引きこもりの従兄を更生させるはずが、逆に”女”にさせられちゃいましたとさ! てへっ

戸影絵麻

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#73 史上最低の戦い⑦

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「あれがエイリアンだとして…」

 私はぴくぴく蠢いているその白い生き物たちを見た。

 1匹1匹は人間の姿に似ている。

 貧弱な2本の手と2本の足。

 胴体ももやしみたいに細く、頭だけがやけに大きい。

 顔は逆三角形で顎が尖っていて、鼻はなく、ナイフで入れた切れ目みたいな口と、少女漫画の主人公みたいな大きな目が2つ。

 体長は10センチあるかないかといったところで、エイリアンにしては見るからに弱々しい生き物だ。

「どうして精液がかかってるんですか?」

「よくぞ聞いてくれた」

 私の素朴な問いに、万城目教授がしゃしゃり出る。

「実はだな、ある偶然から、あのエイリアンたちの苦手とするものが、人間の精液だとわかったからじゃよ」

 は?

 私はまじまじと白ひげの老人を見返した。

 精液が苦手な宇宙人?

 そんな話、聞いたことないんですけど。

 映画で言えば、間違いなくZ級のおバカ設定のグロSFである。

「もっとも、普通の人間の精液では、大して効果がないのだ。うちの研究員たち全員の精液で試してみたが、あの通り、動きを鈍らせるだけでせいいっぱいで、駆除するところまではいかなかった。全員、睾丸がカラカラになるまで射精させたのじゃが…」

 そういうことか。

 納得である。

 廊下でへばっていた男たちは、別に変態ではなかったのだ。

 教授の命令で、宇宙人相手に限界までオナニーさせられていたというわけだ。

「ということは、つまり…」

 私の眼は、自然と足元に横たわる邦彦の股間に落ちた。

「そう。もっとも殺傷力の高いのは、邦彦君の精液なのじゃ。彼の精液なら、ひとしずくで百匹のエイリアンを駆除できる」

「百匹? って、いったいどんだけいるんですか? あの中に」

「推定1億匹。考えてもみたまえ。1億匹のエイリアンがあの卵巣から生まれ、成長したところを。ただでさえ狭い我が国じゃ。人口が一気に2倍近くなったら、大変なことになる。食料は枯渇し、住む家は足りなくなり、街には失業者があふれ、挙句の果ては日本は最低レベルの貧困国に陥落してしまうに違いない。なにしろ、1億人の難民を引き受けるようなものじゃからのう」

「だから殺すんですか? 邦彦の精液で」

「そうじゃ」

 教授が重々しくうなずいた。

「これは自然淘汰の戦いなのじゃ。可哀想などと、虫のいいことは言っておれんのじゃよ。あれを駆除しなければ、滅ぶのは我々なのじゃ。わかるかな?」


#74 史上最低の戦い?
 しかし、考えてみれば、バカバカしい話である。

 人間の精液が苦手な宇宙人というのもマヌケなら、その宇宙人に精液をかけることを思いついたやつも相当のバカだろう。

 その点がひっかかり、思い切ってたずねてみると、万城目教授の説明はざっとこんな感じだった。

 きょうの夕方5時ごろのこと。

 邦彦が部屋でオナニーに耽っていると、あろうことか、そこに突然空から宇宙船が突っ込んできたのだという。

 やがて宇宙船からわらわらと宇宙人の幼体が孵化してきたのだが、絶頂に達しかけていた邦彦はオナニーを中断することができず、ひたすらペニスをしごき続けたあげく、襲ってきた宇宙人の群れに向けて大量のザーメンを放出してしまったというわけである。

「まったく、稀有な偶然が功を奏したというわけなのじゃが…彼の精液を浴びたエイリアンたちは、不思議なことにあっけなく死んでしまったのじゃ。一匹残らず、な。まだ分析中で答えは出ておらぬのだが、どうやら彼の精液には何か特殊な成分がふくまれているらしい」

 万城目教授は、遠い眼をして髭をしごいている。

 特殊な成分?

 というより、邦彦は恐ろしく遅漏だから、金玉の中でただ精液が発酵してただけじゃないかと思うんだけど。

 ともあれ、邦彦も邦彦だ。

 未知の宇宙船が壁を突き破って部屋に墜落したってのに、なんでのんきにオナニーなんか続けてたわけ?

 まったくもって、鈍感にもほどがある。

「でも、不思議ですよね…。邦彦、いったい何をずりネタにしてたんでしょうか? UFOの墜落にもまさるオカズなんて、ちょっと想像つかないんですけど」

 首をかしげて更にたずねると、教授が倒れている邦彦の股の間からB5サイズのタブレットを拾い上げた。

「見るかね?」

 私の返事も待たず、慣れた手つきで起動スイッチを押す。
 
 明るくなった画面に現れた動画を見て、私はあっと声を上げた。

 邦彦のやつ、いつのまにこんなものを…。

 ベッドの上に裸の邦彦が仰向けになっている。

 洗濯竿のように屹立したペニスに貫かれ、スク水姿の少女が足を広げてコマみたいに回転している。

 回っているのは、もちろん、この私である。

「美咲君、これは君じゃないのかね」

 万城目教授が、好色そうに相好を崩して私のテニスルックを見た。

 なんだか、妙にうれしそうである。

「わしゃ、今年85歳じゃが、こんなアクロバティックな体位を見るのは、マジで生まれて初めてじゃよ」

 
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