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第6部 淫蕩のナルシス

#45 エキス

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 気がつくと、いつのまにか唇を吸われていた。
 杏里を上向かせ、ヤチカが覆いかぶさってきたのだ。
 杏里の舌を根元から吸いながら、ヤチカは左手を腋から差し入れ、杏里の乳房を弄っている。
 右手は杏里の手首を掴んで頭上に持ち上げたままだ。
 ヤチカは杏里より10センチ近く背が高い、
 だからこそできる技だった。
 口の中でヤチカの唾液と杏里の唾液が混ざる。
 フェラチオでもするように、ヤチカが唇と舌で杏里の舌をしごいた。
 同時に敏感な乳首を指で弾かれ、杏里が痙攣する。
 片脚をテーブルに乗せているせいで、股間が丸見えになってしまっていた。
「太腿の裏側が、また色っぽいねえ。おや、おまえさん、パイパンなのかい? いやらしいお口がむき出しだよ」
 杏里の股間に大きな顏を近づけて、老婆が言った。
 その突き出した腰から下を、皺だらけの両手で愛おしむように撫でさする。
 肉襞をめくられた。
 指に愛液をなすりつけると、老婆が割れ目から尻に沿ってのラインにそれをたっぷり塗りつけていく。
「いい眺めだねえ。中が綺麗なサーモンピンクをしてる。穴がひくひく動いてるけど、指でも入れてほしいのかい?」
 小柄な杏里の身体は、今や背後からヤチカに抱かれるような恰好で海老のように反り返ってしまっている。
 その肌がオイルを塗りたくったように光沢を帯びているのは、毛穴から染み出たタナトス特有の潤滑液のせいだった。
 タナトスは肉体を傷つけられたリ必要以上の愛撫を受けたりすると、傷を修復するために全身から特殊な体液を分泌する。
 ぬめるような肌は、杏里がいかに興奮しているかのバロメーターなのだ。
 ヤチカが狂ったように己のブラウスのボタンを引き千切り、ブラをむしり取る。
 もどかしげに片乳を引っ張り出すと、裸の杏里の脇の下に円を描くように押しつけてきた。
 ヤチカの勃起し切った乳首が、杏里の柔らかい脇の下の皮膚を刺激する。
「やんっ、だめえっ」
 杏里の唇の端から涎が飛んだ。
 今度は老婆の番だった。
「じゃ、まずは人差し指を一本…。おお、簡単に入ってしまったよ。中までもうぬるぬるじゃないか」
「はふうっ!」
 身体の内側をかき回され、杏里が叫ぶ。
 くちゅくちゅといういやらしい音が高まっていく。
 鉤型に曲げた老婆の指が、Gスポットのあたりを集中的に責めてくる。
「一本では足りないのかい? ならば、もう一本。ああ、襞が生きものみたいに吸いついてくる。すごいねえ、こりゃ、まるでイソギンチャクだ。なんて締まりのいい子なんだろう。こんなふうに絞めつけられたら、男なんて一発で昇天しちまうねえ」
「だ、だめ、ま、また、い、イっちゃう…」
 ヤチカから唇を離し、杏里は夢中で腰を振った。
 目蓋の裏で眼球が裏返りかけていた。
「何度でもイキな。すぐいけるように、お豆も触ってあげるから。おうおう、こんなに大きく膨らんじゃって。恥ずかしい子だねえ。さあ、これでどうだい?」
 老婆の2本の指がスピードを増した。 
 それと同時にクリトリスの包皮を剥かれ、舌先でつつかれた。
「ああああああっ!」
 杏里は腰を前後に振り、激しく痙攣した。
「いや! だめえ! 杏里、おかしくなっちゃう! また、出ちゃう!」
 杏里の眼がくるりと白目を剥き、次の瞬間、突き出した股間から透明な液が噴出した。
 下着を穿いていない分、今度のシャワーは強烈だった。
「おおおおっ!」
 顔面に大量の愛液を浴び、老婆が歓声を上げた。
 ぐっしょり顏を濡らした液体を指先につけ、おもむろに舐める。
「ありがたい…。これが、タナトスの命のエキスかい…?」
 乳液を肌に擦りこむように、両手で淫汁を顔じゅうにのばしていく。
「あう、私もイっちゃった」
 ヤチカが囁き、杏里を抱えたまま、その場に座り込んだ。
 脱力したふたりの前で、老婆だけが生き生きと両手を動かしている。
 やがて即席の”化粧”を終えると、椅子ごとふたりに向き直った。
「ご苦労さん。さ、杏里、シャワーを浴びて、服を着な。落ちついたら、約束通り、調査の結果を話してあげようか」

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