サイコパスハンター零

戸影絵麻

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第6章 となりはだあれ?

#16 魔獣狩り④

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「でも、いったい何が起こったっていうんですか? 朝の通勤時間なら、車内は満員だったはずですよね」

 零が隣の車両に消えるのを見届けると、杏里は鑑識課員にたずねた。

「それがよくわからないんですよ。今、山田巡査長が駅長室に目撃者を集めてますから、詳しくはそこでお聞きになったほうがよいかと」

「目撃者がいるんですか?」

 杏里は目をしばたたいた。

 ならば、犯人を見た者もいるのでは?

「目撃者どころか、容疑者もいるみたいですよ。なんせ、狭い車内ですからね」

「容疑者も?」

 これは大変なことだ。

 こんな残虐な殺人を犯した者が、乗客たちとひとつ部屋の中にいるだなんて。

「列車の中には何もいない」

 そこに零が戻ってきた。

「容疑者なら、駅長室にいるそうよ」

 杏里は、興奮で早口になった。

「山田刑事が見張ってる。早く行かなきゃ」

「容疑者?」

 零の眉間にしわが寄る。

「これはどうみても人間の仕業じゃないだろう」

「とにかく、急ぐぞ。山田まで食われちゃたまらない」

 イラついた口調で、韮崎がせかした。

 煙草が吸いたくてたまらないのだろう。

 その険しい横顔を横目で見て、杏里は思った。
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