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第1章 黄泉の国から来た少女
#17 杏里、気がつく
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翌4月18日の朝。
県警本部は、駆けつけた刑事たちで大賑わいだった。
玄関脇には、『連続女性切り裂き魔事件』の大きな立て看板が立てられている。
ゆうべ杏里が夜通し書いていた作品がこれである。
帳場の立て看板は、事件のあった所轄署の職員が作成するのが通例なのだ。
100人収容の1階ホールはすでに半分ほど埋まっていて、仲間の姿を見つけるのに苦労した。
杏里にとって、合同捜査会議は初めての経験だ。
出席してまず痛感したのは、女性刑事がいかに少ないかという事実だった。
外見からしてすぐに女とわかる者は、正直杏里ひとりしかいないのだ。
その分杏里は目立ちまくっていた。
スーツで隠していても、張り出した胸と尻は否が応でも男たちの目を引いてしまう。
出席者が異様に多いのは、県警本部、照和署、中署以外からも、たくさんの刑事たちが応援に駆けつけているからに違いない。
執拗な視線に曝されながら韮崎の隣に身を縮こまらせて腰かけると、
「おまえに発表させようと思ってたんだが、この様子じゃ、やめといたほうが無難だな」
周囲を見渡して、韮崎が言った。
「下手におまえが出ていくと、盛りのついたケダモノどもが、それこそ暴動を起こしかねない」
「変な事言わないでくださいよ。周りに聞こえちゃいますって」
杏里が肩をすくめた時、中署の刑事の司会で、合同捜査会議が始まった。
ホワイトボードにプロジェクターで次々に事件関連の写真や画像が映しだされていく。
それを前に、中署の刑事と照和署の三上が交互に解説を進めていく。
死体の写真と、防犯カメラの画像には、さすがに会場全体がどよめいた。
そしてあのアジトの写真。
祭壇と、羊皮紙に血で描かれたウロボロスの蛇。
「犯行現場からどうやって逃げ出したのかなど、不明点は依然として多いですが、犯人はこの防犯カメラの男と見て、まず間違いないと思います。男は我々の目の前で、猫が洞池に身を投げて逃走しました。おそらく取水口から天白川に出たのではないかと…」
三上が慣れた調子でよどみなく説明している。
知っていることばかりなので、杏里は中署から回ってきた報告書のほうに集中することにした。
ふたりの犠牲者の共通点は何なのか。
それが気になってならなかった。
「ですから、捜査員を天白川沿いに投入して一斉に聞き込みすれば、必ずや犯人の足取りがつかめるのではないかと…」
三上の耳に心地よい声をBGM代わりに聴きながら、報告書をめくっていく。
杏里が手を止めたのは、鬼頭千佳の詳細なプロフィールの載ったページだった。
おととい自分がつくった照和署の報告書を横に並べ、三浦文代のプロフィールのページと比べてみる。
出身高校は、違っていた。
中学校も、違う。
小学校は、どうだろう。
三浦文代は、岐阜県加茂郡白川町の、白川第2小学校。
鬼頭千佳は…あれ?
同じだ。
本籍地に目を通す。
鬼頭千佳の本籍は、那古野市。
でも、戸籍では養子になっている。
だからか。
杏里は胸の中で手を打った。
鬼頭千佳の通っていたのは、白川第2小学校。
鬼頭千佳は、小学生の頃まで岐阜に住んでいたのだ。
その後、両親に不幸があったか何かで、那古野市の親類の元に引き取られた。
大方そんなところではないのか。
事件の鍵は、ふたりの小学校時代にある。
ほかに接点がない以上、これはほぼ確実だろう。
「ニラさん、ニラさん」
杏里は小声で隣の韮崎のわき腹をつついた。
「何だ? 会議中だぞ」
いつものように、仏頂面でじろりと睨んでくる韮崎。
「私、わかっちゃったんですよ。ふたりの共通点」
ニカっと笑って、杏里は言った。
県警本部は、駆けつけた刑事たちで大賑わいだった。
玄関脇には、『連続女性切り裂き魔事件』の大きな立て看板が立てられている。
ゆうべ杏里が夜通し書いていた作品がこれである。
帳場の立て看板は、事件のあった所轄署の職員が作成するのが通例なのだ。
100人収容の1階ホールはすでに半分ほど埋まっていて、仲間の姿を見つけるのに苦労した。
杏里にとって、合同捜査会議は初めての経験だ。
出席してまず痛感したのは、女性刑事がいかに少ないかという事実だった。
外見からしてすぐに女とわかる者は、正直杏里ひとりしかいないのだ。
その分杏里は目立ちまくっていた。
スーツで隠していても、張り出した胸と尻は否が応でも男たちの目を引いてしまう。
出席者が異様に多いのは、県警本部、照和署、中署以外からも、たくさんの刑事たちが応援に駆けつけているからに違いない。
執拗な視線に曝されながら韮崎の隣に身を縮こまらせて腰かけると、
「おまえに発表させようと思ってたんだが、この様子じゃ、やめといたほうが無難だな」
周囲を見渡して、韮崎が言った。
「下手におまえが出ていくと、盛りのついたケダモノどもが、それこそ暴動を起こしかねない」
「変な事言わないでくださいよ。周りに聞こえちゃいますって」
杏里が肩をすくめた時、中署の刑事の司会で、合同捜査会議が始まった。
ホワイトボードにプロジェクターで次々に事件関連の写真や画像が映しだされていく。
それを前に、中署の刑事と照和署の三上が交互に解説を進めていく。
死体の写真と、防犯カメラの画像には、さすがに会場全体がどよめいた。
そしてあのアジトの写真。
祭壇と、羊皮紙に血で描かれたウロボロスの蛇。
「犯行現場からどうやって逃げ出したのかなど、不明点は依然として多いですが、犯人はこの防犯カメラの男と見て、まず間違いないと思います。男は我々の目の前で、猫が洞池に身を投げて逃走しました。おそらく取水口から天白川に出たのではないかと…」
三上が慣れた調子でよどみなく説明している。
知っていることばかりなので、杏里は中署から回ってきた報告書のほうに集中することにした。
ふたりの犠牲者の共通点は何なのか。
それが気になってならなかった。
「ですから、捜査員を天白川沿いに投入して一斉に聞き込みすれば、必ずや犯人の足取りがつかめるのではないかと…」
三上の耳に心地よい声をBGM代わりに聴きながら、報告書をめくっていく。
杏里が手を止めたのは、鬼頭千佳の詳細なプロフィールの載ったページだった。
おととい自分がつくった照和署の報告書を横に並べ、三浦文代のプロフィールのページと比べてみる。
出身高校は、違っていた。
中学校も、違う。
小学校は、どうだろう。
三浦文代は、岐阜県加茂郡白川町の、白川第2小学校。
鬼頭千佳は…あれ?
同じだ。
本籍地に目を通す。
鬼頭千佳の本籍は、那古野市。
でも、戸籍では養子になっている。
だからか。
杏里は胸の中で手を打った。
鬼頭千佳の通っていたのは、白川第2小学校。
鬼頭千佳は、小学生の頃まで岐阜に住んでいたのだ。
その後、両親に不幸があったか何かで、那古野市の親類の元に引き取られた。
大方そんなところではないのか。
事件の鍵は、ふたりの小学校時代にある。
ほかに接点がない以上、これはほぼ確実だろう。
「ニラさん、ニラさん」
杏里は小声で隣の韮崎のわき腹をつついた。
「何だ? 会議中だぞ」
いつものように、仏頂面でじろりと睨んでくる韮崎。
「私、わかっちゃったんですよ。ふたりの共通点」
ニカっと笑って、杏里は言った。
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