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#48 アラクネの糸
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「なんだ、今のは?」
あわてふためいてテントから飛び出してきたのは、ラルクである。
なぜかズボンの前を片手で押さえている。
「まさか、新魔法?」
地面で丸くなってピクピク痙攣しているおびただしいスライムと、その間であられもなく自慰にふけっている妹の姿を見て、呆気にとられたように立ちすくむ。
「俺のところまでなにやら卑猥な風が吹いてきたが、エロ魔導士、おまえの仕業だな?」
「まあね」
私は額にかかる髪の毛をかき上げた。
「新魔法、エクスタシー・ハリケーンを試してみたのよ。こいつらに襲われてるうちにレベル33になって、ちょうど覚えたから」
「ハリケーンというより、そよ風といった感じだったが…。おそらくまだレベルが低いせいで、魔法自体も弱いのだろうな。しかし、レベルが上がったということは、スライムに襲われて感じたというわけか。ううむ、おそるべし、エロ魔導士。節操のなさはケモノ並みだとみえる」
「しょうがないでしょ! スライムって、ああ見えてけっこう気持ちいいんだから!」
やりあっていると、ようやくソフィアが正気を取り戻して起きてきた。
「あ、兄者」
「兄者じゃない。なんだそのざまは」
「そういう兄者も、もしかしてボッキしてるのでは? ズボンの前が、テント張ってますけど」
「こ、これはただの朝立ちだ! 健康な男子の証明だろう?」
「朝立ちって、まだ夜なんですけど」
「時差だよ時差。砂漠と密林では、経度がかなり違うからな。いわゆる時差ボケというやつだ」
口の減らない男である。
「それより兄者、オナりながら、閃いたんだけど」
急に真顔になって、ソフィアが言った。
「大ダコ、大アリジゴク、人食い魚の大群、大ワニ、スライムの群れ…。こんなに次々襲ってくるなんて、ちょっとおかしくないかな? まるで誰かがあたしたちの足取りをつかんでいて、行く先々に罠を仕掛けてるみたいな気がするんだけど」
「ううむ。実は私もそう思っていた。私たちがポラリスに行くのを快く思わぬ者がどこかにいるのかもしれぬ」
「あの子じゃない?」
ふとあるイメージが閃いて、私は横から口をはさんだ。
「トロルと戦ったときに、遠くで見てた女の子がいたでしょ?」
小悪魔みたいなメイク。
露出度の高いボンテージ風の衣装。
まるでゲームに出てくるサキュバスみたいな外見だった。
「アラクネか」
ソフィアがつぶやいた。
「うん、それならありえる」
「アラクネが我らに敵対しているということは、だ」
こちらも真面目な口調に戻って、ラルクが言った。
「宮廷自体が我らを目の敵にしているということになる。あれはもともと宮廷お抱えの錬金術師だろう?」
「そうね」
ソフィアがうなずいた。
「あいつら、どうやらあたしを悪役令嬢に仕立てて追い出しただけでは、気が済まないみたい」
「うーん、でも、そういう問題かな」
特に根拠もなかったが、私は思いついたことをつい口にしてしまっていた。
「ソフィア個人への嫌がらせというより、この一連の騒動は、もっと奥が深い気がするんだけどな」
あわてふためいてテントから飛び出してきたのは、ラルクである。
なぜかズボンの前を片手で押さえている。
「まさか、新魔法?」
地面で丸くなってピクピク痙攣しているおびただしいスライムと、その間であられもなく自慰にふけっている妹の姿を見て、呆気にとられたように立ちすくむ。
「俺のところまでなにやら卑猥な風が吹いてきたが、エロ魔導士、おまえの仕業だな?」
「まあね」
私は額にかかる髪の毛をかき上げた。
「新魔法、エクスタシー・ハリケーンを試してみたのよ。こいつらに襲われてるうちにレベル33になって、ちょうど覚えたから」
「ハリケーンというより、そよ風といった感じだったが…。おそらくまだレベルが低いせいで、魔法自体も弱いのだろうな。しかし、レベルが上がったということは、スライムに襲われて感じたというわけか。ううむ、おそるべし、エロ魔導士。節操のなさはケモノ並みだとみえる」
「しょうがないでしょ! スライムって、ああ見えてけっこう気持ちいいんだから!」
やりあっていると、ようやくソフィアが正気を取り戻して起きてきた。
「あ、兄者」
「兄者じゃない。なんだそのざまは」
「そういう兄者も、もしかしてボッキしてるのでは? ズボンの前が、テント張ってますけど」
「こ、これはただの朝立ちだ! 健康な男子の証明だろう?」
「朝立ちって、まだ夜なんですけど」
「時差だよ時差。砂漠と密林では、経度がかなり違うからな。いわゆる時差ボケというやつだ」
口の減らない男である。
「それより兄者、オナりながら、閃いたんだけど」
急に真顔になって、ソフィアが言った。
「大ダコ、大アリジゴク、人食い魚の大群、大ワニ、スライムの群れ…。こんなに次々襲ってくるなんて、ちょっとおかしくないかな? まるで誰かがあたしたちの足取りをつかんでいて、行く先々に罠を仕掛けてるみたいな気がするんだけど」
「ううむ。実は私もそう思っていた。私たちがポラリスに行くのを快く思わぬ者がどこかにいるのかもしれぬ」
「あの子じゃない?」
ふとあるイメージが閃いて、私は横から口をはさんだ。
「トロルと戦ったときに、遠くで見てた女の子がいたでしょ?」
小悪魔みたいなメイク。
露出度の高いボンテージ風の衣装。
まるでゲームに出てくるサキュバスみたいな外見だった。
「アラクネか」
ソフィアがつぶやいた。
「うん、それならありえる」
「アラクネが我らに敵対しているということは、だ」
こちらも真面目な口調に戻って、ラルクが言った。
「宮廷自体が我らを目の敵にしているということになる。あれはもともと宮廷お抱えの錬金術師だろう?」
「そうね」
ソフィアがうなずいた。
「あいつら、どうやらあたしを悪役令嬢に仕立てて追い出しただけでは、気が済まないみたい」
「うーん、でも、そういう問題かな」
特に根拠もなかったが、私は思いついたことをつい口にしてしまっていた。
「ソフィア個人への嫌がらせというより、この一連の騒動は、もっと奥が深い気がするんだけどな」
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