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第7部 蹂躙のヤヌス
#13 美里のやり方
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「あいさつは済んだかね」
丸尾美里の後に続いて応接室を出ると、先ほどの教頭が声をかけてきた。
「では、丸尾先生、彼女を体育館まで案内してやってくれ」
美里がちらりと教頭に目をやった。
まるで虫けらを見るような冷たい視線だった。
「わかりました。お先に失礼します」
慇懃に頭を下げると、杏里には見向きもせず、事務室を出て行った。
「しかし、校長にも困ったもんだなあ。始業式の日に不在だなんて。全校生徒の前で訓示だなんて、私の仕事じゃないんだが」
教頭のぼやきを背中に聞きながら、事務室を出た。
誰もいないロビーに立つ、美里の後ろ姿が見えた。
誰かと話しているようだ。
なんだろう?
位置を変えると、背の高い少年の姿が目に入ってきた。
前髪を垂らした、少しすさんだ感じのするイケメンだ。
「なあ、美里、次はいつなんだよ」
少年の声に、杏里はどきりとした。
美里?
何この馴れ馴れしさ。
まるで先生と生徒じゃないみたい。
「俺、もうがまんできないんだよ。してくれよ。この前の時みたいにさ」
長い前髪の間から覗く目が血走っている。
声には焦燥がにじんでいた。
「しょうがないわね」
吐き捨てるように美里が言った。
「こっちに」
少年のやせた肩を押すようにして、靴箱の間の狭い通路に入っていった。
何するつもりなの?
好奇心に駆られ、杏里はふたりの後を追った。
靴箱の陰から覗いてみると、美里が少年に命令するところだった。
「ズボンを脱ぎなさい」
「こ、ここでかよ」
少年が驚いたように言う。
「嫌ならいいのよ」
美里がにべもなくいい放つ。
「わ、わかったよ」
少年がベルトに手をかけた。
「脱げばいいんだろ」
ズボンとトランクスが床に落ち、少年の足首のところで丸まった。
その後に現れたものを見て、杏里は思わず息を呑んだ。
怒張し切ったペニスが、腹にくっつかんばかりにそそり立っている。
黒々と密生した陰毛の中から立ち上がったそれは、大人の一物と比べてもそん色ない。
「な、もうこんなになってるんだ。美里のこと考えるだけで、俺、おかしくなりそうなんだよ」
「見苦しい」
少年の哀願じみた台詞を断ち切るように、美里が言った。
「座りなさい。そのまま」
「こ、こうかよ」
下半身をむき出しにしたまま、少年が床に尻をつく。
と、やにわに美里が右足を上げた。
「あんたなんか、これで十分だわ」
つぶやくと同時に、真上から少年のペニスを踏みつけた。
「あう」
前かがみになる少年。
スリッパを履いたままの右足で、美里がその股間から生えた肉棒を床に押しつけていく。
「い、いい…」
少年が喘ぐ。
「このクズ」
美里がぐりぐりとつま先を動かした。
「い、いっちまいそう…」
床に両手を突き、ペニスを踏みにじられながら、少年が肩を震わせている。
「勝手にいけば」
美里の右手が、少年のはだけたシャツの胸元に伸びた。
片手で器用にボタンをはずし、杏子のような乳首をさらけ出す。
脚でペニスを蹂躙しながら、その小さな突起を力任せにをつねり上げた。
「ああああっ!」
少年が叫んだ。
「で、出るうっ!」
美里が足を上げ、意外に俊敏な動作で身をかわした。
次の一瞬、どびゅっと音を立てて、白濁したものが床一面に飛び散った。
若いだけあって、ものすごい量だった。
青臭い匂いが杏里のところまで漂ってくる。
「式に遅れないでね」
少年を見下ろし、冷ややかにそれだけ言うと、くるりと美里が振り向いた。
「ごめんなさい。余計な時間、取らせちゃって」
何事もなかったように、そう言った。
返す言葉もなく、杏里は目の前の美里と、その後ろで精液まみれになっている少年を交互に見つめた。
これが、この人の、やり方…?
鮮やかというか…無造作極まりないというか…。
しかも、驚くべきことに、美里は全く自分の手を汚すことなく、これをやってのけたのだ。
杏里は内心、舌を巻く思いだった。
強敵かもしれない。
そんな予感がした。
優秀とはいえ、杏里はタナトスとして覚醒してからまだ半年である。
それに対して、美里は明らかにもっとずっと年季が入っているようだ。
まったく表情を変えないその顔、落ちつき払った雰囲気からもそれとわかった。
「でも、あなたはこんなことでは驚かないでしょう?」
にこりともせず、美里が言った。
「なんせ、私の同類なんだものね。もちろん、聞いてるわよ。あなたのことは」
「あなたのパートナーは、どうなったんですか?」
そっちがそのつもりなら、こっちもストレートにいくだけだ。
単刀直入に杏里は訊いた。
「類のこと?」
眼鏡の奥の美里の瞳は、まるでガラス玉のよう。
感情というものが、まったく読み取れない。
「ええ。ここで殺されたというパトスの少女です」
「知らないわ」
あっさりと美里が言った。
「パートナーといっても、ほとんど接触なかったから。外来種がいなければ、しょせんパトスの出番なんてないもの。そうじゃなくって?」
「接触が、なかった…?」
想定外の返答だった。
なるほど、そういうこともあり得るのか、と杏里は思った。
確かに、タナトスの”浄化”に、パトスが絡むことはまずないのだ。
「それに私みたいな旧式には、救済措置としてのヒュプノスもついてないしね。トレーナーのおじいちゃんも、いつのまにかいなくなってたし」
「本当に、知らないんですか?」
「ええ」
きっぱりと、美里がうなずいた。
「ま、今は時間がないから、その話はいずれ」
踵を返して、歩き出す。
その歩みに合わせて、スーツのタイトスカート越しに、筋肉の発達した尻が悩ましげに左右にうねる。
「それに、私はあなた自身にすごく興味をそそられてるの」
歩きながら、前を見たまま、美里が言った。
「今度、タナトス同士、水入らずでじっくりお話ししましょうね」
どこか面白がっているような口調だった。
丸尾美里の後に続いて応接室を出ると、先ほどの教頭が声をかけてきた。
「では、丸尾先生、彼女を体育館まで案内してやってくれ」
美里がちらりと教頭に目をやった。
まるで虫けらを見るような冷たい視線だった。
「わかりました。お先に失礼します」
慇懃に頭を下げると、杏里には見向きもせず、事務室を出て行った。
「しかし、校長にも困ったもんだなあ。始業式の日に不在だなんて。全校生徒の前で訓示だなんて、私の仕事じゃないんだが」
教頭のぼやきを背中に聞きながら、事務室を出た。
誰もいないロビーに立つ、美里の後ろ姿が見えた。
誰かと話しているようだ。
なんだろう?
位置を変えると、背の高い少年の姿が目に入ってきた。
前髪を垂らした、少しすさんだ感じのするイケメンだ。
「なあ、美里、次はいつなんだよ」
少年の声に、杏里はどきりとした。
美里?
何この馴れ馴れしさ。
まるで先生と生徒じゃないみたい。
「俺、もうがまんできないんだよ。してくれよ。この前の時みたいにさ」
長い前髪の間から覗く目が血走っている。
声には焦燥がにじんでいた。
「しょうがないわね」
吐き捨てるように美里が言った。
「こっちに」
少年のやせた肩を押すようにして、靴箱の間の狭い通路に入っていった。
何するつもりなの?
好奇心に駆られ、杏里はふたりの後を追った。
靴箱の陰から覗いてみると、美里が少年に命令するところだった。
「ズボンを脱ぎなさい」
「こ、ここでかよ」
少年が驚いたように言う。
「嫌ならいいのよ」
美里がにべもなくいい放つ。
「わ、わかったよ」
少年がベルトに手をかけた。
「脱げばいいんだろ」
ズボンとトランクスが床に落ち、少年の足首のところで丸まった。
その後に現れたものを見て、杏里は思わず息を呑んだ。
怒張し切ったペニスが、腹にくっつかんばかりにそそり立っている。
黒々と密生した陰毛の中から立ち上がったそれは、大人の一物と比べてもそん色ない。
「な、もうこんなになってるんだ。美里のこと考えるだけで、俺、おかしくなりそうなんだよ」
「見苦しい」
少年の哀願じみた台詞を断ち切るように、美里が言った。
「座りなさい。そのまま」
「こ、こうかよ」
下半身をむき出しにしたまま、少年が床に尻をつく。
と、やにわに美里が右足を上げた。
「あんたなんか、これで十分だわ」
つぶやくと同時に、真上から少年のペニスを踏みつけた。
「あう」
前かがみになる少年。
スリッパを履いたままの右足で、美里がその股間から生えた肉棒を床に押しつけていく。
「い、いい…」
少年が喘ぐ。
「このクズ」
美里がぐりぐりとつま先を動かした。
「い、いっちまいそう…」
床に両手を突き、ペニスを踏みにじられながら、少年が肩を震わせている。
「勝手にいけば」
美里の右手が、少年のはだけたシャツの胸元に伸びた。
片手で器用にボタンをはずし、杏子のような乳首をさらけ出す。
脚でペニスを蹂躙しながら、その小さな突起を力任せにをつねり上げた。
「ああああっ!」
少年が叫んだ。
「で、出るうっ!」
美里が足を上げ、意外に俊敏な動作で身をかわした。
次の一瞬、どびゅっと音を立てて、白濁したものが床一面に飛び散った。
若いだけあって、ものすごい量だった。
青臭い匂いが杏里のところまで漂ってくる。
「式に遅れないでね」
少年を見下ろし、冷ややかにそれだけ言うと、くるりと美里が振り向いた。
「ごめんなさい。余計な時間、取らせちゃって」
何事もなかったように、そう言った。
返す言葉もなく、杏里は目の前の美里と、その後ろで精液まみれになっている少年を交互に見つめた。
これが、この人の、やり方…?
鮮やかというか…無造作極まりないというか…。
しかも、驚くべきことに、美里は全く自分の手を汚すことなく、これをやってのけたのだ。
杏里は内心、舌を巻く思いだった。
強敵かもしれない。
そんな予感がした。
優秀とはいえ、杏里はタナトスとして覚醒してからまだ半年である。
それに対して、美里は明らかにもっとずっと年季が入っているようだ。
まったく表情を変えないその顔、落ちつき払った雰囲気からもそれとわかった。
「でも、あなたはこんなことでは驚かないでしょう?」
にこりともせず、美里が言った。
「なんせ、私の同類なんだものね。もちろん、聞いてるわよ。あなたのことは」
「あなたのパートナーは、どうなったんですか?」
そっちがそのつもりなら、こっちもストレートにいくだけだ。
単刀直入に杏里は訊いた。
「類のこと?」
眼鏡の奥の美里の瞳は、まるでガラス玉のよう。
感情というものが、まったく読み取れない。
「ええ。ここで殺されたというパトスの少女です」
「知らないわ」
あっさりと美里が言った。
「パートナーといっても、ほとんど接触なかったから。外来種がいなければ、しょせんパトスの出番なんてないもの。そうじゃなくって?」
「接触が、なかった…?」
想定外の返答だった。
なるほど、そういうこともあり得るのか、と杏里は思った。
確かに、タナトスの”浄化”に、パトスが絡むことはまずないのだ。
「それに私みたいな旧式には、救済措置としてのヒュプノスもついてないしね。トレーナーのおじいちゃんも、いつのまにかいなくなってたし」
「本当に、知らないんですか?」
「ええ」
きっぱりと、美里がうなずいた。
「ま、今は時間がないから、その話はいずれ」
踵を返して、歩き出す。
その歩みに合わせて、スーツのタイトスカート越しに、筋肉の発達した尻が悩ましげに左右にうねる。
「それに、私はあなた自身にすごく興味をそそられてるの」
歩きながら、前を見たまま、美里が言った。
「今度、タナトス同士、水入らずでじっくりお話ししましょうね」
どこか面白がっているような口調だった。
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