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第6章 アンアン魔界行
#34 アンアンのいない夜②
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空中から僕らを見下ろす、純和風の熟女の顔。
が、よく見るとそれは宙に浮いているのではなく、肌色のホースみたいな長い首につながっていた。
首はゆるやかな弧を描き、開いた玄関の中に消えている。
おっかなびっくりのぞきこむと、上がり框には和服を着た女性の身体が正座していて、首はそこから伸びているのだった。
「ろくろ首…?」
一ノ瀬が、信じられないものを見た、という表情でうめく。
「わあ、すごおい。本物のろくろ首なんて、玉、初めてですぅ」
何事にも動じないアンドロイド玉が、手を打って喜んだ。
「ようこそ、おこしやす。それにしても、せっかくのお客さんだというのに、うちの宿六ときたら、どこへ行ってそもうたんやろか」
「宿六?」
阿修羅が訊くと、
「へえ。さっきまでそこで、あずきを洗ってましたのや」
ふらふら周囲を見回して、女将が答えた。
なるほど。
どうやら、あのシャイな小豆洗いがこの店の主人ということらしい。
「ああ、あの人が…。ご主人なら、なんだか恥ずかしそうに裏の方に逃げていきましたけど」
「すんませんねえ。うちの人、超がつくほど人見知りなもので」
「それより、お部屋を借りたいんだけど。4人同室でかまわないから」
「お部屋ならいっくらでも空いてます。なにも男女同室でなくても」
「いえ、ひとつでいいです。いざという時別々だと、色々面倒だから」
阿修羅の言う”いざという時”の意味がわからないが、男女同室というのはなかなか刺激的な提案である。
玉はどうでもいいが、スーパー美少女の阿修羅と一緒とは、相当スリリングな体験ではないか。
ここにアンアンがいないのが残念でならないが、うまくいけば阿修羅の生着替えや寝顔を拝めるかもしれないのだ。
そんな罰当たりなことを考えていると、思うところは同じらしく、一ノ瀬の鼻の下も5センチ以上伸びていた。
「ようござんす。では、こちらに」
ろくろ首に先導されて案内されたのは、2階の大広間だった。
僕はふと、中学校の修学旅行で泊まった旅館の部屋を思い出した。
あの時はむさくるしい男8人の雑魚寝だったのだが、今回は違う。
人数も半分だし、玉も一応勘定に入れれば、うちふたりは女である。
まさに極楽というべきであろう。
「お夕食の前に、お風呂でもどうですか?」
4人分の湯呑にお茶を注ぎながら、はんなりした口調で女将が言った。
「こうみえてもこの池田屋、草津からお湯を引いておりますのよ。れっきとしたかけ流しの源泉ですさかい、お肌もきれいになりますし、疲労回復にもあんじょう効きますのや」
「草津って、あの滋賀県の?」
一ノ瀬があんぐりと口を開けた。
「さようどす。人間界の草津温泉どす」
なんと、温泉まで。
僕は魔界の住人たちのたくましさに、舌を巻く思いだった。
が、よく見るとそれは宙に浮いているのではなく、肌色のホースみたいな長い首につながっていた。
首はゆるやかな弧を描き、開いた玄関の中に消えている。
おっかなびっくりのぞきこむと、上がり框には和服を着た女性の身体が正座していて、首はそこから伸びているのだった。
「ろくろ首…?」
一ノ瀬が、信じられないものを見た、という表情でうめく。
「わあ、すごおい。本物のろくろ首なんて、玉、初めてですぅ」
何事にも動じないアンドロイド玉が、手を打って喜んだ。
「ようこそ、おこしやす。それにしても、せっかくのお客さんだというのに、うちの宿六ときたら、どこへ行ってそもうたんやろか」
「宿六?」
阿修羅が訊くと、
「へえ。さっきまでそこで、あずきを洗ってましたのや」
ふらふら周囲を見回して、女将が答えた。
なるほど。
どうやら、あのシャイな小豆洗いがこの店の主人ということらしい。
「ああ、あの人が…。ご主人なら、なんだか恥ずかしそうに裏の方に逃げていきましたけど」
「すんませんねえ。うちの人、超がつくほど人見知りなもので」
「それより、お部屋を借りたいんだけど。4人同室でかまわないから」
「お部屋ならいっくらでも空いてます。なにも男女同室でなくても」
「いえ、ひとつでいいです。いざという時別々だと、色々面倒だから」
阿修羅の言う”いざという時”の意味がわからないが、男女同室というのはなかなか刺激的な提案である。
玉はどうでもいいが、スーパー美少女の阿修羅と一緒とは、相当スリリングな体験ではないか。
ここにアンアンがいないのが残念でならないが、うまくいけば阿修羅の生着替えや寝顔を拝めるかもしれないのだ。
そんな罰当たりなことを考えていると、思うところは同じらしく、一ノ瀬の鼻の下も5センチ以上伸びていた。
「ようござんす。では、こちらに」
ろくろ首に先導されて案内されたのは、2階の大広間だった。
僕はふと、中学校の修学旅行で泊まった旅館の部屋を思い出した。
あの時はむさくるしい男8人の雑魚寝だったのだが、今回は違う。
人数も半分だし、玉も一応勘定に入れれば、うちふたりは女である。
まさに極楽というべきであろう。
「お夕食の前に、お風呂でもどうですか?」
4人分の湯呑にお茶を注ぎながら、はんなりした口調で女将が言った。
「こうみえてもこの池田屋、草津からお湯を引いておりますのよ。れっきとしたかけ流しの源泉ですさかい、お肌もきれいになりますし、疲労回復にもあんじょう効きますのや」
「草津って、あの滋賀県の?」
一ノ瀬があんぐりと口を開けた。
「さようどす。人間界の草津温泉どす」
なんと、温泉まで。
僕は魔界の住人たちのたくましさに、舌を巻く思いだった。
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