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#195 怪獣島を脱出せよ!②

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 島に転移すると、村は祝宴の準備の真っ最中だった。
 今度は私たちが料理されるのではなく、料理をふるまわれる側に回ったというわけだ。
「どうだった? レベルは?」
 中央広場に足を向けると、玉座に座って煙草をくゆらせていたラルクが、上機嫌な口調で訊いてきた。
「70に上がったよ。ついでに初子の装備もリニューアルされた。どんなのかは、見てのお楽しみ」
「なんと、レベル70のエロ魔導士とな」
 ラルクの隣に座っていたマンマミーア酋長が、玉座から転げ落ちると、私の前に平伏する。
「ありがたやありがたや。それほど高レベルのエロ魔導士様にお会いするのは、これが初めてじゃ。ああ、なんとお美しく、尊いことじゃろう。それに加えて、めっぽうエロい」
 赤いビスチェに紐パンティだけ、という私のコスに目を細め、そんなことを言う。
「このチチモミ族の助けを借りて、明日の夜、魔王の前哨基地を襲撃することに決まった。おまえも疲れているだろうから、今日はたっぷり滋養を取って、ゆっくり休むがいい」
「チチモミ族? それがこの人たちの名前なの?」
 呆れて訊き返すと、
「そうじゃ。チチモミとは、この島の古い言葉で、”聖母を敬う者”という意味なのじゃ。そしてあなた様こそが、1000年ぶりに降臨なさった我らが聖母。キングゴローも、おかげでほら、あの通り大人しくなった」
 乳を揉むことがどうして聖母を敬うことになるのか、はなはだ疑問だったけど、野暮なつっこみはこの際やめることにして、私は酋長の視線を追った。
 広場の隅にバオバブの木が一本立っており、そこに灰色の毛並みのゴリラが一頭、縄でつながれている。
 腰のあたりに包帯を巻いていることから、たぶんゴローだろうと識別できた。
 でも、どうしたんだろう?
 こんなに小さくなっちゃって。
 これじゃ、ただのゴリラなんだけど。
 それにしても、眼をハート形にして私のほうを見つめてくるのはどういうわけ?
「ゴローを魔神に仕立て上げていたのは、あのペニスだったんじゃないかと俺は思う。たぶん魔王軍の開発した生物兵器のひとつじゃないのかな。憑りついた者を怪獣に変えるおそるべきペニス。そんなものを作れるのは、魔王しかいないだろう」
「女に生まれてよかったわ」
 私は安堵のため息をついた。
「へんなものに取りつかれて、怪獣になるのはいやだもの」
 じゃあ、ゴローの本体は、あのペニスだったってことか。
 それを私=初子が、ヴァギナカッターとアナルシュレッダーで粉砕したおかげで、彼は元のゴリラに戻ったというわけだ。
 生き物に憑りついて怪獣化させるペニス?
 なんておぞましい発明だろう。
 私は初子のあそこと肛門にアレが侵入してきた時の嫌な感じを思い出し、ぞっとなった。
「まあな。俺も気をつけるよ」
 ラルクが苦笑する。
「あー、すっきりした」
 そこに、頭にバスタオルを巻いたソフィアが、モンローウォークでくねくね腰を振りながら現れた。
 酋長に借りたのか、戦闘服ではなく、涼し気なムームーみたいな服を身にまとっている。
「裏に綺麗な池があるから、翔子も後で水浴びするといいよ。しばらくシャワー、浴びてないでしょ?」
 私を見るなり、ニコニコ笑いながら、そんな呑気なことを言った。
「あ、いいね。それ。ところで、一平は?」
「村の青年団に混ざって、食材取りに行ってる。そろそろ戻る頃だと思うけど」
「そっか。それならいいけど」
 そんな会話を交わしていると、
「あ、翔子、戻ってきたんだ」
 屈強な青年たちに囲まれた一平が、広場に入ってきた。
 みんな手に手に木の実やら魚やら小動物やらを提げている。
「ごくろうさま。初子、今回もめちゃかっこよかったぜ」
 目をキラキラさせて、ずいぶんご満悦の様子である。
 私は少しうれしくなった。
 珍しく、平和な夜を迎えられそうだ。
 ふと、そう思ったからである。

 
 


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