異世界病棟

戸影絵麻

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#12 もうひとりの同室者①

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 ふたりの看護師が出て行くと、とたんにあたりは静かになった。
 僕は掛布団を首の下まで引き上げ、天井を見上げてこれまでのことを思い返してみた。
 が、浮かんでくるのは、この病室で目覚めてから後のことばかりだった。
  まあ、いい。
 思い出せないものは仕方がない。
 これは、突発的な心筋梗塞による副作用なのだ。
 いつか記憶が戻る時が来るだろうし、今考えても、どうせベッドから出られないのだから、意味がない。
 それより、当面の問題は、向かい側の同室者、”近藤さん”の存在だろう。
 カーテンと床の隙間からのぞいた奇怪な身体の一部。
 あり得ない位置の、二つの眼。
 そしてあの気味の悪いうめき声。
 看護師レンゲとの関係もきわめて怪しい。
 そんなことを考えているうちに、僕はいつのまにかまどろんでいたようだ。
「おい、そこの新入り、聞こえるか?」
 ふいに左側のカーテンの向こうから声がして、僕はベッドの中で硬直した。
 僕のベッドの左側も、隣のスペースとの仕切りのカーテンになっている。
 声はどうやら、その向こうから聞えてきたらしい。
 そうか。
 やはりこの病室には、僕と近藤さん以外にも、他に患者がいたわけだ。

 
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