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第7部 蹂躙のヤヌス

#52 凌辱団地④

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 百合と呼ばれた女は、短躯で手足も短い割に、思いのほか力が強かった。
 杏里は、前で結ぶタイプの丈の短いカーディガンを着ている。
 その襟元を片手でつかまれ、力任せに引きずり起こされた。
「おまえ、おかしいよ。絶対におかしい」
 百合の赤く塗りたくった分厚い唇が動いた。
 出目金の目玉のような眼が不気味だった。
「なんだかすごくいやらしい匂いがする。あどけない顔であたしたちをだまそうったって、そうはいかないよ。おまえ、悪魔だろう。最近、この団地で立て続けに不倫騒動が起こってるけど、ひょっとして、おまえがその黒幕なんじゃないのかい? 悪魔の眷族には、男も女も手当たり次第を狂わせる淫魔ってのがいるっていうけど、それがおまえなんじゃないのかい?」
「ち、違います」
 壁際に追い詰められ、杏里は懸命にかぶりを振った。
 不倫騒動の黒幕だの、淫魔だの、言いがかりもいいところだ。
「私、ここへ来たのはきょうが初めてなんです。それも、ただトイレを借りに来ただけなんです」
「なら、るり子さんはいったいどうしちまったんだい? まるで気が触れたみたいじゃないか」
 開けっ放しの扉の向こう、女子トイレのほうにちらりと視線を投げて、百合が言った。
 獣じみた雄叫びはまだ聞こえている。
「し、知りません」
 杏里は顔を背けた。
「知らないはずないだろ!」
 そこに強烈なビンタが飛んできた。
「あっ!」
 右頬をしたたかに打たれ、杏里はぐらりとよろめいた。
 倒れそうになったところを、両肩をつかまれた。
 百合は杏里を立たせて壁に押しつけると、両手でカーディガンの襟元を大きく引き開けた。
 そのまま真下にぐいと引き下げる。
 服が腰のくびれのあたりまでずり下げられ、両腕を拘束する紐に変貌した。
 カーディガンの下は、下乳の部分だけを支えるいつものハーフカップブラだ。
 ワイヤーに押し上げられた杏里の巨乳は、乳輪が見えるすれすれのところまではみ出てしまっている。
 その、青い血管が浮き出た真っ白な乳房を、百合は食い入るようなまなざしで見つめていた。
「なんていやらしい…。おまえ、見たところ中学生か高校生なんだろう? それなのに、いつもこんないやらしい下着、つけてるのかい? その薄くてちっちゃなパンティといい、恥ずかしくないのかい? いったいなんのつもりなのさ? 今度は誰を誘惑しようっていうの?」
 百合の手が杏里のブラに伸びた。
「ああ、けがらわしい…。ふん、こんなもの、こうしてやる!」
 乱暴にブラを引き下げられ、ふたつの乳房がぷるんとこぼれ出た。 
 片方だけで1キログラム近くある、重量感たっぷりの乳房である。
 いかにも中身がみっしり詰まっているといった感じで、いささかのたるみもない。
「な、なんなの、これは? い、いやらしいったら、ありゃしない!」
 その完璧な乳房のフォルムが、この百合という中年の醜女には、とことん気に入らないらしかった。
「おまえ、やせてるのにどうしておっぱい、こんなに大きいのさ? その年でおかしいだろ? こんなの!」
 癇に障ったように叫んだ。
 バシっ。
 いきなり右の乳房の横っ面を、平手で叩かれた。
「この淫魔め! お仕置きだ! お仕置きしてやる!」
 バシっ、バシっ。
 左右と、更に平手で連打された。
 杏里のマシュマロみたいな巨乳がたちまち赤くなる。
「これでもか!」
 今度は両手で両方の乳房をわしづかみにされ、思いきりひねり上げられた。
「あ、あんっ! や、やめてください!」
 抗議する自分の声に甘い響きが混じるのに気づき、杏里は赤くなった。
 痛いと感じたのは最初だけで、すでに痛みは快感に変わり始めている。
「し、信じられない!」
 乳房を放し、ぶるんと震わせた後、目玉を飛び出させて百合が叫んだ。
「この子、乳首勃たせてる! あんなに叩かれたのに、乳首勃起させてる! 変態だよ! こいつ、変態だ!」
 その通りだった。
 赤い手形がついた杏里の白い乳房の頂で、そこだけ色の濃い乳輪に影ができるほど、乳首が大きくなっている。
 杏里はとりわけ乳首責めに弱い。
 特に、今みたいに乳首だけを集中的に責められていると、否が応でも感じないではいられない。
「そ、そんなこと、ないです」
 泣きべそをかきながら抗議した。
「ひどいこと、言わないで…ああっ!」
 杏里の声が途中から喘ぎに変わる。
 百合がだしぬけに固く尖った乳首を指でつまんできたからだった。
「何言ってるんだい? じゃあ、これはなんだい? あたしの眼をごまかそうなんて、10年早いんだよ! ほらほらほら! ここをこんなにカチカチにして! こんなに固くなった乳首、あたしゃ今まで見たことないよ!」
「あ、だ、だめ!」
 大きく身悶えする杏里。
 こよりをより合わせるように、百合が指を動かし始めたせいだった。
 コリコリ音がしそうなほど、乳首をつまむ指先に執拗に力を加えてくる。
「気持ちいいんだろ? うそついたって駄目さ、この淫魔めが! 気持ちいいなら気持ちいいって、はっきり言ってごらん!」
「そ、そんなこと…あふうっ!」
「言いなさい! 言いなさいよ! ほらほらほらあ!」
「あ、あ、あ、あ」
 腰が勝手に動き始めた。
 じわりと膣の奥に熱い汁が噴き出した。
 杏里は固く太腿を閉じ、もぞもぞと股間の肉をすり合わせにかかった。
 後ろ手に抵抗するすべを奪われた格好で、背中を反らして膨れ上がった胸をぐっと女のほうにつき出している。
 もっと触ってほしいというサインだった。
 もっと、もっと、気が狂うくらい、強く!
「くそ、もうがまんできない!」
 百合がうめいた。
 狂ったようにミニワンピースを脱ぎ始めた。
 たちまちのうちに下着姿になる。
 フリルだらけの紫色の勝負下着の上下が、ぶよぶよのたるんだ身体を締めつけている。
 その汗ばんだ肉の塊が、杏里の細い裸身に覆いかぶさった。
「接吻するよ! 接吻だよ!」
 ナマコみたいな分厚い唇に吸いつかれ、口をふさがれて杏里は酸素を求めて喘いだ。
 その隙間に太く熱い舌が差し込まれた。
 得体の知れない軟体動物を喉の奥まで呑み込んだ気分だった。
 杏里の舌をちゅうちゅう音を立てて吸いながら、百合が乳房を揉みしだく。
 長い爪が、真っ白な杏里の柔肌を突き破る。
 醜女と舌をからませ合い、無意識のうちにお互いの唾液を交換しながら、杏里はくぐもった声で懇願した。
「お願い…下も、下も…触ってあげて…」


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