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#71 乙都受難⑤
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病院の中の派閥抗争?
しかし、病棟が西と東に分かれていがみ合うなんて、そんな馬鹿な話があるだろうか。
第一、仮になんらかの諍いがあったとしても、それにこの僕がどう関係するというのだ?
ユズハはすでに乙都を肩に担ぎ上げている。
気を失ったのか、乙都は青いナース服のパンツの丸いお尻をこっちに向けたまま、ぴくりとも動かない。
「乙都を放せ!」
これ以上、会話を続けていても無駄だった。
僕は点滴スタンドを低くかまえると、ユズハの枯れ枝みたいな細い脚めがけて水平に薙ぎ払った。
が、その直前、ユズハが棚を蹴り倒していた。
おびただしいビーカーを振り落とし、ガラガラと崩れ落ちるスチール棚にスタンドの台座が当たり、腕に痺れが走った。
「待て!」
倒れた棚にはばまれて身動きできないでいる僕を尻目に、乙都を担いだユズハが悠々と部屋を出ていく。
その頭部には相変わらず上顎から上がなく、まるでろうそくを立てる前の燭台のように平らになっている。
気持ち悪いのは、ユズハがしゃべる度に、声に合わせて平らな断面の中欧で赤い舌がひらひら踊ることだった。
「誰か! 誰か来て!」
仕方なく、僕は絶叫した。
「化け物だ! 誰か、あいつを!」
「どうしましたか?」
肩に手が置かれたのは、その時だった。
よかった!
緊張が安堵に変わる。
別の看護師が、僕らを助けに来てくれたのだ!
「彼女を助けて! 乙都が、化け物に…」
全部口にする前に、突然、後頭部に鈍い打撃がやって来た。
「あうっ!」
激痛に、僕はのけぞった。
眼前に、床が急速に迫ってきた。
気を失う直前、会話が聞こえた。
「こいつも連れてくの?」
「今はダメ。薬が効いてるから触れない」
「じゃあ、すべては今夜」
「そう、今夜。今夜はワルプルギスの夜」
「ワルプルギス…の、夜?」
しかし、病棟が西と東に分かれていがみ合うなんて、そんな馬鹿な話があるだろうか。
第一、仮になんらかの諍いがあったとしても、それにこの僕がどう関係するというのだ?
ユズハはすでに乙都を肩に担ぎ上げている。
気を失ったのか、乙都は青いナース服のパンツの丸いお尻をこっちに向けたまま、ぴくりとも動かない。
「乙都を放せ!」
これ以上、会話を続けていても無駄だった。
僕は点滴スタンドを低くかまえると、ユズハの枯れ枝みたいな細い脚めがけて水平に薙ぎ払った。
が、その直前、ユズハが棚を蹴り倒していた。
おびただしいビーカーを振り落とし、ガラガラと崩れ落ちるスチール棚にスタンドの台座が当たり、腕に痺れが走った。
「待て!」
倒れた棚にはばまれて身動きできないでいる僕を尻目に、乙都を担いだユズハが悠々と部屋を出ていく。
その頭部には相変わらず上顎から上がなく、まるでろうそくを立てる前の燭台のように平らになっている。
気持ち悪いのは、ユズハがしゃべる度に、声に合わせて平らな断面の中欧で赤い舌がひらひら踊ることだった。
「誰か! 誰か来て!」
仕方なく、僕は絶叫した。
「化け物だ! 誰か、あいつを!」
「どうしましたか?」
肩に手が置かれたのは、その時だった。
よかった!
緊張が安堵に変わる。
別の看護師が、僕らを助けに来てくれたのだ!
「彼女を助けて! 乙都が、化け物に…」
全部口にする前に、突然、後頭部に鈍い打撃がやって来た。
「あうっ!」
激痛に、僕はのけぞった。
眼前に、床が急速に迫ってきた。
気を失う直前、会話が聞こえた。
「こいつも連れてくの?」
「今はダメ。薬が効いてるから触れない」
「じゃあ、すべては今夜」
「そう、今夜。今夜はワルプルギスの夜」
「ワルプルギス…の、夜?」
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