激甚のタナトス ~世界でおまえが生きる意味について~【覚醒編】

戸影絵麻

文字の大きさ
51 / 58
第3部 凶愛のエロス

#10 粉砕

しおりを挟む
 少女の左の眼窩から、眼球が飛び出しそうになっている。
 頭蓋がトラックの重みで押し潰されかけているのだ。
 黒野零は、ふと股間をまさぐる手を止めた。
 タナトスは、脳をやられると、死ぬ。
 それを思い出したのだった。
 -私は、"死"を見たいわけではない。
 ここで大事な玩具を台無しにしてしまうのは、得策ではなかった。
 己の体液で濡れた右手を、トラックの車体の下に差し入れた。
 フレームを持ち、軽くぐいと上に押し上げる。
 トラックの車体が傾き、少女にかかる重圧が軽減した。
 これでいい。
 とにかく、頭だけは守ってやることにしよう。
 制服の中に左手を突っ込み、胸を揉む。
 右手を股間に当て、一番敏感な部分に触る。
 人差し指と親指で、硬くなったそれの皮を剥く。
 鋭敏な先端にを軽くつまんでやると、膣の奥からじわっと熱い汁が溢れ出た。
 あふ。
 喘いで、中指を秘肉の間に開いた穴に挿入しようとした、そのときだった。
「黒野、杏里は?」
 トラックの向こうから、少年の声がした。
 零は舌打ちして、立ち上がった。
 んもう。
 いいとこだったのに。
「まだ生きてる」
 濡れそぼった指をハンカチで拭いながら、答えた。
「救急車は?」
 平静を装うべく、トラック越しに、そうおざなりに声をかけてやった。
「もうすぐ来る」
 少年が零の前に姿を現した。
 走ってきたのだろう、はあはあと息を切らしている。
「翔太、この子、あなたのカノジョなの?」
 好奇心に駆られて、零はたずねた。
「そんなこと、今はどうでもいいだろ?」
 両手を膝につき、上体を前に折ってぜいぜいと息をつきながら、少年がいった。
 怒ったような口調だった。
「まあね」
 零は笑った。
「ただ、もしそうなら、楓がかわいそうだな、と思って」
 そのとき、救急車のサイレンが聞こえてきた。

 クレーン車がトラックの車体を持ち上げ、舗道際にどけると、その下からおぞましいものが現れた。
 それは、血にまみれた肉塊だった。
 ところどころに見えている白いものは、制服の名残りだろう。
 あちこちから、折れ曲がった手足が突き出している。
 折り畳まれた胴体の下から、眼球を露出させた青白い顔がのぞいていた。
 振り向いたところを正面からトラックがのしかかってきたのに違いなかった。
 少女の体は、背中側に向かって二つに折れ、更に上下さかさまになっているのだ。
「う・・」
 救急隊員のひとりがうめき、片手で口を押さえると、舗道のほうに走っていった。
 嘔吐する音が聞こえてきた。
「生きてるぞ」
 少女のそばにかがみこんでいた別の隊員が、信じられない、といった口調で叫んだ。
「急げ! この子、まだ生きてる」

 零は少し離れたところからその様子をじっと眺めていた。
 非常線が張られ、現場の十字路付近はすべて通行止めになっている。
 もう近づくことは無理だったが、零の視力なら、そこからでも充分細部を見届けることができる。
 自慰に耽りたくてたまらない。
 が、さすがに辛抱した。
 家に帰ったら、裸になって、思う存分自分をいじるのだ。
 なんなら、久しぶりにロープや器具を使ってもいい。
 そう心に決めていた。
 そのためには、この貴重な映像を脳裏にしっかり焼きつけておく必要がある。
 少し離れた舗道で、山口翔太が泣いていた。
 警察官がふたり、翔太を取り囲んでいる。
 とんだ茶番だ、と零は思った。
 いつまで猿芝居を続けるつもりなのか。
 奇怪なオブジェのような格好のまま、少女の体が担架に乗せられた。
 上にかけたシーツが不自然に盛り上がっている。
 救急隊員たちも、心底途方にくれているようだった。
 下手に体を元に戻すと、死んでしまうかもしれないと考えたのだろう。
 担架が救急車の後部に運び込まれると、翔太がその横に乗り込んだ。
 少女の係累が駆けつけてくる気配はなかった。
 ぼっちなのか。
 零は思った。
 私と同じだね。
 救急車が走り出すと、零は現場に背を向け、坂の上に向かって歩き出した。
 さわやかな風が、零の長くしなやかな黒髪をなでる。
 端正な横顔が顕わになる。
 零は日本人形によく似ている。
 手足はモデルのように細くて長い。
 とても、中学二年生には見えない、大人びた雰囲気の少女だった。
 零の足取りは、軽い。
 やっと、この街で生きる楽しみをみつけたのだ。
 以前住んでいた東京とは違い、ここは人口が少ない。
 目立つ行動は取れないと思って悶々としていた矢先だったのである。
 問題は、タナトスの回復には時間がかかるだろう、ということだった。
 さすがにあそこまで肉体を破壊されてしまっては、一日二日で元に戻るとは思えない。
 最初からちょっとやりすぎたかな、と反省する。
 が、偶然だったのだから、こればかりは仕方なかった。
 誰でもよかったのだ。
 今回はただただ、血を見たくて仕方がなかったのである。
 それがまさか、いきなりタナトスがひっかかって来るとは・・・・。
 
 坂の一番高いところを過ぎると、道は下りになった。
 この道を下りきったところに、零の住む家はある。
 間抜けな金持ちの爺をだまして手に入れた、かりそめのねぐらである。
 足取りが軽くなっていた。
 思い出したのだ。
 タナトスが学校に配備されたとすると、アレも一緒に来ている可能性がある。
 確か、激戦区ではタナトスとアレはセットだったはずだ。
 零はにやりと笑った。
 パトス。
 "癒しのタナトス"と表裏を成す、人外の"戦闘少女"。
 人間はもろすぎる。
 快楽は、いつも一瞬で終わってしまう。
 これまでずっと、零はそのことが不満でならなかった。
 だが、やつらが相手なら・・・。
 楽しみが増えた、
 と思う。
 タナトスが回復するまでの間の、別の玩具が見つかるかもしれないのだ。
 多少手ごわいが、試してみる価値は充分にある。
 明日から、学校に行こう。
 零は立ち止まると、抜けるように青い夏空を見上げ、そう決心した。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...