激甚のタナトス ~世界でおまえが生きる意味について~【官能編】

戸影絵麻

文字の大きさ
202 / 288
第8部 妄執のハーデス

#51 バトルロイヤル⑤

 ラウンジに入ってきたのは、まるで生徒会長を絵に描いたような印象の、姿見のいい学生服を着た少年。

 そして、ひどく小柄なセーラー服姿の少女。

 そのふたり連れだった。

「けっ、誰かと思ったら、柚木と美晴じゃねえかよ。なんでおまえらがこんなとこにいるんだ?」

 由羅の手を振りほどき、マコトが喧嘩腰でふたりに食ってかかる。

「まあ、色々あってね」

 外人のようなしぐさで肩をすくめてみせる少年。

「タナトスとパトスは連帯責任だから。僕は美晴のお守り役ってとこかな」
 
 その脇で、美晴と呼ばれた少女が、居心地悪そうに体を縮こまらせた。

 一応中学生らしくセーラー服を着てはいるが、ひどく幼い感じの娘である。

 背も低く、胸も薄い。

 おかっぱに切りそろえた髪に、折れそうなほど細い手足。

 その童顔と貧弱な体つきは、ほとんど小学生といってもいいほどだ。

 最初会った時のいずなと、雰囲気がそっくりだった。

 だが、そのいずなよりさらに幼い感じがする。

 まさか、この子が、タナトス?

 杏里はいぶかしんだ。

 性的魅力が、かけらもないのに?

 それに、連帯責任って、どういうことだろう?

 タナトスとパトスの一方だけが不適格でも、パートナーであるふたりともに、この研修が課せられる…。

 そういう意味なのだろうか。

 じゃあ、もしかして、私たちも…?

 悪いのは私だけで、由羅には何の落ち度もないのだとしたら…。

 腹の底から冷気が立ち上ってくるような感覚。

 私が、由羅を巻き添えにした…?

 その衝撃的な認識に杏里が思わず唇を噛んだ時、その由羅が先に口を開き、少年に話しかけた。

「おまえら、知り合いなのか?」

「まあね」

 柚木と呼ばれた少年が、にたりと笑う。

「僕らのテリトリーは、もともと東京23区の中学校周辺だ。なんせ守備範囲が広いから、配属されてるユニットの数も多い。マコトはそのメンバーのひとりなんだけど、相棒のタナトスをここ1年ですでに3人殺しててね。だから今後そういうことにならないよう、男のユウが4人目のパートナーにあてられたんだけど、とにかく、後始末が大変だったんだ。あの頃は、僕らも委員会の面々も」

「何ぺちゃくちゃ余計なことしゃべってんだよ。しまいにゃ殺すぞ、てめえも」

「マ、マコトったら」

 こめかみに青筋を立ててすごむマコトを、ユウが必死で止めている。

 だが、柚木は、いっこうにひるむ気配がない。

「ほう、それは楽しみだ。僕もキミとは、そろそろ決着をつける頃だと思ってたんでね。君たちが最終ラウンドまで残っていてくれることを、心から願っているよ」

「くそ、このガキが」

「なおも殴りかかろうとするマコトを、

「やめろ。警官が来る」

 由羅が低い声で叱責した。

 警官と聞いて、さすがにマコトの動きが止まる。

 杏里がほっと、安堵の息を吐いた時である。

 また自動ドアが開いて、にぎやかな声と鮮やかな色彩が、ホールの中につむじ風のように飛び込んできた。

「大変だよみんな! 遅刻しちゃうよ!」

「まだ大丈夫だって! あと15分あるじゃない!」

「あーん、あたし、トイレ行きたいのにい!」

 アイドルタレントのような衣装に身を包んだ、少女の3人組である。

 タータンチェックの赤と黒の上着に、ミニ丈ののフレアスカート。

 リボンとソックスの色までおそろいだ。

 ホールの中央で急ブレーキをかけたように立ち止まると、真ん中のひとりが杏里たちに気づいて片手を挙げた。

「あー、ひょっとしてみなさん、あたしたちのお仲間ですかあ? あのう、知ってたら教えてほしいんですけどお、トイレってどっちですぅ?」


 由羅がぽかんと口を開けた。

 狂暴なマコトに対してはあれほど動じる様子を見せなかった柚木も、この状況にはさすがに驚いているようだ。

 3人組?

 杏里は茫然と少女たちを見つめた。

 なんで3人なのだろう?

 この研修、ヒュプノスまでもが対象になってるなんて、聞いていないのに…。







感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。