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第3章 阿修羅王
#6 アンアン、眉をひそめる
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授業後。
校門で待っていた阿修羅と合流し、僕らはバスで一ノ瀬のいうスーパーに向かった。
美少女ふたりにはさまれた一ノ瀬は、道中、至極ご満悦で、始終ニヤニヤ笑いを顔に貼りつかせ、しきりにふたりに話しかけていた。
だが、アンアンはいつものように完全シカトだし、阿修羅は阿修羅で、そうだねーとか、まあねーとか、いかにもどうでもよさそうな生返事を返すだけだった。
僕はアンアンの隣に立ち、一ノ瀬を適当にあしらう阿修羅の横顔を盗み見た。
こいつ、いったい何を考えているのだ、と思う。
アンアンの言葉が正しければ、この少女は魔界からやってきた5番目の花婿候補なのだ。
まだ自分の番が回ってこないのに、アンアンにくっついて何をするともりなのだろう。
10分ほどでバスは目的地に到着し、うざい一ノ瀬から逃げるように、まず少女ふたりがタラップを飛び降りた。
「変だな」
アンアンが鼻をひくつかせたのは、バス停に僕らを残して、バスが走り去った時のことである。
「夕方なのに、誰もいない」
アンアンの言う通りだった。
この時間帯なら、下校中の小中学生、あるいは買い物に行く主婦など、人出が多くてしかるべきはずである。
なのに、町はどの路地もがらんとして、猫の子一匹見当たらないのだ。
「たまたまだと思うよ。あ、問題のスーパーは、そのガソリンスタンドの角を曲がったとこ」
一ノ瀬が言い、先に立って歩き出す。
人気のない無人のガソリンスタンドの敷地を斜めに横断して、少し広い通りに出た。
なるほど、斜め前に、『モンモンマート』なる看板が。
「ふーん」
車が一台も走っていない道路を渡りながら、阿修羅が言った。
「アンアンの言う通りだねえ。この町、なんだかすっごく変」
「あんまり縁起でもないこと、言わないでくれる? 俺ん家、ここから歩いて2分なんだけど」
さすがに少し気味が悪くなったのか、情けなさそうな顔で一ノ瀬がぼやいた。
「ストップ」
アンアンが手を広げて僕らを止めたのは、道路を渡り切った時だった。
「見ろ」
顎でしゃくってみせたのは、モンモンマートの入口である。
「ほら、ちゃんとみんないるじゃないか! って、あれ?」
一ノ瀬のはしゃいだ声が、途中からフェイドアウトする。
同時に僕も気づいていた。
店の入口から人が溢れかえっている。
ガラスの壁越しに、中にもいっぱいいるのがわかる。
異様なのは、その客たちの様子だった。
お互いにつかみ合い、噛みつき合っているのだ。
「ひょっとしてあれ、全部ゾンビなんじゃ?」
僕がつぶやくと、アンアンがきっぱりとうなずいた。
「ああ。間違いない。手遅れだった。この町はすでに感染されている」
校門で待っていた阿修羅と合流し、僕らはバスで一ノ瀬のいうスーパーに向かった。
美少女ふたりにはさまれた一ノ瀬は、道中、至極ご満悦で、始終ニヤニヤ笑いを顔に貼りつかせ、しきりにふたりに話しかけていた。
だが、アンアンはいつものように完全シカトだし、阿修羅は阿修羅で、そうだねーとか、まあねーとか、いかにもどうでもよさそうな生返事を返すだけだった。
僕はアンアンの隣に立ち、一ノ瀬を適当にあしらう阿修羅の横顔を盗み見た。
こいつ、いったい何を考えているのだ、と思う。
アンアンの言葉が正しければ、この少女は魔界からやってきた5番目の花婿候補なのだ。
まだ自分の番が回ってこないのに、アンアンにくっついて何をするともりなのだろう。
10分ほどでバスは目的地に到着し、うざい一ノ瀬から逃げるように、まず少女ふたりがタラップを飛び降りた。
「変だな」
アンアンが鼻をひくつかせたのは、バス停に僕らを残して、バスが走り去った時のことである。
「夕方なのに、誰もいない」
アンアンの言う通りだった。
この時間帯なら、下校中の小中学生、あるいは買い物に行く主婦など、人出が多くてしかるべきはずである。
なのに、町はどの路地もがらんとして、猫の子一匹見当たらないのだ。
「たまたまだと思うよ。あ、問題のスーパーは、そのガソリンスタンドの角を曲がったとこ」
一ノ瀬が言い、先に立って歩き出す。
人気のない無人のガソリンスタンドの敷地を斜めに横断して、少し広い通りに出た。
なるほど、斜め前に、『モンモンマート』なる看板が。
「ふーん」
車が一台も走っていない道路を渡りながら、阿修羅が言った。
「アンアンの言う通りだねえ。この町、なんだかすっごく変」
「あんまり縁起でもないこと、言わないでくれる? 俺ん家、ここから歩いて2分なんだけど」
さすがに少し気味が悪くなったのか、情けなさそうな顔で一ノ瀬がぼやいた。
「ストップ」
アンアンが手を広げて僕らを止めたのは、道路を渡り切った時だった。
「見ろ」
顎でしゃくってみせたのは、モンモンマートの入口である。
「ほら、ちゃんとみんないるじゃないか! って、あれ?」
一ノ瀬のはしゃいだ声が、途中からフェイドアウトする。
同時に僕も気づいていた。
店の入口から人が溢れかえっている。
ガラスの壁越しに、中にもいっぱいいるのがわかる。
異様なのは、その客たちの様子だった。
お互いにつかみ合い、噛みつき合っているのだ。
「ひょっとしてあれ、全部ゾンビなんじゃ?」
僕がつぶやくと、アンアンがきっぱりとうなずいた。
「ああ。間違いない。手遅れだった。この町はすでに感染されている」
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