162 / 288
第8部 妄執のハーデス
#11 尋問
しおりを挟む
あっと思った時には、つま先が宙に浮いていた。
ふみが後ろから杏里の腋の下に手を入れ、軽々と身体を持ち上げたのだ。
すごい力だった。
人形のように運ばれ、無造作に椅子の上に投げ落とされた。
抵抗する暇もなかった。
ブラウスをはだけられ、ぐいと下に押し下げられた。
杏里はノーブラである。
質感のある乳房が、勢いよくこぼれ出た。
一度も陽に当たったことのない、隠花植物のように生白くて艶めかしい乳房だった。
引き下げられたブラウスが手枷になり、動けなくなった。
両手を腰に押しつけられたまま、飛び出した己の乳房と、めくれ上がったスカートを呆然と見下ろした。
影が射した。
顔を上げると、竹刀を片手に璃子が目の前に立っていた。
「美里をどうした?」
竹刀の先で杏里の顎を突き上げ、低い声で訊いた。
やっぱり、と思う。
話というのは、美里先生のことだったのだ。
この子たち、私と先生のことに、気づいていたのだ。
だが、真実を打ち明けられる相手ではなかった。
ここはとぼけ通すしかない。
そう決心して、杏里は答えた。
「知らないわ。私、入院してたもの」
「それが怪しいっていうんだよ」
前髪の間から覗く璃子の片目が憎々しげに細められた。
「おまえの入院と、美里の失踪が同時だってのは、いったいどういうわけだ? おまえ、何を隠してる?」
「そんなの偶然よ。私はただ肺炎で…」
どすっ。
鳩尾に鈍い痛みが走り、杏里は上体を折って咳込んだ。
璃子が竹刀で、杏里の裸の腹を突いてきたのだ。
「とぼけるんじゃねえ。おまえが美里のお気に入りだったってことは、とっくの昔から知ってんだよ。毎日、昼休みに音楽室で個人レッスン受けてたこともな」
「そ、それは…誤解だよ」
痛みに顔をしかめながら、辛うじて杏里は声を絞り出した。
「先生は、私が転校生だから、それで、特別に面談の回数を増やしてくれただけで…」
「ばーか。あの美里が、そんな普通の教育相談、するはずねえだろ? 正直に言ってみろよ。美里と、したって」
璃子が竹刀で杏里のスカートをめくり上げた。
太腿の付け根までむき出しになり、すでに見えていた小さな白いパンティが更に丸見えになる。
「したって、なにを…?」
「うざいやつだな」
璃子の声が怒気を帯びた。
外見通り、かなり気が短いらしい。
「あくまでもシラを切るつもりなら、こっちにも考えがある」
竹刀が杏里のパンティの前を、乱暴になぞっていく。
割れ目に沿って先を動かしているのだ。
「だって、知らないものは、知らないんだもの」
歯を食いしばりながらそこまで言った時、突然、璃子が切れた。
「おい、ふみ。おまえの出番だ。ちょっとこいつと踊ってやりな!」
パイプ椅子の脚を竹刀で叩いて、そう叫んだ。
「え? いいのかい?」
杏里の頭上で、甲高い声が言った。
同時に、肩を押さえつけていた圧力が消えた。
目の前に圧迫感。
璃子に代わって、後ろに居たふみが前に立ったのだ。
ふみは異様な姿をしていた。
杏里が気配で察した通り、なぜか服を着ていない。
ただ、何を血迷ったのか、黒いシースルーの下着の上下を身に着けていた。
何層にも肉が重なった醜悪な体型には、まるでそぐわぬセクシーな下着である。
「ど、どうして、あなた、裸なの?」
あまりの醜さに辟易して、杏里はついそう口に出していた。
「窮屈なんだよ。制服って」
肉饅頭のような顔の中で、豚のような目を光らせて、ふみが答えた。
「だから、時間がある時は、あたし、いつもここで裸になるのさ。特に今は、顧問の美里先生がいないから、部活お休みでしょう? もう、のびのびできて、サイコーの気分!それにね、きょうはあんたを抱けるかもしれないと思ってさ、ふみ、思い切っておめかししてきちゃったの」
浮き浮きした、軽薄そのものの口調である。
可愛い子ぶっているところが、外見と乖離し過ぎていて、吐き気を催すほど不気味だった。
「やめてよ」
吐き捨てるように、杏里は言った。
顔に、嫌悪の色が浮かぶのを抑え切れなかった。
「お願いだから、それ以上、私のそばに来ないでよね」
ふみが後ろから杏里の腋の下に手を入れ、軽々と身体を持ち上げたのだ。
すごい力だった。
人形のように運ばれ、無造作に椅子の上に投げ落とされた。
抵抗する暇もなかった。
ブラウスをはだけられ、ぐいと下に押し下げられた。
杏里はノーブラである。
質感のある乳房が、勢いよくこぼれ出た。
一度も陽に当たったことのない、隠花植物のように生白くて艶めかしい乳房だった。
引き下げられたブラウスが手枷になり、動けなくなった。
両手を腰に押しつけられたまま、飛び出した己の乳房と、めくれ上がったスカートを呆然と見下ろした。
影が射した。
顔を上げると、竹刀を片手に璃子が目の前に立っていた。
「美里をどうした?」
竹刀の先で杏里の顎を突き上げ、低い声で訊いた。
やっぱり、と思う。
話というのは、美里先生のことだったのだ。
この子たち、私と先生のことに、気づいていたのだ。
だが、真実を打ち明けられる相手ではなかった。
ここはとぼけ通すしかない。
そう決心して、杏里は答えた。
「知らないわ。私、入院してたもの」
「それが怪しいっていうんだよ」
前髪の間から覗く璃子の片目が憎々しげに細められた。
「おまえの入院と、美里の失踪が同時だってのは、いったいどういうわけだ? おまえ、何を隠してる?」
「そんなの偶然よ。私はただ肺炎で…」
どすっ。
鳩尾に鈍い痛みが走り、杏里は上体を折って咳込んだ。
璃子が竹刀で、杏里の裸の腹を突いてきたのだ。
「とぼけるんじゃねえ。おまえが美里のお気に入りだったってことは、とっくの昔から知ってんだよ。毎日、昼休みに音楽室で個人レッスン受けてたこともな」
「そ、それは…誤解だよ」
痛みに顔をしかめながら、辛うじて杏里は声を絞り出した。
「先生は、私が転校生だから、それで、特別に面談の回数を増やしてくれただけで…」
「ばーか。あの美里が、そんな普通の教育相談、するはずねえだろ? 正直に言ってみろよ。美里と、したって」
璃子が竹刀で杏里のスカートをめくり上げた。
太腿の付け根までむき出しになり、すでに見えていた小さな白いパンティが更に丸見えになる。
「したって、なにを…?」
「うざいやつだな」
璃子の声が怒気を帯びた。
外見通り、かなり気が短いらしい。
「あくまでもシラを切るつもりなら、こっちにも考えがある」
竹刀が杏里のパンティの前を、乱暴になぞっていく。
割れ目に沿って先を動かしているのだ。
「だって、知らないものは、知らないんだもの」
歯を食いしばりながらそこまで言った時、突然、璃子が切れた。
「おい、ふみ。おまえの出番だ。ちょっとこいつと踊ってやりな!」
パイプ椅子の脚を竹刀で叩いて、そう叫んだ。
「え? いいのかい?」
杏里の頭上で、甲高い声が言った。
同時に、肩を押さえつけていた圧力が消えた。
目の前に圧迫感。
璃子に代わって、後ろに居たふみが前に立ったのだ。
ふみは異様な姿をしていた。
杏里が気配で察した通り、なぜか服を着ていない。
ただ、何を血迷ったのか、黒いシースルーの下着の上下を身に着けていた。
何層にも肉が重なった醜悪な体型には、まるでそぐわぬセクシーな下着である。
「ど、どうして、あなた、裸なの?」
あまりの醜さに辟易して、杏里はついそう口に出していた。
「窮屈なんだよ。制服って」
肉饅頭のような顔の中で、豚のような目を光らせて、ふみが答えた。
「だから、時間がある時は、あたし、いつもここで裸になるのさ。特に今は、顧問の美里先生がいないから、部活お休みでしょう? もう、のびのびできて、サイコーの気分!それにね、きょうはあんたを抱けるかもしれないと思ってさ、ふみ、思い切っておめかししてきちゃったの」
浮き浮きした、軽薄そのものの口調である。
可愛い子ぶっているところが、外見と乖離し過ぎていて、吐き気を催すほど不気味だった。
「やめてよ」
吐き捨てるように、杏里は言った。
顔に、嫌悪の色が浮かぶのを抑え切れなかった。
「お願いだから、それ以上、私のそばに来ないでよね」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
51
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる