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#52 迷宮の女王②

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 私は変態ではない。

 元の世界に居た時には、オナニーすらしたことのない生娘だったのだ。

 しかし、必要に迫られてとはいえ、自分で自分の乳首を舐めたり吸ったりするのは、異様に快感だった。

 巨乳というのは肩が凝るだけでろくなもんじゃないと思っていたけど、要は使い方ひとつなのだ。

 こんな活用法もあるとは、まさに目からうろこが落ちる思い。

 夢中でチュパチュパやっていると、次第に回りが騒がしくなってきた。

 アリ人間たちがホールに入ってきたのだ。

 アリ人間は二足歩行とはいえ、しょせんアリだからしゃべったりはしない。

 触角同士をこすり合わせて何やら打ち合わせみたいなことをしている。

 そのごそごそカシャカシャいう音が、ホールの壁に響いているのだった。

 手首を縛られているので、MP回復量はわからない。

 が、体感で7割くらいだな、と私は見当をつけた。

 これならチャンスさえあれば、なんとかなるだろう。

 乳首舐めを中断して息を殺していると、数匹のアリ人間が近寄ってきた。

 手首を縛られたまま、また持ち上げられた。

 お神輿じゃないっていうのに。 

 アリ人間たちは、私たち3人を担ぎ上げると、奥の祭壇みたいなところに運んでいった。

 祭壇の端にはあのボンテージ娘が立っていて、私たちを見るなり、勝ち誇ったように哄笑した。

「ふふっ、ざまあないね。ソフィアも雑魚ふたりも。さっさと女王様に食われちまいな」

 こっちにTバックのプリっとした尻を向けると、壁のボタンを親指でぐいと押した。

 と、ウイーンというかすかな音とともに、祭壇の正面の緞帳が徐々に上がり始めた。

「げ」
 
 うめいたのはラルクである。

 無理もない。

 緞帳の向こうの黒い山みたいなもの。

 それがおもむろに動いて頭部をもたげたのだ。

「でか」

 つられて私もうめいていた。

 そこに寝そべっているのは、タンクローリーほどもある巨大な女王アリだった。

 複眼だけでもバレーボール1個分くらいの大きさがある。

「ちょっと、アラクネ、どういうつもりなの?」
 
 ソフィアが気丈にも叫んだ。

「どうもこうもないよ。おまえたちの魂胆はとっくの昔にお見通しさ」

 インキュバス風衣装のアラクネが、にやにや笑いながら、言った。

 小柄なくせにずいぶんと肉感的な体つきをしている。

「魂胆って、魔王を封じに行くのが、どうして悪いのよ?」

「相変わらず単純馬鹿だね。おまえは」

 アラクネが鼻でせせら笑った。

「この世界は、放っておいても滅びてしまう。それを救うには、強大な力が必要なんだよ。たとえ魔王のものでもね」

「太陽のことを言っているのか」

 ラルクが口をはさんだ。

「太陽黒点の異常発生、巨大フレアの連続爆発。確かに今の太陽は普通じゃない」

「わかってるなら、なんでじゃまするのさ」

 アラクネが憎々しげに言った。

「魔王なら、あの年老いた太陽を元に戻せるんだ。今すぐにでもね」

 なんだか、先行きの怪しい話題である。

 が、その3人の会話を聞き流しながら、私は全然別のことを考えていた。

 あった。

 エロ魔法の使い道が、ひとつだけ。

 うまくいけば、これで逃げられる。



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