49 / 88
#48 汚染病棟②
しおりを挟む
乙都と蓮月が前に立ち、瑞季先生がベッドを押すかたちで病室を出た。
仰向けになった僕の視界は限られていて、そのままでは天井と左右の壁の一部しか見ることができない。
それでも周囲で異変が起こっているのは、一目瞭然だった。
天井は汚らしいあのタール状の染みに覆われ、あちこちから臭い液体がしたたり落ちている。
廊下の両サイドの壁は、その染みのほかに、赤や黒のペンキでかきなぐったようなラクガキでいっぱいだった。
精神に異常を来たした者が描いたみたいなようなそれらは、大半が性的なものだ。
デフォルメされた男性器や女性器、乳房、そして交接する男女、中には明らかに幼児と思われる小さな少年を、聖職者の衣をつけた大人の男が犯している場面もある。
更に気味悪いのは、その壁や天井を、大人の手のひらほどもある蜘蛛みたいな黒い影が、時折こそこそと駆け抜けていくことだった。
うお~ん、うお~ん。
周りの病室からは、ゆうべ夢の中で耳にしたのと同じ、あの複数のうめき声が聞こえてくる。
と、ふいにガタガタっという音がして、乱暴にベッドが止まった。
「オト、左!」
僕の足元で、先生が叫ぶ。
「了解です!」
乙都がうなずき、かまえた巨大注射器を突き出した。
次の瞬間、
「ギャアッ!」
何者かが悲鳴を上げ、左側の病室の中へと消えていった。
「敵は廊下に出ている者だけではない。病室の中からの急襲にも注意しろ」
「お任せください! とあっ!」
蓮月が高らかに叫び、台を先にして、点滴スタンドを振り回す。
「「ウギャッ!」
と、僕の真上を何かコウモリみたいな翼を広げた影が飛び過ぎ、後ろで壁にぶつかって床に落ちる音がした。
なんだ?
なにが起こってる?
気になる。
気になってならない。
ここはサファリパークか?
まるで野生動物園の中に放り込まれたみたいな、この騒ぎ。
ひどい匂いがするし、とても病院の病棟の廊下とは思えない。
でも、躰を起こして周囲の様子を確かめる気にはならなかった。
こわくてたまらない。
勝手に膀胱が収縮し、カテーテルの中に尿道からあふれた尿が流れ込んでいく。
と、叱りつけるように先生が言った。
「馬鹿、こんなところで排尿するやつがいるか! その匂いはやつらを引きつけるんだ!」
仰向けになった僕の視界は限られていて、そのままでは天井と左右の壁の一部しか見ることができない。
それでも周囲で異変が起こっているのは、一目瞭然だった。
天井は汚らしいあのタール状の染みに覆われ、あちこちから臭い液体がしたたり落ちている。
廊下の両サイドの壁は、その染みのほかに、赤や黒のペンキでかきなぐったようなラクガキでいっぱいだった。
精神に異常を来たした者が描いたみたいなようなそれらは、大半が性的なものだ。
デフォルメされた男性器や女性器、乳房、そして交接する男女、中には明らかに幼児と思われる小さな少年を、聖職者の衣をつけた大人の男が犯している場面もある。
更に気味悪いのは、その壁や天井を、大人の手のひらほどもある蜘蛛みたいな黒い影が、時折こそこそと駆け抜けていくことだった。
うお~ん、うお~ん。
周りの病室からは、ゆうべ夢の中で耳にしたのと同じ、あの複数のうめき声が聞こえてくる。
と、ふいにガタガタっという音がして、乱暴にベッドが止まった。
「オト、左!」
僕の足元で、先生が叫ぶ。
「了解です!」
乙都がうなずき、かまえた巨大注射器を突き出した。
次の瞬間、
「ギャアッ!」
何者かが悲鳴を上げ、左側の病室の中へと消えていった。
「敵は廊下に出ている者だけではない。病室の中からの急襲にも注意しろ」
「お任せください! とあっ!」
蓮月が高らかに叫び、台を先にして、点滴スタンドを振り回す。
「「ウギャッ!」
と、僕の真上を何かコウモリみたいな翼を広げた影が飛び過ぎ、後ろで壁にぶつかって床に落ちる音がした。
なんだ?
なにが起こってる?
気になる。
気になってならない。
ここはサファリパークか?
まるで野生動物園の中に放り込まれたみたいな、この騒ぎ。
ひどい匂いがするし、とても病院の病棟の廊下とは思えない。
でも、躰を起こして周囲の様子を確かめる気にはならなかった。
こわくてたまらない。
勝手に膀胱が収縮し、カテーテルの中に尿道からあふれた尿が流れ込んでいく。
と、叱りつけるように先生が言った。
「馬鹿、こんなところで排尿するやつがいるか! その匂いはやつらを引きつけるんだ!」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
10秒で読めるちょっと怖い話。
絢郷水沙
ホラー
ほんのりと不条理な『ギャグ』が香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる