異世界病棟

戸影絵麻

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#57 恐怖の手術③

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 ゴム手袋をした乙都の手の中でのたうっているのは、針金みたいに細い生き物だった。
 僕がさっき、床のクーラーボックスの中にちらりと見た”あれ”である。
「あたしも一匹」
 蓮月がかがんで、クーラーボックスからもう一匹の生き物をつかみ上げた。
 バタバタ跳ねるその針金そっくりの生き物は、游に長さが1メートルはありそうだ。
「そ、それは…?」
 唇をわななかせて、僕は訊いた。
「見ての通り、生体血管だよ。ミミズというか、まあ、線虫の一種かな」
 言うことを聞かない生き物と格闘しながら、乙都が答えた。
「中は空洞だから心配いらないよ。ちゃんと血管の役割は果たすし、何よりも頑丈だし」
「ただ、相性が悪いと、稀に心臓を食い破られることがあるってさ。血管に心臓食われてちゃ世話ないんだけど」
 剛腕で生きた血管を組み伏せて、蓮月が縁起でもないフォローをする。
「そ、そんなものを、どうやって…」
「簡単だよ。あんたの両手首には、点滴用のシリンダーが取りつけてある。チューブをつなぐだけで、すぐに点滴を行えるように、注射器の先みたいなのを刺してテープで止めてあるだろう? その中にこいつを挿入するだけさ。頭さえ入れてやれば、後は勝手に心臓まで進軍していく。昼間の手術と比べれば、ずいぶん単純だ」
 クールな口調で説明しながら、乙都が僕の右手首に両手で握った線虫を近づけていく。
 反対側では、蓮月がすでに同じ作業に入っていた。
「三匹同時に行くぞ。そのほうが、痛みが長引かなくて済む」
 いつのまにか、先生も線虫を手にしているようだ。
 右手に虫を握って、左手で萎えた僕の性器を上に向けている。
「ショックで心停止したらどうします?」
 乙都が、僕の右手に刺さった点滴用シリンダーに線虫の頭を押し込みながら、物騒なことを言う。
「そこは賭けだな。血流が止まる前に生体血管が心臓まで貫通すればそれでよし。もし間に合わなければ、脳死状態だ。その時は、最重要器官だけを基盤から摘出することになる」
 片手で器用に性器の包皮を剥き、亀頭を露わにして、先生が答えた。
「そうしたら、この少年は廃棄処分ですか」
「まあな。可哀想だが仕方がない」
「昼間の乙都がなんて思うか」
「それもおまえの一部だろう。記憶なんてなんとでもなる」
「あるいはうちが彼女の一部なのかも」
「どっちもおんなじことさ。それより、行くぞ」
「あいさあ」
「了解です」
 そして次の瞬間、両手首と性器の先が、焼きごてを当てられたかのようにカッと熱くなった。
「うぐっ、うぎゃあああああっ!」
 三方から全身を激痛に貫かれ、全裸で鋼鉄の機械に挟まれたまま、僕はベッドの上で硬直した。
 ヒューズが飛ぶように意識が雲散霧消する寸前、先生が忌々しげにつぶやくのが聞えてきた。
「まずいな。心機能が急速に落ちてる。線虫の行く先で、冠動脈が一気に全部詰まってしまったらしい」

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