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第5章 百合はまだ世界を知らない
#14 杏里と死体安置室⑤
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豪邸にふさわしく、倉田宅の玄関には、監視カメラが設置されていた。
ヤチカたちがその画像を分析した結果わかったのが、今署長が口にした内容である。
監視カメラに映らぬ犯人。
ある意味、これも一種の密室だ。
駆け出しの頃の杏里なら、その事実にはひどく驚いたかもしれない。
だが、数々の奇怪な事件に遭遇してきた今となっては、もはやそんなことはない。
可能性はいくつもあるのだ。
犯人が透明人間だとしても、別に驚かない。
外道が相手なら、どんな可能性だってありえるからだ。
それより問題は、被害者の内臓の行方である。
杏里には、それが気になってならない。
これが、この前の”ウロボロス事件”の再現であるならば、必ずや次の被害者が出るに違いないからだ。
杏里が報告を終えると、県警の警部補の指示の下、係が決められ、刑事たちは我先にと会議室を出て行った。
「笹原君、ちょっといいかね」
残された杏里にそう声をかけてきたのは、ポマードで頭を塗り固めた、郷田警部である。
「何か?」
韮崎を捕まえようと部屋を出かけていた杏里は、どんよりした気分で振り向いた。
「いくら君が囮捜査官だとはいえ、その格好は規律違反だと思うが」
杏里はまだブラウスの上にブラジャーを締めている。
中身の偉大さを連想させるGカップの特大ブラだ。
郷田は蛇のような眼で、そんな杏里の身体を舐めるように見回している。
「こっちに来たまえ。私が刑事の規律というものを教えてやる」
郷田が杏里をつれて行こうとしているのは、取り調べ室に付随した小部屋らしい。
尋問されている容疑者の様子をマジックミラーで観察できるようになっている、刑事ドラマでおなじみの薄暗いあの部屋だ。
その魂胆は明らかだった。
説諭と称してセクハラ三昧。
それがこの男の常套手段と聞いている。
「あ、すみません。私、急いでるんで」
伸びてきた郷田の手を払いのけ、杏里は廊下に飛び出した。
玄関まで走ると、外の植え込みのところで、煙草をくわえた韮崎が待っていた。
「遅えな」
今日3度目の台詞である。
「すけべオヤジがうざくて」
杏里は頬をふくらませた。
「郷田か」
肩をすくめる韮崎。
「それよりニラさん」
勢い込んで杏里は言った。
「ひとつ、お願いがあるんです。零から頼まれたんですけど」
「おう、あの姉ちゃん、その気になってくれたのか」
韮崎の目が輝いた。
前回のウロボロス事件の際、韮崎と零は何度も顔を合わせている。
だから、韮崎は彼女の能力の一端を知っている。
「ええ。それで、彼女に死体を見せてやってほしいんです。今回の事件の被害者の」
杏里の言葉に、たちまち韮崎は渋面になった。
「けっ、また厄介なことを。まあ、でも、担当がヤチカなら、なんとかなるか」
ヤチカたちがその画像を分析した結果わかったのが、今署長が口にした内容である。
監視カメラに映らぬ犯人。
ある意味、これも一種の密室だ。
駆け出しの頃の杏里なら、その事実にはひどく驚いたかもしれない。
だが、数々の奇怪な事件に遭遇してきた今となっては、もはやそんなことはない。
可能性はいくつもあるのだ。
犯人が透明人間だとしても、別に驚かない。
外道が相手なら、どんな可能性だってありえるからだ。
それより問題は、被害者の内臓の行方である。
杏里には、それが気になってならない。
これが、この前の”ウロボロス事件”の再現であるならば、必ずや次の被害者が出るに違いないからだ。
杏里が報告を終えると、県警の警部補の指示の下、係が決められ、刑事たちは我先にと会議室を出て行った。
「笹原君、ちょっといいかね」
残された杏里にそう声をかけてきたのは、ポマードで頭を塗り固めた、郷田警部である。
「何か?」
韮崎を捕まえようと部屋を出かけていた杏里は、どんよりした気分で振り向いた。
「いくら君が囮捜査官だとはいえ、その格好は規律違反だと思うが」
杏里はまだブラウスの上にブラジャーを締めている。
中身の偉大さを連想させるGカップの特大ブラだ。
郷田は蛇のような眼で、そんな杏里の身体を舐めるように見回している。
「こっちに来たまえ。私が刑事の規律というものを教えてやる」
郷田が杏里をつれて行こうとしているのは、取り調べ室に付随した小部屋らしい。
尋問されている容疑者の様子をマジックミラーで観察できるようになっている、刑事ドラマでおなじみの薄暗いあの部屋だ。
その魂胆は明らかだった。
説諭と称してセクハラ三昧。
それがこの男の常套手段と聞いている。
「あ、すみません。私、急いでるんで」
伸びてきた郷田の手を払いのけ、杏里は廊下に飛び出した。
玄関まで走ると、外の植え込みのところで、煙草をくわえた韮崎が待っていた。
「遅えな」
今日3度目の台詞である。
「すけべオヤジがうざくて」
杏里は頬をふくらませた。
「郷田か」
肩をすくめる韮崎。
「それよりニラさん」
勢い込んで杏里は言った。
「ひとつ、お願いがあるんです。零から頼まれたんですけど」
「おう、あの姉ちゃん、その気になってくれたのか」
韮崎の目が輝いた。
前回のウロボロス事件の際、韮崎と零は何度も顔を合わせている。
だから、韮崎は彼女の能力の一端を知っている。
「ええ。それで、彼女に死体を見せてやってほしいんです。今回の事件の被害者の」
杏里の言葉に、たちまち韮崎は渋面になった。
「けっ、また厄介なことを。まあ、でも、担当がヤチカなら、なんとかなるか」
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