4 / 15
#4 薬部屋
しおりを挟む
薬部屋とは、団地の集会室の地下にある、薄暗い倉庫のことだ。
急な階段を下りた先は短い通路になっていて、そのつきあたりに両開きの古い木の扉がはまっている。
いつでも住人が出入りできるように、扉には鍵がかかっていない。
不用心といえばそうだけど、こんな所、はっきり言って泥棒どころかネズミやゴキブリだって近づかない。
とにかく陰気で臭いのだ。
中に入ると、天井近くに開いた明かり採りの小窓から差し込む光に、棚にずらりと並んだ壺の列が浮かび上がった。
ひと抱えほどもある同じような壺が、壁に設置された棚をびっしりと埋め尽くしているのだ。
壺にはシールが貼ってあり、そこに黒マジックで所有者の名前が書かれている。
全世帯のものがそろっているので、他人の壺と間違わないようにするためである。
C棟の列を探し当て、ママの名前を探していると、そこだけぽっかり空いたスペースに突き当たった。
瞬間、背筋を冷たい汗が這い下りた。
ここは確か、小夜子の…。
不吉な想像をふり払い、壺探しを再開する。
毎月来ているので、その気になれば見つけるのは簡単だった。
「あった」
つぶやいて、
ママの名前の壺を抱え、足元の床に下ろした。
壺の口にはコルクの蓋がはまっていて、それを取るのは、正直、小学生の僕には難事業である。
試行錯誤の末、ようやく蓋を抜き取ると、お馴染みのあの匂いがつんと鼻を突いた。
腐った魚に薬品を混ぜたような、なんともいえない嫌な匂い…。
準備のために、半ズボンと下着を下ろした。
幸い、股間の”あれ”はすっかり元の大きさに戻り、目のない深海生物のように腿と腿の間に縮こまっている。
傷は右の尻っぺたにあった。
手で触ってみると、いつもより抉られ方が深かったのか、1週間経っているのに、まだへこんだままだった。
息を止め、壺の口に指を突っ込み、どろどろした液体をかき回す。
腐った血みたいな色をしたゼリー状の塊を指ですくって、患部に近づけた。
傷の上でゼリーを潰し、スライム状の粘液を尻っぺたのへこみの中に塗り込んでいく。
その間、誰かに見られているようで、怖くてならなかった。
この倉庫の中にある壺すべてにこれと同じ液体が入っているかと思うと、胸がむかむかしてきて、今にも吐きそうだった。
それでも僕は我慢して、最期まで作業をやり遂げた。
これもママのため。
そう思うと、胸の奥底に不思議と勇気が湧いてきたからだ。
急な階段を下りた先は短い通路になっていて、そのつきあたりに両開きの古い木の扉がはまっている。
いつでも住人が出入りできるように、扉には鍵がかかっていない。
不用心といえばそうだけど、こんな所、はっきり言って泥棒どころかネズミやゴキブリだって近づかない。
とにかく陰気で臭いのだ。
中に入ると、天井近くに開いた明かり採りの小窓から差し込む光に、棚にずらりと並んだ壺の列が浮かび上がった。
ひと抱えほどもある同じような壺が、壁に設置された棚をびっしりと埋め尽くしているのだ。
壺にはシールが貼ってあり、そこに黒マジックで所有者の名前が書かれている。
全世帯のものがそろっているので、他人の壺と間違わないようにするためである。
C棟の列を探し当て、ママの名前を探していると、そこだけぽっかり空いたスペースに突き当たった。
瞬間、背筋を冷たい汗が這い下りた。
ここは確か、小夜子の…。
不吉な想像をふり払い、壺探しを再開する。
毎月来ているので、その気になれば見つけるのは簡単だった。
「あった」
つぶやいて、
ママの名前の壺を抱え、足元の床に下ろした。
壺の口にはコルクの蓋がはまっていて、それを取るのは、正直、小学生の僕には難事業である。
試行錯誤の末、ようやく蓋を抜き取ると、お馴染みのあの匂いがつんと鼻を突いた。
腐った魚に薬品を混ぜたような、なんともいえない嫌な匂い…。
準備のために、半ズボンと下着を下ろした。
幸い、股間の”あれ”はすっかり元の大きさに戻り、目のない深海生物のように腿と腿の間に縮こまっている。
傷は右の尻っぺたにあった。
手で触ってみると、いつもより抉られ方が深かったのか、1週間経っているのに、まだへこんだままだった。
息を止め、壺の口に指を突っ込み、どろどろした液体をかき回す。
腐った血みたいな色をしたゼリー状の塊を指ですくって、患部に近づけた。
傷の上でゼリーを潰し、スライム状の粘液を尻っぺたのへこみの中に塗り込んでいく。
その間、誰かに見られているようで、怖くてならなかった。
この倉庫の中にある壺すべてにこれと同じ液体が入っているかと思うと、胸がむかむかしてきて、今にも吐きそうだった。
それでも僕は我慢して、最期まで作業をやり遂げた。
これもママのため。
そう思うと、胸の奥底に不思議と勇気が湧いてきたからだ。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
義兄様と庭の秘密
結城鹿島
恋愛
もうすぐ親の決めた相手と結婚しなければならない千代子。けれど、心を占めるのは美しい義理の兄のこと。ある日、「いっそ、どこかへ逃げてしまいたい……」と零した千代子に対し、返ってきた言葉は「……そうしたいなら、そうする?」だった。
密室に二人閉じ込められたら?
水瀬かずか
恋愛
気がつけば会社の倉庫に閉じ込められていました。明日会社に人 が来るまで凍える倉庫で一晩過ごすしかない。一緒にいるのは営業 のエースといわれている強面の先輩。怯える私に「こっちへ来い」 と先輩が声をかけてきて……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる