激甚のタナトス ~世界でおまえが生きる意味について~【官能編】

戸影絵麻

文字の大きさ
63 / 288
第6部 淫蕩のナルシス

#61 犬と正一

しおりを挟む
 店を出ると、外で待っているはずの正一の姿が見えなかった。
「あれ? 正一のやつ、どこへ行ったんだろう?」
 ヤチカが首をかしげた時、店と隣のアパートの間の狭い路地から、動物の鳴き声がした。
 覗いてみると、作務衣姿の正一が地面にしゃがみこみ、野良犬の頭をなでているところだった。
 けっこう大きな犬である。
 耳が片方ちぎれ、片目がつぶれかけている。
 杏里は老婆の言葉を思い出した。
 ー正一はね、人間とはしゃべらないが、犬とは会話ができるんだよ。
 老婆は確か、そんなことを言ったのだ。
 杏里たちの姿を見るなり、野良犬はひと声低くうなり、正一の手をすり抜けて路地の反対側の出入口のほうへと逃げていってしまった。
「おお、これはまた、水も滴るいい男じゃないか」
 手を払いながら立ち上がる正一に、もっくんが声をかけた。
 正一が無表情にもっくんを見返した。
「あばあさまの言った通りなんだね」
 ヤチカが感心したように言う。
「犬となら友達になれる、か。まあ、でなけりゃ計画がとん挫するから、困るわけなんだけど」
 もっくんはすっかり正一に興味を持ったようだ。
 大股に近づいていくと、おもむろにそのやせた体を抱き寄せて、両手で正一の手を握る。
「名前、正一っていうのかい? 今度さ、ひとりでうちにおいでよ。あたしがいいこと教えてあげるから」
 握った正一の手を自分のレザーパンツの前に引き寄せ、ペニスの形がわかるほどに膨らんだそこにぐいぐい押しつけている。
 その肩越しに正一が杏里のほうを見た。
 杏里はハイレグのボディスーツから生の乳房を飛び出させたままである。
 股の間からは薄桃色の花弁の一部まで覗かせている。
 切れ長の正一の目が、瞬間丸くなった。
 あられもない杏里の姿を食い入るように見つめたまま、表情を凍りつかせた。
「やだ、この子、興奮してるよ。ひょっとして、あたしのこと、気に入ってくれたのかい?」
 もっくんが嬌声を上げる。
 今度は正一の細い腰に両手を回し、パンツの前のふくらみを正一のズボンの前にグイグイこすりつけた。
「それはどうかな」
 ヤチカが苦笑した。
「正一がバイセクシャルだって話は聞いたことがないよ。おおかた、女神さまの新しい衣装が気に入ったってとこじゃない?」
「女神様?」
「杏里だよ。正一は人形師でね。杏里を女神みたいに崇拝してるんだ」

 再び車に乗り込み、いよいよ堤邸に向かった。
「ここから車で10分ほどだ。丘のふもとでで車を降りたら、そこからは歩きだな」
 言いながらもヤチカは片手で杏里の濡れた膣を弄び続けている。
 時々乳房に手を這わせ、乳首を強くつねりあげたりした。
 そのたびに杏里は奥歯をかみしめ、ともすれば漏れそうになる喘ぎを押し殺した。
 あと10分もこんなことされ続けたら、私、車の中でいっちゃうかも…。
 ヤチカの指がボディスーツに開いたスリットから、杏里の肉襞を引っ張り出し、指でしごいてくる。
 その合間に充血した”真珠”をこねまわすので、杏里はまたしてもスライムよろしく溶け出していた。
「あ、見えたよ」
 前方に迫るこんもりとした森を指差して、後部座席から重人が言った。
 ヤチカは器用に右手一本で車を回すと、その手前の空き地の隅に幅寄せして止めた。
「さ、いよいよだ」
 杏里の股間から手を引っ込め、てきぱきとシートベルトを外し始める。
 杏里は首を倒すと、そんなヤチカをとろんとした目で見つめ、くぐもった声で言った。
「ヤチカさん…、もうやめちゃうの?」


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

女子切腹同好会

しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。 はたして、彼女の行き着く先は・・・。 この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。 また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。 マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。 世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...