異世界病棟

戸影絵麻

文字の大きさ
30 / 88

#29 黒衣の堕天使③

しおりを挟む
 乙都が持ってきたのは、塵取りと洗面器が合体したようなプラスチック容器だった。
「さっさと脱ぎなっ」
 乱暴に病衣をはぎ取られた。
 ついでに僕の下半身から紙オムツをはがすと、
「とっとと尻を上げて! これはこう使うんだよ!」
 乙都が僕の尻の下に簡易トイレを滑り込ませた。
 仰向けのまま、ちょうどお尻がすっぽり容器にはまり込む形になった。
「ふう」
 僕は安堵のため息を漏らした。
 安心感からか、一気に緊張がゆるんだようだった。
 ずるっ。
 大腸が蠢動し、肛門をかき分けて、太い便が出るのがわかった。
 三日分だから、かなりの量だ。
 しかも、長大なバナナのように、途切れることなく続いている。
 巨大な芋虫のような大便である。
「くう、早くしろよっ」
 歯軋りするように、乙都が責め立てる。
「やつらに気づかれたら、どうすんだよっ」
「だ、だって…」
 やつらって、誰のこと?
 コンドウサンか?
 でも、それならなぜ複数形?
 が、僕はそれどころではなかった。
 便がたくさん出過ぎて、容器の底に溜まり、今にもお尻にくっつきそうなのだ。
 しかたなく、ブリッジみたいにお尻を上げ、排泄物に尻っぺたがくっつかないように頑張った。
 けれど、排泄するのは、正直、とても気持ちがよかった。
 便通とともに、とめどなく尿があふれ出し、螺旋を描いたカテーテルの中を勢いよく流れていった。
 その淫靡な快感に、僕は危うく勃起しそうになった。
 なんせ、そんな僕の様子を、異様にセクシーなコスチュームに着換えた乙都が見守っているのだ。
 胸の谷間は手を伸ばせば届きそうな位置にある。
 それに、短いナース服から出た網タイツの太腿が、なんとも言えず悩ましい。
「お、終わったよ」
 すべて出し切り、そう報告すると、乙都が無造作に簡易トイレを引き抜き、ティッシュで僕の尻を拭いた。
「くうっ、超忙しい時に、こんなにたっぷり出しやがって!」
 中に溜まったものを一瞥して、怒りの声を上げる。
「まあ、いい。おまえは早く寝ろ。こいつはうちが処分する。まあ、雑魚をおびき寄せる餌ぐらいにはなるからな。いいか? 何が寄ってきても、誰に声をかけられても、絶対にベッドから出るな! ベッドはおまえにとって、唯一の結界だ。そこから一歩でも外に出たら命はないものと思え」
「わ、わ、わかったけど」
 はだけた病衣を元に戻すと、掛布団をかぶって目だけ出し、僕は簡易トイレを抱えた乙都を見上げた。
「最後にひとつだけ、訊いていいかな?」
「なんだよ。早くしろ」
 乙都の切れ長の眼が険しくなる。
「今更あれだけど、これ、全部、夢なんだよね?」
 しばし、気まずい沈黙が下りた。
 廊下では、さっきまで聞こえていた複数のうめき声が、激しくいがみ合うわめき声に変わっている。
「ああ、夢だよ」
 ややあって、脱力したような口調で、乙都が答えた。
「当り前だろ。こんなのみんな夢に決まってるじゃないか。だからおまえは安心して寝るんだよ。いいな? わかったな?」


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

10秒で読めるちょっと怖い話。

絢郷水沙
ホラー
 ほんのりと不条理な『ギャグ』が香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...