンたちは、不思議なことにあっけなく死んでしまったのじゃ。一匹残らず、な。まだ分析中で答えは出ておらぬのだが、どうやら彼の精液には何か特殊な成分がふくまれているらしい」
万城目教授は、遠い眼をして髭をしごいている。
特殊な成分?
というより、邦彦は恐ろしく遅漏だから、金玉の中でただ精液が発酵してただけじゃないかと思うんだけど。
ともあれ、邦彦も邦彦だ。
未知の宇宙船が壁を突き破って部屋に墜落したってのに、なんでのんきにオナニーなんか続けてたわけ?
まったくもって、鈍感にもほどがある。
「でも、不思議ですよね…。邦彦、いったい何をずりネタにしてたんでしょうか? UFOの墜落にもまさるオカズなんて、ちょっと想像つかないんですけど」
首をかしげて更にたずねると、教授が倒れている邦彦の股の間からB5サイズのタブレットを拾い上げた。
「見るかね?」
私の返事も待たず、慣れた手つきで起動スイッチを押す。
明るくなった画面に現れた動画を見て、私はあっと声を上げた。
邦彦のやつ、いつのまにこんなものを…。
ベッドの上に裸の邦彦が仰向けになっている。
洗濯竿のように屹立したペニスに貫かれ、スク水姿の少女が足を広げてコマみたいに回転している。
回っているのは、もちろん、この私である。
「美咲君、これは君じゃないのかね」
万城目教授が、好色そうに相好を崩して私のテニスルックを見た。
なんだか、妙にうれしそうである。
「わしゃ、今年85歳じゃが、こんなアクロバティックな体位を見るのは、マジで生まれて初めてじゃよ」
10
あなたにおすすめの小説
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる